墓守メイド巴さん
苦情は一切受け付けません
ここはある国にある、忘れ去られた墓地だ。
周囲を壁に囲まれており、外界から隔絶されていた。
墓地の様式は日本風で卒塔婆や四角いお墓が置いてある。
そこには忘れられてしまったために誰も来ないからか無数のアンデッドが蔓延っていた。
ここに三体のゾンビが話し込んでいた。
一人が会話の中心になって盛り上がっている。
「暇だよな。」
「ああ、暇だべ。」
「暇だ。」
三体は暇を持て余しているようだ。
「オレ達も人里に行って、ビッグになろうぜ!。」
どこからその考えが浮かんだのかわからないが、リーダー格のゾンビがそんなことを言い出した。
「そうだな、行こう行こう!。」
「ビッグになるべ!。」
その考えに二体も賛同する。
三体のゾンビは立身出世を夢見て墓地に唯一ある出口の門に向かった。
ゾンビたちが外に出ようと門に近づいた瞬間、壁の上の方から声が響いた
「待ちなさい!。」
ゾンビたちはその声に反応して足を止めた。
「誰だ!?」
「とうっ!。」
壁の上から声の人物が飛び降りた。
黒いロングヘアーで、スラリとしたモデル体型だ。
その人物はメイド服を着ていた。
「アンデッドは墓地から出るのは許されないわ、今すぐ戻りなさい!。」
「うるせぇー、俺たちは外に行って、人を脅かすんだ、邪魔すんじゃねぇ!。」
リーダー格のゾンビがそう叫び返すと、取り巻きもそれに同調して声を上げた。
「なんて、残酷なことを・・・。」
メイド服の女性はそのあまりの非道な目的に絶句している。
ゾンビたちの目的はあくまで脅かすだけなのだが、メイドにとってそれは残酷な行いらしい。
「許さないわ、あなたたちは私が地獄に送ってあげる。」
「武器も持たない女にオレ達が倒せるか!。」
「武器ならあるじゃない、そこらじゅうに。」
そう言い、メイドは近くの墓にある木の板を掴んだ。
「喰らいなさい、卒塔婆ソード!!!」
説明しよう。卒塔婆ソードとは卒塔婆を剣にする罰当たりな技だ。
しかし、アンデッドに対しては、圧倒的力を発揮する最強の剣だ。
だが、木でできているために消耗が激しい、まさしく罰当たり極まりない。
その一撃を受けたゾンビの一体は何の抵抗も許さず、真っ二つにされた。
「貴様、よくも田吾作を!。」
リーダー格のゾンビが怒りに打ち震えている。
その間にメイドの魔の手はもう一体ゾンビに迫っている。
「卒塔婆スラッシュ!!!。」
メイドは容赦なく首をはねた。
「ジョニーーーー!!!。」
リーダー格のゾンビが悲鳴をあげた。
二体のゾンビを葬ったことにより卒塔婆が限界を迎え、折れてしまった。
「てめぇ、よくもやりやがったな、絶対に殺してやる!」
だが、メイドはそんなことには耳を貸さない。
墓石を片手で持ち上げた。
「おい、お前まさか。」
そのまま、墓石を投げつける。
ゾンビは見るも無残なぐちゃぐちゃの肉塊になった。
もちろん、墓石も粉々に砕け、原型を留めていない。
「悪は滅びた。」
どっちが悪なのだろうか、死者の眠る墓石を武器に使う奴の方が悪人ではないのか。
そんな言葉も彼女には通用しない、なぜならメイドは正義だからだ。