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ボクと妹の禁断領域  作者: 南条仁
ボクと妹の禁断領域
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第1話:ボクは妹に翻弄される


 海東彼方の性別は女である。

 男の子より男らしいと言われることはあるけども、女の子。

 身長は170センチ、女子としては高い方だ。

 趣味はスポーツ全般、大抵のスポーツはすることができる。

 どうして、貴音は彼方を「おにぃ」と呼ぶのか。

 その理由は単純なものだ。

 貴音いわく「こんなにカッコイイ人が女の子なわけがないじゃない」。


――ボクはちゃんとした女の子です、貴方のお姉さんです。


 いつしか、貴音は「お姉ちゃん」ではなく、「おにぃ」とら呼ばれていた。

 どれだけ注意しても直してくれる事もない。

 二人で並んで歩いてると姉妹なのに、兄妹みたいに思われることもしばしばある。

 私服の時はさらにひどくて、恋人同士に思われる事もあるほどだ。


――ボクは女の子っぽくないからなぁ。


 自分でも容姿が女の子らしくない事を気にしている。

 短めの髪、高めの身長、スカートよりもショートパンツ派。

 ホント、自分から女っぽさを排除してるような感じ。

 正反対に女の子らしく可愛い美少女の貴音。


――ボクが母親のお腹に残してきた可愛げなんてものを十分すぎるほどに貴音は持っている。


 姉妹としては変な意味でバランスが良いのかもしれない。

 

 

 

 

「海東さん、パスっ!」

「よしっ。ここなら、行ける――」

 

 日曜日、彼方は女子バスケット部の助っ人で練習試合に参加していた。

 他校との試合はプライドもあるから、負けられないらしい。

 試合中、ボクはボールをドリブルしながら、相手の動きを見る。

 ……距離はいいけど、囲まれちゃうか。

 周りを見てもパスは通せないので、そのままゴールを狙う事にする。

 

「今だっ……いけっ!」

 

 彼方が放り投げたボールは綺麗な弧を描いて、ゴールの中に吸い込まれていった。

 そして、女の子たちの歓声があがる。

 

「……きゃーっ。海東先輩、カッコいいっ」 

「これで何点目?もう、数えられなくらいだよね。先輩のプレイ、最高!」

「彼方先輩~っ。頑張ってくださいっ」

 

 ……相変わらず、後輩の女の子たちの応援の声が多い。

 結局、試合は彼方たちの勝利で終わった。

 もちろん、彼女一人の力ではなく、頑張っていた部員の皆の力だけども。

 

「ホントに海東さんはバスケも得意よね。バスケ部に入ってくれないの?」

「ごめん。ボクは何かの部活に入る気はないから。上下関係とかもあるし……」

「もったいないなぁ。まぁ、他の部活に入られると困るからフリーでいてくれるのはいいんだけどね。今日は海東さんのおかげで助かったわ。また機会があればお願いするよ。でも、今日も最高にカッコいいプレイだったわね。私もファンになりそう」

「ファンはやめてよ」

 

 バスケ部の部長に言われて、彼方は笑って答えた。

 試合後、ボクは休憩をしながら、体育館の端に座り、タオルで汗をぬぐう。

 

「よぅ、カナタ。お疲れさん。これでも飲めよ」

 

 彼方の前に現れた男子は上原うえはらという。

 ふたりは中学の時からずっと仲のいい男の子の友人だ。

 

「冷たいっ。あっ、イチゴ・オレだ。買ってきてくれたの?」

「試合してたのが外から見えたからな」

「ありがとう。……んー、冷たくて美味しい」

 

 大好きなイチゴ・オレ、すぐにストローで飲み始める。

 上原君は彼方を見ながら、微笑しながら言う。

 

「ホントに好きだな。普通はイチゴ・オレなんて、スポーツしたばかりで、飲める品物じゃないんだがな」

「これが好きだからいいんだよ。上原君の部活は?」

「今日は自主練習だから終了。後半から見てたぞ。相変わらず、ナイスゴールの連発だな。バスケ部に入れば?」

「ううん。ボクはただの趣味だから。身体を動かすのが好きなだけ」

 

 周囲から勧められが、趣味と部活は違うものだと思っている。

 

「うちのサッカー部も女子OKなら、ぜひとも、カナタを誘うんだがな」

「あははっ。でも、上原君。ボクはサッカーなんてしたことないよ」

「いや、今の時代は女子サッカーも人気だからな。すれば絶対にうまくなるって。カナタの才能は本物だ。どんな部活で本気ですれば、頂点目指せるのにもったいない」

「そこまでじゃないのに。皆、ボクを過大評価しすぎだよ」

 

 そんな事を彼と話していると帰り際の後輩たちから声をかけられた。

 

「彼方先輩、今日の試合、すっごく興奮しました。また魅せてくださいね」

「私たちは先輩のファンですから。いつでも応援にきますよ」

 

 後輩たちの言葉に笑顔で「ありがとう」と答える。

 その様子を見てた隣の上原は面白がる口調で言う。

 

「そして、こちらも相変わらず、女の子の後輩から大人気だな。カナタの妹は男子の人気を総取りしてるが、女子の後輩から絶大な人気者がカナタだからな。本当にすごい姉妹だよ、お前たちは……」

「はぁ……女子から好かれてもね。もちろん、応援されるのは嬉しいけど……たまに本気な子もいるし」

 

 悲しいことながら男子から告白された経験は皆無なのに、女子からの告白は経験がある。

 

『私、彼方先輩が好きなんです!』

 

 たまに後輩の女の子から本気の告白される事もあるのが困る。

 そんなもののは漫画だけの世界だって高校に入るまで思っていた。

 

「ボクはノーマルなのに、どうしてこんなことになるのやら」

「そりゃ、カナタ。お前が女の子なのにカッコよすぎるからだろ」

「うぅ、女の子らしくなりたいんだけどね。ボクには無理なのかな」

「まぁ、女子から告られるのは、お前の妹のせいでもある。仲よすぎるし、あれは完全に惚れてるからな。カナタは百合要素ありって思われてるんじゃね?」

 

――それが問題か!


「ボクはノーマルです。百合とか女の子ラブでは決してありません。ガールズラブな要素は一切持ちあわせておりません。男の子と恋愛したいとか普通に思ってるのに」

「女にモテるってのも困りものだな」


 ふと、彼方の視線に入ったのは妹の貴音だった。

 

「はぁ……」

 

 小さくため息。

 貴音はこちらに手を振って近づいてくる。

 

「さぁて、と。カナタの妹に目の敵にされないように俺は帰るか。また明日な、カナタ」

「うん。バイバイ、上原君。イチゴ・オレ、ありがとう」

「おぅ。おっと……言い忘れた。俺から見れば、カナタは女の子っぽくて可愛いと思うぞ」

「え? そ、それって?」

 

 思わぬ言葉を彼からもらって戸惑う。

 

「ははっ。じゃぁな」

 

 彼の立ち去る後姿を見ながら、思うのだ。

 

「……ボクに女の子っぽい要素なんてないって」

 

 と、自嘲しながら貴音を迎える。

 彼女はこちらに来るや可愛らしい笑みを浮かべる。

 

「今日もカッコよかったよ、おにぃ! 大活躍だったね」

「どうも。貴音も暇だなぁ。日曜日くらい彼氏でも作ってデートでもすればいいのに」

「いや。男の子なんて興味ないもん。私にはおにぃがいればそれでいいの」

「お願いだから健全な道に戻って!?」

 

――お母さん……最近、妹の将来が本気で心配です。

 

「あ、そうだ。さっきの上原さんでしょ! ダメだよ、男の子と一緒にいるなんて」

「彼とは中学の時からの友人だし。別にいいでしょ」

 

 女の子同士よりもよっぽど健全だ。

 

「おにぃは彼氏なんて作っちゃダメなの。彼女にして。おすすめはわ・た・し♪」

「――い、嫌だよ!? しかも、頬を染めないで!?」

「照れ屋さん。おにぃはホントに素直じゃないなぁ」

 

 妹の貴音に翻弄されてばかりの彼方。

 彼氏とか作るのは、しばらく無理そうだった。

 

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