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エピローグ
馬車に揺られる帰り道で、ダリアはぼんやりと夜の街を眺めていた。
闇に包まれた世界を微かな月明かりが照らしている。外の夜気が肌に伝わってくる。
車輪の音を聞きながら、ダリアは手にした一輪の花に目をやる。
ありふれた白いフリージアの花。
髪に差し込まれたそれを捨ててもよかったはずだ。だが、どういうわけか今もその花を離さないでいる。
瞼の裏にあの白いドレスが焼きついて離れない。小さな唇から発せられる細く透き通った声を鮮明に覚えている。
目をつむると心地よい眠気に包まれた。胸に暖かなものを感じて、ダリアは意識が下りていく感覚に身を委ねた。
第1章・完