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偽主  作者: シュカ
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キーツとユウリ

「どうぞ、会長」


ことりと目の前に置かれたコーヒー。ミルクなしで砂糖はスプーンに半分。今日も自分好みにいれられたそれを、キーツは手に取り口にした。


「すまないな、ユウリ。さっきも言ったが今日は残ってもらわずとも良かったのだが。能力を使うと体にも負担がかかるのだろう?」


「そんなことありませんわ。それに今日は特別なことも起きてしまいましたからね。もう少し残らせてもらいますら。」


ユウリはそういうと自分の分の飲み物を机に置き椅子にかけた。


「特別なことか。そうだな。今、マイスイートシスター達が頑張ってくれてるから、オレはこっちの仕事を頑張るか」


チュリッシェとティムが作業部屋で仕事をしている間、キーツとユウリは生徒会の部室でその他に発生している仕事の処理をしていた。


シドを名乗った彼女の話は生徒会としても秘密裏に扱いたいものだ。もし万が一誰かに聞かれても大丈夫なように具体的な言葉は口にしない。


「それにしても、出店や被服に関する承認を求める書類が多いな。プロトネ祭が近づいて来ているから仕方がないが。」


「ええ、皆さん楽しみにしておりますから。今年はどんなお祭りになるのか私も楽しみですわ」


クスクスと笑うユウリは席から立ち上がりキーツが着いている机から半分ほどの書類を持つと、再び自分が普段使っている机に着いた。


「おい、ユウリ。せめて休んでいろと言っていただろう。」


それを見たキーツは慌ててそれを止めようとする。


「ただ待っているのも暇ですし、会長もチュリッシェちゃんもティム君もそれにシド君も頑張っているのに私だけお休みをいただくのも悪いですから。」


「まったく仕方のない。だが、ありがとう」


半分呆れながらお礼を言うキーツにユウリは微笑みを浮かべ、書類に目を通していく。


それからどれくらいの時間がたっただろう、午後の空がオレンジ色に染まっていき、生徒達の喧騒もいくらか収まってきた頃、控えめなノックの音が生徒会室に響いた。


「どうぞ。」


キーツが了承するとチュリッシェとティムの二人が生徒会室に入ってきた。チュリッシェが宣言する。


「会長、終わりました。報告は作業部屋の方で」


「分かった」


そうして生徒会メンバー四人は作業部屋に集った。それぞれ適当に椅子や机に座った所でチュリッシェが報告を始めた。


「あいつが話したことに嘘はなさそうです。ただ、隠されている情報が余りにも多い。報告以上です」


「いやいや、チュリッシェ先輩?もっと詳しく伝えた方がいいんじゃないの」


投げやりにキーツとユウリに伝えたチュリッシェに思わず突っ込んだのはティムだった。


「しょーがないじゃない。いくら、何を見たって嘘をいったって裏はとれなかったのが事実なんだから。大方あいつが揉み消したんでしょーけど」


腕を組み憮然とした表情で言いはなったチュリッシェにキーツは告げる。


「ふむ、ご苦労だったな。マイスイートシスターよ。嘘を言っている証拠がない以上、マイスイートハートの妹君の要求を飲むことにする。これは生徒会長としての決定事項だ。ただ、チュリッシェが調べても出て来なかったことについては明日彼女から聞くとしよう」


チュリッシェの思った通りキーツはシルヴィアのことを受け入れる決定事項を下した。


「わかりました」


三人が一斉に返事をしたのを見てキーツは頷き一つ手を叩いた。


「よし、では我々生徒会は彼女のことをシド・クローバードとして扱うぞ。言うまでもなくこれは極秘事項だ。生徒会メンバー以外への他言は厳禁だ。」


「ええ、そうですわね。会長、生徒会メンバー以外には他言無用ということですが、彼にはこの事態はお伝えになるのですか?」


ユウリがキーツに向けて問いかける。


「うーむ。奴は生徒会活動には不定期な参加ではあるが、メンバーであることには違いないからな。明日、妹君に承諾を得た上で伝えることにしよう。それまでは内緒だ。」


生徒会メンバーは彼ら以外にもう一人いるのだ。毎日ではないがたびたび顔を出している。キーツとしては彼にも話は通しておきたかった。


「妹君はどこで調べたのかは知らぬがオレ達の情報をつかんでいたから奴のことも知っているだろうな。シド・クローバードとして学園に通うべく、シドとしての立ち振舞いを身に付け、交遊関係等を調べ彼女なりに努力を重ねたのだろう。たった半年であそこまで出来るとはなかなか信じがたい」


キーツはシルヴィアのことをそう評した。


「努力の方向性が違う気もしますけどね」


さらっと毒づくチュリッシェ、それをスルーしたティムが発言する


「んじゃ、みなさん明日はどうする?」


そんなティムの一言で今後の明日のことに着いて言葉を交わし会う。生徒会メンバーの放課後はこうしてあっという間に過ぎていったのだった。


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