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逆さま流星群  作者: さな
16/22

絞首

リコサイド

「シモン、ついて来い。急ぎ女王の魂を保護する。ダグラスはこれを見ていろ。」


腕の中の赤ん坊をダグラスに手渡し、ユリエルは外套を羽織る。シモンもそれに従った。リコを見れば、赤ん坊用の服を量産しており、ついて来る気は全くなさそうだ。


「私、赤ん坊の面倒など見たことがないのですが…。」


困惑気味のダグラスを無視して、ユリエルとシモンは外に出た。


「おまえはリコにどうつき合っていくつもりだ?」


唐突に問われ、シモンは眉を寄せる。


「あれはひどく寂しがりやで誰だって自分の傍に引き込もうとする癖がある。おまえとて、その一人だ。おまえが本物の死神になるのかどうか、見極めにきている。」


「リコはずっと一人だった俺と、一緒に暮らして…その日々は今までの人生の中で、一番暖かかった。俺はそれを失いたくはないし、これからも叶うならリコと共に暮らしていきたい。教えてくれ、ユリエル。リコに帰るべき場所はあるのか?リコは誰かに必要とされる存在なのか?」


リコが離れていってしまうのが、シモンには怖い。リコと二人で暮らした日々はかけがえのない宝物なのだ。


「それを忘れるな。あれのために生きるのだと、ゆめゆめ忘れるな。あれは常に自由だ。あれを縛る者はなく、あれと共に生きようとした者はいない。おまえだけがあれのそばにいてやれるだろう。」


ユリエルの言葉には、力がある。まるで神託のような厳かさを兼ね備えているのだ。

とりあえず、リコは気ままに生きていることが分かったのでよしとしよう。




%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%




ダグラスは困惑していた。


【-----------------------------】


リコは赤ん坊を抱いて、古代語で歌っている。もとから歌うようだった古代語でも、本当に歌うと天使の囀りのようであった。赤ん坊はすやすや眠っている。


「あの、リコ様ー。」


ようやくリコが歌うのをやめた時、ダグラスは彼女に声をかけた。


「あなたはユリエル様に親しい方と聞いておりますが…実際はどのようなご関係で?」


「親子。」


「…………あのー、ユリエル様は独身だと思うのですが、もう一度おっしゃっては貰えないでしょうか?」


ユリエルの見た目は、どう多く見積もっても20代後半。対するリコもどう若く見積もっても12、3歳だ。ぎりぎりいけるか、とダグラスは首をひねる。


「親子。」


「あ、やっぱりそういいましたよね?」


こくりとリコは頷いた。


「私は正教会で高位の地位を得て、まだ日が浅いのですが…リコ様のことをよくお教えしてはいただけませんか?」


ダグラスは優しげな声音で、そう尋ねる。


「特にリコ様のお持ちの第2番目の始まりの書について、詳しく教えてはくださいませんか?」


【-----】


リコは短く古代語で答えて、それきり赤ん坊の世話に集中してしまう。別の部屋の寝台に赤ん坊を寝かせ、毛布に包んだ。

それからダグラスを手招きする。


「なんでしょう?」


部屋にやってきたダグラスを寝台の傍にあった椅子に座らせ、リコはその部屋の扉を閉めた。ダグラスと赤ん坊を部屋に置いて、暖炉の始末をすると、一人だけで家の外に出る。

すると、一人の青年がやってきた。


「よう、子犬。おまえに用があるんだ。」


「シモン、いない。」


「知ってる。正教会のヤツと王城に入ったのを確認してから来たんだ。」


青年、エリオはそう言って笑うと、リコの腕を掴む。


【--------】


「何言ってんのか、わからねぇよ。」


リコはそのまま、エリオに連れて行かれた。

リコが連れてこられたのは、王城から一直線で続いている広場だ。


そこでは騎士たちがなにかを組み立てていた。リコはエリオを見つめる。相変わらずどす黒い魂がその胸に点っているのを確認して、踵を返した。


「あらぁ、あなたとっても可愛いじゃない。」


しかし、後ろにいた女に捕まる。娼婦のような露出の高い衣装に身を包んだ、このあたりではみない褐色の肌の女が、リコに頬ずりした。


「あなたみたいな子が、苦痛に顔を歪めるの見てみたいわぁ!」


蠱惑的な青い瞳が、リコを捉える。


「ちょっと!その子犬はまだ使うんだぞ。」


それに気づいたエリオがリコの首根っこを掴んで、女から引き離した。


「えー、いいじゃない。」


「だめだ。ほれ、さっさと他をあたれ。」


「もー。せっかく手伝いにきて上げたのにー。」


すげなく追いやられ、女は未練たらたらに去っていく。


「おまえの鼻はきくようだな。ちょうどいいところに病魔の登場だぞ?」


【----】


「やっぱ、何言ってるのかわかんねぇよ。」


エリオはリコを傍から離さないまま、騎士たちに指示を出し始めた。

ほどなくして、広場にある舞台が出来上がった。その舞台の名は、断頭台。


「さてさて、子犬。おまえの公開処刑が行われるぞ。おまえは始まりの書を女王より盗んだ罪で処刑だとさ。」


【--------】


「だから、何言ってんのかわからないって。さっさと登れ。」


エリオは首根っこをつかんで、リコを断頭台に連れて行く。リコは大して抵抗はしなかった。


「魂を俺に差し出すなら、助けてやってもいいぜ。どうする?」


リコの首に縄をかけ、台の先端に追いやる。


【--------】


「んー、契約成立してるかもわかんねぇな。」


エリオがとってを掴んで、それを無造作にひく。リコの足下にあった板が外れて、彼女は重力に任せて、下に落ちていく。

首に縄を括り付けたまま-----







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