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偽主  作者: シュカ
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作戦会議

その後、キーツは校長と約束を取り付けるため、すぐに機械室を出ていった。他のメンバーの過ごし方は様々である

 

 ユウリは能力の使用を解除した際に少し額に汗をかいていたため生徒会室で休んでもらうことにした。チュリッシェは調べものをすると機械室にこもってキーボードを叩いている。

 

 ティムは眠たげな顔をしていて、すぐに生徒会室の自分の席で寝息をたて始めた。そしてシドはと言うと…遅れて生徒会室にやってきたリャッカから説教を受けていた。

 

 「ったく、お前はどこまで暴走すれば気がすむんだ」

 

 「…すみません」

 

 来客用のソファーに対面して座った二人。リャッカはここ数分で何回目だろうかと言うほどの深いため息をついた。

 

 リャッカはキーツと入れ違いになるように生徒会室にやってきた。ユウリの能力に気づいた彼はユウリが能力を解く前に機械室にやってきた。

 

 その際に昼休みやこれまでの話をし、校長ともう一度話すことを伝えたら、これ以上ないほど怒鳴られた。

 

 「なんでお前は勝手に動き危険を呼び込んでくるんだ!俺やユースフォルトが動いている意味がなくなるだろ!!少しは頭冷やして待つことも覚えろ」

 

 リャッカの言うことはもっともだと思う。シドは項垂れて反省した。

 

 「すみません」

 

 「はぁーーー。いい、顔あげろ。俺ももう分かったぜ。そういう時のお前は見た目ほど反省していないってな」

 

 鋭い視線を更に鋭くさせるリャッカは疑い深くシドを睨む。

 

 「…すみません」

 

 最初は申し訳なさそうな顔で謝っていたシドの顔が苦笑に変わる。それを見てリャッカは怒りを通り越して呆れた。

 

 「はぁ、お前の図太さどうなってんだよ。…ヒイラギ先輩。もう能力は解いていいっすよ。こいつが校長と話すんなら、もうあんまり意味ないっすから」

 

 「それもそうですわね」

 

 リャッカとシドが話している間、能力を使ってくれていたユウリはキョトンとした顔をしたが、リャッカの言う通りだと思いいたり能力を解除した。

 

 そうして、冒頭に戻ると言うわけである。すみませんを繰り返すがどうしても反省しているように見えないシドにリャッカはついに諦めたようだ。

 

 「もう話が進んでるんだろ?ったく仕方ねーな。ラドウィン先輩も何考えてんだ」

 

 彼の怒りの矛先は今度はキーツに向かったようだ。しばらくぶつぶつと言っていた。シドは居心地が悪かったがユウリは通常業務をしているし、ティムに至っては夢の中だ。そもそもこうなったのは最初からシドの自業自得である。助けを求める方がお門違いだ。

 

 「チッ、仕方ねーなーー。ラドウィン先輩は校長のとこに言ったんだろ。ここまで俺が調べたことを話すから一字一句漏らさずに頭に叩き込め」

 

 眉間にシワを寄せ自分のこめかみをトントンと叩くリャッカにシドは姿勢を直した。

 

 

 

 

 「待たせたな、シドよ。今日の夜ならば校長先生は時間をとってくれるようだ」

 

 笑顔を浮かべたリャッカがそう言って生徒会室に戻ってきたのは一時間以上たった頃だった。その頃にはシドはリャッカからの情報を頭に叩き込み、チュリッシェの調べたことも彼女によって頭に叩き込んでいた。

 

 ユウリは通常業務をしながらそれを見守り、ティムもユウリの手伝いをしながら時折シドの方に茶々をいれていた。

 

 「ありがとうございました、キーツ先輩。今日の夜というと具体的には何時頃ですか?」

 

 キーツは悠然と自分の席に腰かける。リャッカとチュリッシェの報告がいったん止まり、ユウリとティムも手を休める。

 

 「生徒達の最終下校が終わった後と言っていたから七時過ぎあるいは八時頃かと思う。生徒会室で待っているようにとのことだ」

 

 生徒達の最終下校時刻は基本的には午後七時だ。七時になれば学園内の生徒は帰宅しなければならない。

 

 「となると後、一時間半から二時間半くらいか」

 

 「あまり時間がないわね」

 

 リャッカが時計を見ながらそう呟いた。チュリッシェもそれに返すように呟き、ノートパソコンをカタカタとし始めた。

 

 「それとシド。それには俺も同行させてもらうぞ」

 

 「キーツ先輩がですか?」

 

 「ああ、会長として生徒を守らせてもらう」

 

 「かいちょー、カッコいー」

 

 にっこりと笑ったキーツにティムが空気を読まずぴゅーと口笛を吹いた。

 

 「はぁー、ラドウィン先輩にも言いたいことは色々あるが、そうなれば先輩にも報告しないとだな。こっち来てください」

 

 「そうですわね。こっちは私達に任せてください」

 

 通常業務も大事な仕事だ。ユウリがキーツに微笑んだことでキーツは足取り軽くシドの横に座った。さりげなく「私達」と頭数にいれられたティムはちょっと不満そうだったがまじめに仕事をしていた。

  

 「うむ」

 

 それからシドとキーツは二人から報告を受け、それをもとにしながら打ち合わせをしていく。

 

 実際にどうなるかは分かったものじゃないが、方向性だけは一致させておきたかったのだ。

 

 「本当にいいんですか?会長」

 

 そして迎えた七時。キーツはシド以外のメンバーに帰宅するように告げた。

 

 「ああ、下校時刻だからな。俺とシド以外が残っている方がおかしいぞ。我々も今日は遅くなりそうだし、報告は明日にしよう」

 

 へらっとキーツは笑うが、それでも戸惑うメンバー。シドも皆に声をかけた。

 

 「皆さん、いつも本当にありがとうございます。ご心配おかけしてすみません。明日必ず報告します。今日はかえって休んでください」

 

 「当の本人達がこの調子だ。俺らは帰ろうぜ」

 

 リャッカが鞄をひっつかむ。チュリッシェもゲーム機をバッグにしまった。

 

 「そうね。私達が出来ることはやった。後はまた明日」

 

 「そーだね。んじゃ、シド君、かいちょー、バイバーイ。また明日」

 

 ティムは一抜けたと生徒会室を後にし、他のメンバーも続く。

 

 「ほら、ユウリ先輩もいきましょう」

 

 最後まで心配していたユウリはチュリッシェに促されて生徒会室を後にする。

 

 「お二人ともまた明日です」

 

 「ああ、ではな」

 

 「また明日、よろしくお願します」

 

 挨拶を交わし、他のメンバーを見送ったシドとキーツはそれぞれの席につき直す。

 

 キーツはじっと待っているのが落ち着かないようで、残っていた仕事を片付け始めた。仕事熱心だなと思いながらシドも彼にならい手をつける。

 

 「ユウリとティムが大部分を終わらせてくれたから楽なものだな」

 

 「そうですね」

 

 「こういう状況でも仕事は減らないからな。二人がやっててくれて助かったぞ」

 

 朗らかにキーツは言う。ただでさえ忙しいこの時期に問題を持ち込んでしまっていることをシドは少なからず申し訳ないと思っていた。

 

 「もうすぐ俺達も卒業だからな」

 

 しみじみとキーツが言ったのは、今目を通している書類が生徒会選挙関係のものだからだったのかもしれない。

 

 「…そうですね」

 

 「俺達が卒業するまでにシドの方も決着がつくとよいな」

 

 「はい」

 

 「なに、そんな悲しそうな顔をするな。卒業までにはまだ時間がある。きっと大丈夫だ」

 

 しんみりとした空気を撥ね飛ばそうとキーツは明るく言った。シドも小さく微笑み返す。

 

 プロトネ学園の生徒会の任期は三年生も卒業するまでだ。三年生が卒業した後は五月に生徒会選挙が行われ、一年生のメンバーも入る。それまでの1ヶ月ほどは、新二、三年生でまわすことになるのだ。生徒会選挙後は二、三年生のメンバーも変わる可能性がある。

 

 だから、一年生のメンバーは中学でも生徒会をしていたものが多い。高等部に入って一ヶ月での選挙となれば、それも順当だろう。ちなみにシドとティムもその口だ。

 

 「シド、お前は決着がついたらどうする気なのだ?」

 

 「えっ?」

 

 思いがけないキーツの質問にシドは書類から顔を上げた。キーツはシドの方は見ずに独り言のように続ける。

 

 「俺としてはな。もし問題が解決し、俺達が卒業したとしても、お前にはこの学園に通い、生徒会として活動してほしいのだ」

 

 シドはそれには答えない。想像したことがないわけではない。両親と兄…シドの最期の真実が解けたのならどうしようかと。だけど…

 

 「今はまだ何も決まってません。これが終わったらゆっくり考えます」

 

 絞り出すように言うとキーツは顔をあげて、シドを見た。

 

 「そうか。ゆっくり考えるといい。お前にはその時間があるのだから。それが解決したとしてもお前にはこれからがあるのだからな」

 

 「はい」

 

 へらっと笑ったキーツは少し寂しげな顔をしていた。

 

 「さて、そろそろ片付けよう。校長先生も来る頃だろう」

 

 「そうですね、準備しましょう」

 

 七時も十五分ほどがすぎ、いつ校長が来てもおかしくはない。二人は片付けをし、校長が来るのを待った。

 

 

 


 

 

 

 

 

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