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偽主  作者: シュカ
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クローバード家

クローバード。サヒトナの国でそれを意味するものは、クローバード社のことだ。クローバード社は世界各国にパイプを持つおもちゃ会社を営んでいる。


25年前にサヒトナの国、プロトネの町で創業したその会社。そこで作られたおもちゃはサヒトナの子供達の間で爆発的にヒットした。


それを皮切りにたくさんのおもちゃを生み出し世に広め巨万の富を作り出したクローバード社は立ち上げられてから五年も立たずに業界のトップの座に君臨した。


そんなクローバード社の事業主エルヴィス・クローバードは類いまれなる才能に羨望と嫉妬を抱いた同業者から帝王と呼ばれている。


彼の企画・商売の才覚はそれほど凄まじいものだった。ある時彼と商談を行ったとある貴族は狙った獲物は逃がさない東洋の黒い鳥のようだと彼の事を称した。


エルヴィスはその言葉を偉く気に入り、いつしか黒い鳥の絵をクローバード社のマークにしていた。クローバードの名前を知らずとも、その鳥のマークのおもちゃは誰もが子供の頃一度は手にして遊んだことだろう。


そんなエルヴィスが半年前に突然姿を消した。仕事中の事であった。彼は妻であるエレイナと商談に伺ったきり屋敷に帰ってこなくなったのだ。使用人達があの手この手を尽くし探したものの未だ有力な手がかりはつかめていない。


エルヴィス、エレイナの失踪を受け、クローバード社は大いに荒れた。重役たちが集まり会議を開き今後のクローバード社の行く末について話し合った。


そう言えば聞こえがいいかもしれないがその実態は後継者争いだ。


実際に会議とは程遠く、暴力すらなかったものの罵声や怒声が飛びかう殺伐とした状況になったことも何度もあった。


次第に社内に派閥が出来始め、誰かが誰かを陥れこのままでは会社が成り立たなくなると誰もが危惧し始めたその頃、彼は現れた。


エルヴィス・クローバードの忘れ形見、彼の息子のシド・クローバードである。


二人の失踪後、一度も表舞台に顔を出さなかった彼。両親がいなくなったことにショックを受け部屋に閉じ籠っているという情報が社内外で真しやかに囁かれていた。


そんな彼が一人の従者を伴い、重役達が集まる会議室にてこう宣言したのだ。


「父、エルヴィス・クローバードの後は僕が継ぐ。」


一瞬室内は静まり返り、すぐにさざ波のようなざわめきが溢れた。


¨¨いくら、社長の息子とはいえまだ15才のシド様に任せるわけにはいかない¨


¨今まで経営に関わって来なかったのに、いきなり後を継ぐのは不可能だ¨


そんな声が飛び交った。しかし、シドにはそれを一言で沈めることができた。


「社長が不在の間に売上の五%が落ちた。僕が一週間でこれをプラスに出来なかった場合は、この会社は貴方達に任せる好きにしてください。その変わり、僕がそれを成し遂げた時はこの会社を僕が次ぎます。」


重役達はそれを了承した。誰もが不可能だと思ったからだ。


だが、シドの力は本物だった。父親譲りの才覚で的確な経営と母親譲りの容姿と社交性で、新規の顧客を獲得した。

一週間後、彼は宣言通り売上をプラスにしたのだ。

これには重役達も舌を巻き、約束通りにシドをエルヴィスの後継者と認めたのだった。


そして、現在。シドはクローバード社の代表者として業務に追われる毎日を過ごしていた。歴戦の大人達にも負けない知識と技術を身に付け仕事に集中するため通っていた学園を休学していたがそれも今日までだ。


明日からは学園に復学し学業と仕事の両立に励むのだ。今のシドにはそれが出来るだけの力と自信があった。


休学最後の日である今日もシドは慌ただしく過ごしていた。


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