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ボクと妹の禁断領域  作者: 南条仁
続・ボクと妹の禁断領域
17/17

最終話:私はおにぃの恋を認めない

【SIDE:海東貴音】


 人は誰だってきっかけがあれば恋をする。

 そう、例え、どんなに鈍感スキルを持っているおにぃだとしても。

 自分の気持ちに気付いてしまう事はあるかもしれない。

 今、私はおにぃが恋に目覚める瞬間を邪魔しようと必死だった。

 その夜、私はおにぃの部屋のベッドの上で寝転んでいた。

 

「貴音、あんまり布団を崩さないで」

「後で直しておいてあげるから問題ないよ」

「……気持ちの問題なんだけどなぁ」

 

 おにぃは勉強をしているので私は邪魔しないように静かにしている。

 そんな時、おにぃから相談されることになる。

 

「ねぇ、貴音。上原君って良い人だよね」

「……はい? 私にそれを聞くわけ?彼の良さってのはおにぃが一番よく知ってるんじゃないの。私にとってはライバルであり、むしろ敵だからあんまりよくは知らないけどね」

「敵ってひどいな。貴音は仲良くないから分からないか」

 

 私たちはおにぃをめぐってのライバル関係。

 おにぃから彼についての話をこんな形でされるのは珍しい。

 

「一般的な印象で言うなら良い人なんじゃないの? ただし、おにぃ限定かもしれない。だって、彼って他の女の子と一緒にいる所ってそんなに見ないでしょ」

「ん……そうかもね。ボクとは一緒にいる機会は多いけど。だからこそ、近くにいすぎて分からないこともあるっていうか」

 

 おにぃにしてはまどろっこしい言い方をする。

 彼女と上原さんの付き合いは中学の時からだから結構、長い。

 

「近くにいすぎて分からない。私がこんなにもおにぃを愛してる気持ちでさえも」

「多分、一生分からないで良いとボクは思う」

「おにぃ、ひどいわっ。私は悲しい。こんなにも切ない片思いを強いるなんてっ!」

「……姉が妹に愛されてもこれっぽっちも嬉しくないんだってことに気付こうよ」

 

 いつものやり取りにも、おにぃは覇気がない。

 何だろう、元気がないのかな?

 

「本当に分からないんだよねぇ」

「何が?」

「今までと違う気がするんだ。一緒にいても、何か変な気持ちになるっていうか」

 

 おにぃが頬を赤らめて呟く姿に私はハッとする。

 ……あ、あれ?

 もしかして、もしかすると……?

 い、いや、そんなはずが……だって、鈍感なおにぃが自分の気持ちに気付くはずがない。

 

「それは、誰と一緒にいても? もちろん、私だよね? ね?」

「……貴音じゃなくて、上原君の話をしてるんだけど?」

「な、なぁっ……!?」

 

 私は驚いてしまい、思わずベッドから転げ落ちてしまう。

 

「た、貴音? 大丈夫?」

「うぅ、痛いよぉ……」

 

 私は打ったお尻を押さえながらおにぃに詰め寄った。

 今はお尻の痛みよりも確認しなきゃいけない事がある。

 

「上原さんのどこが気になるって?」

「え? あ、うん。この前から何だけど。ほら、ボクが怪我して背負ってもらったじゃないか。あの時から彼の傍にいると妙な気持ちになるっていうか」

 

 まずい、本当にまずいことになってきた。

 怪我して助けてらもらって相手の異性の魅力に気付く。

 少女漫画にありがちなシチュをまさか私の姉が体験中なんて……。 

 おにぃは普段から女の子扱いされたりしないから余計に効果が抜群だった。

 彼女が上原さんを“異性”としての魅力に気付いてしまうなんて。

 私は動揺しながら、どうすればいいのかを考える。

 

「上原さんと一緒にいて楽しい?」

「それは前からだよ。上原君はボクにとって信頼できる友達だもの」

「ど、ドキドキしたりする?」

「……そうなのかな。ドキドキかどうかはよく分からないけど、一緒にいると恥ずかしいっていうか、照れくさい気持ちになるんだ」

 

 それは恋の前兆ってやつじゃないの?

 おにぃの鈍感スキルならば、あの程度のイベントで恋心が目覚めるはずがない。

 そう思っていたのに、こんな風におにぃに変化を与えてる。

 ダメだよ、これは……この流れだけは全力で阻止しないと手遅れになる。

 そもそも、おにぃは上原さんに好意は抱いてる。

 それが恋愛感情って気持ちじゃなかっただけ。

 だけど、一回でも自分の気持ちを認めてしまったらおにぃはきっと彼に恋をする。

 そうなると可愛い妹と言う立場だけの私に振り向いてくれない。

 

「おにぃ、ドキドキするんだよね」

「似た感じなのは確かだけど……これって、もしかしたら……ボクは恋してるのかな?」

 

 おにぃの胸を高鳴らせる高揚感。

 本当の気持ちに気付いたら、私の負けだ。

 

「ち、違うのよ。恋なんかじゃないんだから。それは……風邪なの!」

 

 苦しい言い訳ながらも、私はびしっとおにぃを指さした。

 

「……風邪?」

「はい、ただの風邪です。最近、寒かったからねぇ。ドキドキしてるんじゃなくて風邪気味なだけ。よくあるオチに違いないわ。というわけで、おにぃはさっさと寝る!」

「いや、さすがに風邪をひいたわけじゃ……あっ、貴音!?」

 

 私はおにぃをさっさとベッドの方へと誘導する。

 お風呂上がりでパジャマ姿なのでそのまま布団をかぶせてしまえばOKだ。

 

「まだ宿題が終わってないんだけど」

「私がやっておいてあげるから! おにぃは風邪だから早く休むのっ」

「あ、ありがと……貴音ってさ、妙に優しい時があるから怖い」

 

 これは私の優しさだけじゃないからね。

 私の愛がかかってるのよ。

 おにぃがベッドに寝るのを確認してから私は言う。

 

「……おにぃ、私と一緒でもドキドキする?」

 

 上原さんじゃなくて、私が相手でもおにぃは高揚したりしないのかな。

 私なんて……いつだっておにぃにドキドキしてるのに。

 返事のないおにぃに私は不安になりながらも声をかける。

 

「おにぃ?」

「……すぅ」

「寝るの早っ!?」

 

 寝つきがよすぎる子供並みの態度に私は呆れてしまう。

 ぐっすりと瞳を瞑って綺麗な寝顔を私に見せる。

 

「可愛い寝顔を見せれば許されると思ってない?」

 

 おにぃってば、乙女心をなめすぎ。

 私の想いを踏みにじるつもりなの!?

 

「妹の恋心を分かってくれてない。ひどいよぉ、ぐすんっ」

 

 拗ねながら私はおにぃの椅子に座って宿題を書き始める。

 字が違うから先生にバレるとかそんな心配はゼロ。

 ふふふっ、私はおにぃの字に似せて書くのが得意なのよ。

 宿題自体はさっきしたばかりの問題なので解くのは簡単だ。

 

「おにぃの恋なんて絶対に認めてあげないっ」

 

 彼女が私じゃない誰かに恋心を抱くなんて認めるわけにはいかない。

 でも、本当に恋だったとしたら?

 姉の恋を私は応援するべきなのかな。

 嫌だなぁ、そんなこと……絶対に嫌だ。

 

「おにぃ……」

 

 嫌な想像をしてしまい、私はちょっぴり瞳に涙が溜まる。

 大好きなおにぃが他の誰かのものになるなんて嫌だ。

 私だけの大切な人でいて欲しいのに……。

 私は宿題のノートを書きながら、小さく胸が痛んでいたの。

 

 

 

 

 翌日の話。

 すっきりとした顔で目覚めたおにぃは私にこう言った。

 

「やっぱり、風邪だったみたい。一晩寝たらすっきりしたよ」

「……へ、へぇ。よかったじゃない」

「うん。寒かったから気をつけないとね。貴音も風邪には注意するんだよ」

 

 まさかの展開。

 冗談で言ったのに、本当におにぃが風邪だったなんて。

 その証拠なのか、登校途中に上原さんにあったけど、おにぃは満面の笑みを浮かべて、

 

「上原君を見てもドキドキしない。気のせいだったんだ」

「は? どうした、カナタ?」

「ううんっ。何でもないよ。こっちの話」

 

 隣でその光景を見てた私は顔をひきつらせていた。

 ……あのドキドキしてたと頬を赤く染めて言ってたおにぃはどこに?

 おにぃが恋に目覚めた、とか思ったら風邪だったというオチで。

 その上、ドキドキしないって言われてしまった上原さんが敵でありながら可哀想だ。

 思わず同情してしまい、私は彼の肩をたたいた。

 

「……上原さん。可哀想に」

「なぜ、俺の肩をたたく、貴音さん」

「おにぃの心はまだ誰のものでもないってことだよ」

「姉妹揃って朝から意味が分からないんだが? 何の話だ?」

 

 不思議そうな顔をする上原さん。

 

「何の話かって言うと、それは恋の話なのよ。ねー、おにぃ?」

「……え? どうなんだろう?」

 

 彼も私も恋心が実るのは当分、先になりそう。

 おにぃが誰かを好きになる、そんな日がいつかはくるかもしれないけども。

 その時の相手は私か、それとも、上原さんか。

 どちらにしても、負けるつもりなんてない。

 私たちの恋の勝負はまだまだ続く……。

 いつか絶対に私に振り向かせて見せるっ。

 

【 THE END 】


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