午後業務
休憩が終わり、ステーションに戻ると
残りの早休憩の職員も午後の業務内容の確認や
準備を行っていた。
『お疲れ様です。午後も頑張りましょう』
と声を合い掛けながらホールへ向かう。
『お先でした。休憩行ってください。』
と残っていた職員に声を掛け、業務を変わる。
『休憩頂きます』
と残りの日勤者・遅番者が遅休憩に入っていった。
早休憩終わりはは、午前同様
【寝かし】と【トイレ誘導】を行いつつ
ホールの片づけ・口腔ケアを行う。
午後の入浴もあるため
お風呂に入る入らないで利用者様を分けて行っていた。
この時間になると
利用者様もホールでテレビを見ていたり、
他の利用者様と話し込んでいたりと
なかなか寝かしやトイレを行えず
イライラしてしまうこともあった。
『〇〇さんトイレ行きましょう』
『まだ行きたくないよ。』
『でも今いかないといけなくなっちゃいますよ?』
『今いいところなの!!黙ってて頂戴!!』
など怒鳴りだす利用者様も少なくなかった
『・・・はぁ』と大きなため息をつきながら
行ける利用者様を率先して連れて行った。
『〇〇さんは?』
『今テレビ見てて動かないです・・』
『じゃあ拒否でいいや』
と高橋さんは排泄版に【拒否】と書き込んだ
トイレ介助も終わろうとしているとき
先ほどの利用者様がやってきた。
『あのぉ、トイレお願いしたいんですけど』
と高橋さんに話しかける、
『〇〇さん!さっき呼んだのに来なかったよね?
そうやって自分勝手にやってちゃダメだよ!』
と高橋さんに言われると
『私呼ばれてませんよ!?いつもいつも私は自分でやってるんです!』
と怒りだしてしまった。
『あ、私がいきます。』と小声で高橋さんに伝え
対応を変わった。
『ごめんなさい。まだ呼んでなかったですよね。行きましょう』
『そうなのよぉ。あの人変なこと言って私を騙すのよ。』
と高橋さんの方をキッと睨みつけ、こちらにはニコニコと話していた。
『じゃあズボン下げるんで立ってください』
と話しかけトイレ誘導を行う。
『はい、終わりましたよ』
そう言ってトイレから出ると、高橋さんと目が合った。
『ごめんな』と口パクでこちらに伝え、私も大丈夫ですと会釈を返した。
『あらお兄さん。私ここ今日が初めてなの。』
とニコニコしながら高橋さんに話し始めた。
さきほどの利用者様も、数分前のことを忘れてしまっていた。
『じゃあ〇〇さん、テレビでも見ていてね』
と利用者様をホールに戻した。
『〇〇さんに批判的なこと言うと感情的になっちゃいますね。』
『俺もバタバタしてて余計なこと言っちゃったよ。』
と話をしながら排泄版を書き換えながらホールに戻った。
ホールでは他の早休憩職員が片付けや入浴準備を終えて
利用者様と会話をしていた。
私と高橋さんは午後のレクを何しようかなど話していると、
遅休憩の職員が休憩から戻ってきた。
『お疲れさまでした~』など声を掛け合って
午後業務を始める。
午後は主に
早番はレク・日勤者でおむつ交換と入浴外介助・遅番は入浴中介助
に分かれて業務にあたる。
早番はこの時間になると終わりが見えてきて
気持ちが楽になっていた。
あとはレクとおやつとトイレ誘導を行えば終わりだぁと
高橋さんと話しながら
今日のレクは風船バレーでもしますかとレクを決めていった。
利用者様に
『風船バレーをするので集まりましょう』
と声をかけて
風船バレーをおこなった。
やる気満々で風船をはたく利用者様・
私はいいやと見ているだけの利用者様・
何をしているのか訳が分からなくなっている利用者様。
うまくチーム分けをして笑いあいながら風船を落とさないようにバレーを行う。
『落とさないようにねぇ!』『ほら△△さん!そっち行ったよ』
など大声で盛り上げながら行っていた。
いい時間になってきたので
『そろそろおやつになるんで今日はこれくらいにしましょう』
と言って、片付けを行い
厨房からお茶とおやつを受け取りおやつの準備を行った。
おやつの時間になると入浴やオムツに行っていた職員もホールに戻ってきて
ホールに職員が全員集まった。
職員同士で話しながらおやつを食べさせ、
食べ終わった利用者様から【寝かし】【トイレ誘導】を行う。
朝やお昼とは違い、職員が多くすんなり終わってしまう。
3時30分、仕事終わりまであと30分
ホールを日勤者に任せ、ステーションに戻った。
今日の日誌に、何か問題がなかったかなどを記入したり、
明日の準備や、自分の仕事をしていると
終業の時間に近づいた。
『今日も無事に終わりましたね。』
『おぅ、お疲れ様。』
と高橋さんと話していると、
『そういえば昼休みに話してた新人、前も特養で5年働いていた人だから
そこまで教え込むこともないから気楽にね。』
その言葉に私の不安がより大きくなった。
『経験者ですか・・・』
『ん?なんか問題?』
『いやぁ、自信がないです』
と笑って見せたが
『もう8年もやってるんだから大丈夫だろ。
実際、伊藤君とか指導したのも戌井さんじゃん。』
と高橋さんは笑って返した。
『いや、まぁ。』と話を終え
『上がりますか』
と荷物を持って二人でステーションを出た。
『お疲れ様でした』
と日勤者や遅番者に声を掛けて更衣室に入る。
更衣室でユニフォームを脱ぐと、
髪がぼさぼさだった。
シャワー浴びたい。
そう思いながら髪をとかし私服に着替えた。
来週からくる新人はどんな人なんだろう・・・
考えても仕方ないが、気になっていた。
着替え終わり更衣室を出ようとしたら
夜勤者が入ってきた。
『あ!お疲れ様。』
『・・・』口に出さず会釈だけ返した女性は
【小林さん】二年ほど前に入社した子で
誰とも喋ろうとしないが、利用者様には笑顔で話しかけている子だった。
何度か夜勤を一緒に入り、
『あんまり他の職員と喋らないよね』とそれとなく聞いてみたが
『・・・私、馴れ合うために仕事してるんじゃないんで。』
と言われてから、それなりに距離を取ってしまっていた。
『夜勤頑張ってね』と声を掛けると
また無言で会釈をした。
きっと根は悪い子なんじゃないと思う。
ただ、介護の仕事をしていると、【独特な人】に出くわす。
いや、独特になってしまうのか?
私も周りから見たら【独特な人】なのかもしれない。
そんなことを考えながら施設を後にした。