覚悟しろっ!
「覚悟しろっ!」
丸めた新聞紙の筒を片手に飛び込んだ教室には、大人しそうな少女が一人。
窓際の最後尾の席で、今正にページをめくろうとした態勢そのまま、固まって、すくんでいる。
辞書サイズの文庫本、黒髪は三つ編み、やぼったい制服に眼鏡。
怯える優等生な文学少女を夕陽が照らす……。
「すいまっせんしたあーっ!」
余りの居たたまれなさに涙目で土下座したところで背後に足音。
「ハイ、お前の負け☆」
ポコンと新聞紙を丸めた筒で頭を叩かれる。
「影崎貴様!」
ガバリと起き上がって振り返ると、影崎はにこにことスマホをこちらに向けた。
土下座して頭を叩かれている男子中学生の姿が映されている。
俺だ。
「ちょ、おま!?」
「捕まえてごらんなさ~い|(裏声)」
影崎はおほほほほと笑いながらスキップで教室を出て行く。
「待て影崎貴様その写真をどうする気だぁ!? 後そのノリ古いぞ!」
教室を出たら、影崎は五教室程先の階段に飛び込むところだった。
「瞬間移動!? 影崎待て!」
涙目で影崎を追う。
後にはポカンとした少女が残された。