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13:エロ同人ってなんですか

窮屈だった通路は徐々に大きくなり普通のトンネル程度の大きさへとなる。

希樹達は四方を緑に包まれながら一直線に伸びる道を歩く。


「今の時期咲いてない花も咲いてるな…」


タマがあたりを見渡してぽつりと呟く。

その視線の先を辿るとたしかに春先には見ない花も蔦の隙間からちらほら咲いていた。

薔薇にコスモス、水仙、ツバキ、キンモクセイ…どれも今の時期には見当たらない花だ。


「タマ先輩、植物詳しいですね」

「祖母も母も花が好きだからな。

みただろ?家の半分以上が庭で昔から手入れも手伝わされてたんだ。」


タマは目を細めて少し微笑みながら話してくれた。

彼は花や植物が好きなようで、微笑みながら咲いている花のことを説明してくれる。


道も一直線だった道がくねくねと曲がるようになり、最初の目的を忘れつつハイキング気分で希樹達3人は歩く。

途中蜜を収穫しているであろうバケツがいくつも置かれた花畑をみつけたが

特に妖精はいないのでそのまま道を進むことにした。


そしていくつか目の曲がり角を曲がると


「うにゃああああああああああ!!!」

「!」

「とっても大きいですね~」


曲がった先にいたのは巨大な蔦の塊――のモンスターだった。

おおよそ大きさは4mと巨人のような形をしてノシノシと重そうだが意思を持って動いている。

顔らしき部分にはギザギザした歯が生えており、手は長い蔓がうごうごと蠢いている。


だがしかし希樹が驚いたのはそのモンスターではなく、タマの大きな悲鳴であった。


(――先輩の悲鳴、すごい大きいし高いから耳に響く…)


希樹とセフィラは落ち着いたもので、のんびりとモンスターの出方を待っているが

タマはバタバタと手足を動かして落ち着きない様子で希樹の洋服を掴む。


低い空気のような声でモンスターが威嚇して希樹たちを襲ったので

彼女は咄嗟にタマを所謂お姫様抱っこして高く飛び、攻撃を回避した。


「あ、あれ、な…なに…」

「あれは……んー、なんでしょうかね?」


希樹は少し考えてそのまま思考を放棄した。


多分妖精の使役しているモンスターだとは思うけれど

なぜ自分たちを襲うのかがわからない。


妖精は基本人好きなので、使役しているモンスターに人を襲わせるとは考えられなかったからだ。



「あまり歓迎されていないですねぇ。」


セフィラがのんびりと言った言葉に希樹もゆったりと頷く。


「なんでそんなのんびりしてるんだよーーー!!!!」


わなわなと小さい口を震わせたタマの声が場に木霊した。




◇◆◇





「どうします?あまりモンスターを壊してしまっても妖精は怒っちゃうと思うけど」


モンスターの触手の攻撃を避けつつ希樹がセフィラに問うと

攻撃を余裕で避ける希樹に少し興奮状態が冷めたタマが口を開く。


「…あの蔦がいけないだから、先を切ればいいんじゃないか?

蔦を切る程度ならまた生えてくるだろうし……。」


「なるほど!

では勇者さ…イツキさん、タマさんを私にパスしてください。」


「はい、じゃあいきますよ!」


「ちょ、ちょっとまてええええええええええええ!!!!」


制止の声をあげたタマなどお構いなしに、希樹は離れた位置にいたセフィラに勢いよく投げる。


弧を描いて宙に舞うタマが大きな声を上げるどころか――逆にとても静かだった。


無事セフィラにキャッチされお姫様抱っこされると『ひ、ひぐっ』と引きつった声を上げた。

その姿をみることなく希樹は口角を上げ聖剣を取り出す。



今回は聖剣が空気を読んだためユニーク武器がでた。

――菜園用のはさみである。

普通と違うのは希樹の身長ほどの大きさで、レトロな装飾がされているところだろう。


希樹は意外とユニーク武器が好きだった。

使いづらくはあるけど、結構フィールドにあった武器が当たるからである。


ちょきちょきと刃を動かすと植物のモンスターはビクリと体を震わせる。

それを見た希樹は少し悪い笑みを浮かべながら、すばやくモンスターの手足をチョキチョキと切っていく。

モンスターは抵抗しようとするが元々動きが遅く、かつ希樹の速さはタマでさえ負えないほど素早い。


あっという間に綺麗に整えられたモンスターの出来上がりである。

ただし希樹に美的感覚は求めてはいけないので少しまばらな部分もあった。



「ふう、すっきりした!」


「ヴオォォォォォ!!!!!!////」


すっかり丸裸にされたモンスターは恥ずかしそうに胸を隠しながら逃げていく。

その姿を呆然と見つめた希樹はこう思う。


(え、もしかしてあのモンスターの洋服的な葉っぱも切っちゃったのかな…。うう、ごめんね。)


希樹はそれをただ見送っていたけれど、セフィラはそのモンスターを追いかけていく。

…勿論タマをお姫様抱っこしたままだ。


「モンスターのいった先に妖精がいるかもしれません、行きましょう」

「っ!そうですね!」

「いや!その前に俺をおろせえええええ!!!!!」



◇◆◇




モンスターを追いかけていくと、蔦がたくさん這っているドアを見つけた。


「ここに、入っていったのか?」


無事地面に下ろしてもらえたタマが恐る恐る希樹たちに問う。

希樹がそのままセフィラを見ると、笑顔で頷いた。


タマがすぐにドアを開こうとするので、セフィラが楽しそうに声をかける。


「開けた瞬間ナイフが飛んできたりしたら面白いですねぇ」


びくりとタマは肩を震わせ、ドアを開けることなく手を下げた。

そんなセフィラ(師匠)に呆れつつ希樹が変わりにドアノブを回す。



部屋の中は薄暗く少し湿っぽい。荒れたコンクリートの部屋に蔦がところどころ這っていた。

割れた窓からは綺麗な緑が無造作に覗いている。

廃屋だけれど植物の生命力であふれているこの部屋の真ん中のテーブルには薔薇がちらほらと飾られていた。

だがいるはずのモンスターは、いない。



「薔薇の妖精ですね。」


セフィラがそっとそのテーブルに近づくと薔薇の香りがとても強く香る。

テーブルをよくよくみると派手なドレスをまとった赤い髪の妖精が花びらに抱かれ座っている。


13・4歳くらいの少女の姿だが大きさは手のひらくらいの大きさだ。

容姿は唇は赤く、愛らしく美しいがややつり目で勝気な性格にも見える。


「――観念したわ!!煮るなり焼くなりするがいい!」


いきなり噛み付くように叫んだ彼女を、3人はポカンと見つめた。

彼女は身もだえするように己を抱く


「ど、どうせ私に乱暴する気でしょう? エロ同人みたいに! エロ同人みたいに!!!!」

「しねーし!!!!しねーよ!!!!」


タマは頬を染めながらこぶしを作って力強く否定した。

希樹もセフィラもエロ同人という単語の意味がわからないので首をかしげる。


「おお、薔薇の妖精よ。誤解です。私たちは貴方に『えろどうじん』?をしにきた訳じゃではありません。」

「騙されないわ!!あの子を攫ったのもイヤラシイことをする為なんでしょう!!

おお!なんておぞましい!!なんてことでしょう!!!!」


セフィラがなんとかこの場を落ち着かせようと声をかけるが

逆に薔薇の妖精は声を荒げパタパタと羽を広げ飛び出してきた!



――だがタマをみて、その動きを止める。


「あら、貴方は」

「ああ、タマさんに祝福を授けたのは貴方ですね。」


薔薇の妖精は訝しげに眉を寄せる。

そして3人を見渡し落ち着いたように静かに口を開く。


「貴方たち、何が目的なの…?」


「私たちはこのタマさんへの祝福の解除を願いにきました。

このつまらない祝福を解いていただけませんか?

このままでは彼普通に生活することすら叶いません。」


訴えるとバラの妖精は少し考えた後、口を開く。

表情は先ほどの困惑した表情からまた警戒するような厳しい顔つきだ。


「つまりリリーを人質に、取引にきたってわけね!」


「人質?」


希樹が口を挟むとバラの妖精は厳しい顔つきで頷いた。


「数日前、貴方たちが攫っていった百合の花の妖精よ!

さあ!!あの子をか「残念なことにそれとは私たちは一切関係ありません」え?」


セフィラは小声で『だからあんなモンスターを配置していたのですね』と漏らす。

薔薇の妖精は少し固まり、軽くこちらを指差す。


「え、リリーのことは?」

「全然知らねーよ…」


タマが脱力したように答えるとバラの妖精はひょろひょろと下降していく。

希樹が慌てて手でキャッチすると弱弱しく指を伝って立ち上がる。



「…数日前のことよ、何者かがあの子を襲ったのは…」


(――あ、なんか急に語り入った)


と3人は思いつつその話に耳を傾けた。


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