わかった気にすらさせてくれない。
画面の向こうの君は、いったいどんな表情でこんな言葉を僕にくれているんだろうか。もう寝る支度は済ませているんだろうか、化粧などは全て落としてしまって、学校では見せないような君が画面の向こうにはいるんだろうか。どれだけ想像を巡らせても、考えてみても僕にはわかった気にすらなれないんだ。
「 何も思い当たることが出来ないんだ。」
杉原が彼女の優子ちゃんと喧嘩したときに言ってた、わかってるつもりにならないでッ、て言われたって。杉原は優子ちゃんの全てをわかってるつもりではなかったらしいけど、少しはわかってると自負していたらしくて、まあ、三年も付き合ってれば普通な気がするけども、でも、その"わかってるつもり"が優子ちゃんの乙女心に傷をつけたようだ。
中学2年生の時から三年間想いを寄せ続けた。わざと同じ高校を選んでみたし通学路でさりげなく隣を歩いてみたことも数えきれない。席替えでは隣になったことはないけれど、斜め後ろをゲット出来たときの喜びったらなかった。想いが溢れてしまって、ついに僕は君に打ち明けてしまった。その時君は、女の子らしく頬を染めて戸惑って返事は少し考えたい、とだけ言って僕の前を去った。その時の君は女の子らしくて、あまりにも女の子らしくて。
「 君は僕には何もわからせる気がなくて遠い存在なんだって、わかったんだ。」
そうならそうと僕も手を打とうと、わざと返事を急かすようなメールを送って君の返事を待った。案の定すぐに、シンプルだけどとても女の子らしくて何重もの壁をを拵えたようなそんなメールが返ってきて。
それでも嬉しいんだ、君がどんなに遠くて女の子らしい女の子でなくても、考えていることが何もわからなくてわからせようともしてくれない、そんな君でも。いいんだ。僕は君じゃないとダメなんだから。
『 明日の朝、一緒に学校行こう。迎えに行くよ。おやすみなさい。』
-EnD.-