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偽主  作者: シュカ
108/141

高等部のお手伝い

クラスタは放課後に中等部の生徒会室に向かうとそこにはヨシュハだけが来ていた。

 

 「ああ、クラ。お疲れ様です」

 

 「お疲れ様なの」

 

 「ににゃー」

 

 クラスタはムウムウと二人でヨシュハに返事をする。するとヨシュハはクラスタに手招きをした。

 

 「クラスタ、突然ですがお願いがあります。今日は高等部の生徒会のお手伝いをしてくれませんか?」

 

 「お手伝いなの?」

 

 ヨシュハの言葉にクラスタは首をかしげる。

 

 「ええ、向こうが忙しいみたいで。本当は僕が行こうと思ったのですが、手が離せないのです」

 

 「で、でも」

 

 高等部になど行ったこともないクラスタは不安げにヨシュハを見つめる。その仕事は自分がやるからヨシュハに高等部に言ってもらいたいと言おうとした時、ヨシュハは神妙な顔をした。

 

 「文化祭で少しお手数をかけてしまったので、そちらのお詫びもかねてお手伝いして欲しいんです」

 

 「うー、分かったの」

 

 文化祭でのことを持ち出されてしまえば断れない。ムウムウと二人で行くことをクラスタは決意した。

 

 「良かった。よろしくお願いしますね、クラ」

 

 「行ってきますなの。ムウムウちゃん行こう」

 

 トタトタとクラスタが出ていくのをヨシュハは見送る。にゃーと鳴きながらムウムウが後から追っていった。

 

 「すみませんね、クラ」

 

 ちょっぴり申し訳ない気持ちになりながらヨシュハはそう様子を見た。文化祭の件を出せばクラスタが断れないのは分かっていた。それを利用したことに後ろめたく思うが、これもいい機会だと思う。

 

 シークレットジョブらしいが相手はシド先輩だし悪いようにはならないだろう。むしろ、クラスタの人見知りの改善になるのではないかと期待した。

 

 「あらヨシュハ一人?」

 

 後ろから声がかけられる。生徒会長のエマだ。

 

 「いえクラスタが来ました。高等部の生徒会の人手が足りないみたいで手伝いの要請が来たので、そちらに行ってもらいました」

 

 「クラが一人で?大丈夫なの?」

 

 「ムウムウもいますし、大丈夫でしょう。高等部の先輩達もよくしてくれますから心配ないでしょう」

 

 「ヨシュハがそう言うのならいいけれど、何かあったら駆けつけられるようにしなくちゃ」

 

 エマもクラスタの人見知りは知っている。いつも姉のようにクラスタに構っているから彼女も心配なのが分かる。

 

 「そうですね。ですが、あちらは先輩達に任せましょう。さっ、今日もやることがありますよ」

 

 中等部も高等部ほどではないがシークレットジョブが舞い込む。エマの気をそらすようにヨシュハは話題をふった。

 

 (クラスタは頼みますよ。先輩方)

 

 

 

 

 「はい、どーぞ」

 

 「ありがとうなの」

 

 その頃クラスタは高等部の生徒会にたどり着き、チュリッシェからココアをもらっていた。

 

 シドはチュリッシェに言われて席で待機中である。クラスタはかなり緊張ているようだから、最初は女の子通しにしといた方がいいだろうとシドも思った。

 

 「あ、あの、お手伝いって…何したらいいの?」

 

 最初は緊張からか話すことも怪しかったクラスタはソファに座りムウムウを撫でることで大分落ち着いてきていた。ムウムウも大人しく彼女の膝の上で撫でられている。

 

 チュリッシェはその言葉でクラスタがヨシュハにお手伝いをしに行ってと言われてきたことを察した。

 

 「ああそうだった。見ての通り私とシド以外は外に出ているから、今日はお手伝いしてほしかったの。ねっ、シド」

 

 「ええ、来てくれて助かったよ」

 

 チュリッシェに話をふられシドはクラスタに笑いかけた。チュリッシェはびくっと反応し顔をそらした。

 

 これは嫌われてしまったのだろうか。校長との会食の時に何かしてしまったかとシドは少しへこんだ。チュリッシェはそんなシドに近づき、クラスタから見えないように彼にチョップをいれる。

 

 「うわっ、チュリッシェ先輩!?」

 

 「何、シカトしてんの。クラスタに任せる仕事よ」

 

 どうやら、チュリッシェからの呼び掛けを無視してしまったようだ。シドは慌てて謝り、ファイルが何冊も入っている棚を指差す。

 

 シドは小声でチュリッシェに話しかける。

 

 「クラスタにはあれの整頓をお願いしたいです」

 

 「そう。なら頼んできなさい」

 

 「いや……、僕は彼女に嫌われてしまってるみたいですので」

 

 「はっ?」

 

 チュリッシェも小声で返事しながら、シドとクラスタを交互に見た。クラスタは居心地が悪そうにチビチビとココアを飲んでいた。チュリッシェは軽いため息を吐く。

 

 「あんたは、ほんとに……。とりあえず大丈夫だから私を信じて話してきなさい」

 

 「は、はい。分かりました」

 

 呼ばれた方はともかく呼んだ方がぎくしゃくしていてどうするのかとチュリッシェはシドの背中を強めに叩く。

 

 「クラスタ。急に来てもらって悪かったな。ここを整理するのを手伝ってくれないか?」

 

 「ええと、あの」

 

 「にゃー」

 

 「分かったの!」

 

 ムウムウが前足でクラスタの膝をちょいちょいと叩き、それがクラスタに返事を促したようだ。

 

 「ありがとう。じゃあ、早速始めようか」

 

 シドは何冊かのファイルを手に取り、机の上に置く。クラスタと体面に座り作業の説明をした。クラスタはムウムウと一緒に真剣に話を聞き、作業に取りかかる。

 

 シドも同じように作業をしながら、話を切り出すタイミングを探す。そこにチュリッシェも加わり三人は黙々と作業をした。

 

 三人がしているのはファイルの中身の整理整頓だ。キーツが以前に時間がある時にしようと言っていたのをシドは覚えていて利用した。

 

 クラスタは特に戸惑うことなく作業にとり組んでいた。

 

 「にゃー!」

 

 十分くらいした時にムウムウが高い声で鳴いて!前足でちょいちょいとファイルを指す。

 

 「あ、ありがとうなの。ムウムウちゃん」

 

 それに気がついたクラスタはファイルをよく見るとその部分を直してムウムウにお礼をした。どうやらムウムウがクラスタに教えてくれたようだ。

 

 「その子賢いんだな」

 

 シドが手を止めて感心したように話しかけるとクラスタは嬉しそうにムウムウの頭を撫でた。クラスタはシドが話しかけることにも慣れてくれたようだった。

 

 「そうなの。ムウムウちゃんは強くて頭がよくてすごいの」

 

 「にゃー」

 

 クラスタが言うとムウムウは自慢気に飛びあがり一声鳴いてクラスタにすり寄った。

 

 「二人は仲良しなのね。いつから一緒なの?」

 

 そんな二人にチュリッシェは伸びをしながら声をかける。彼女はちらっとシドの方も見たので、シドは微かに頷いた。

 

 「……いつから?」

 

 「……にーにゃにゃ?」

 

 二人は顔を見合わせて同じ方に首をかしげた。その仕草がとても可愛らしい。

 

 「ずっと一緒だったの。クラが小さな頃からずっと」

 

 クラスタも覚えていないほど昔から一緒にいたのかとシドは感心する。そんな小さなうちから使い魔がいたというのはすごい。

 

 「そうなのか。じゃあ、二人はどこで仲良くなったんだ?」

 

 セスの話ではクラスタに使い魔がいた話は聞いていない。そんな存在がいれば屋敷の中では噂になっていただろうから聞いていないと言うことは、セスが屋敷から出た後だろうとは思う。もっとも、意図的にその情報を隠していたのなら話は別だが。

 

 「うーん?」

 

 「にゃーにゃににゃーににににーにゃにゃににゃ」

 

 クラスタは首を傾げたが、ムウムウの方はそんなクラスタに何かを訴えかけていた。クラスタは熱心にその訴えを聞いていた。

 

 シドとチュリッシェは二人してその様子を眺めていた。

 

 「そうだったの」

 

 クラスタはぽかーんとした顔でそう呟いた。その表情からクラスタがその話を初めて聞いたことが分かった。ずっと一緒にいるのが当たり前で、特に疑問に思ったことはないようだった。

 

 「ムウムウは何て言ったんだ?」

 

 そんな様子のクラスタにシドはそっと声をかけた。クラスタはムウムウから聞いた話をシド達にも教えてくれた。

 

 「クラが小さな頃に迷子になって、ムウムウに助けてもらったらしいの」

 

 ムウムウは続けて何かを話始める。クラスタがそれを訳して教えてくれた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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