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ボクと妹の禁断領域  作者: 南条仁
続・ボクと妹の禁断領域
16/17

第3話:私とおにぃと恋敵

【SIDE:海東貴音】


 おにぃがアクシデントで負傷して保健室に運ばれたらしい。

 その連絡を受けた私は急いで保健室に向かう。

 放課後の校舎は独特の静けさがある。

 

「おにぃ、大丈夫だよね?」

 

 心配しながら私は保健室の扉を開けた。

 他に誰かいるかもしれないとゆっくりと中を覗き込む。

 だけど、そこにいたのは――。

 

「カナタ、ゆっくりとしてろ。頭を打ってるんだから」

「心配しすぎだよ、ボクは大丈夫」

「それを決めるのはお前じゃないっての。保健の先生、呼んでるからジッとしておけ」

 

 中にいるのはおにぃと上原さん。

 ベッドに寝かされているおにぃは氷で頭を冷やしている。

 

「お前を保健室に連れてきたのは何度目かな」

「……いつも上原君に助けられてるね。ありがとう。それにごめんね、上原君。ここまで背負ってきてもらって」

「それくらいどうってことない」

「あははっ。それ、普通の女の子なら言える台詞でも、ボク相手じゃ辛いでしょ」

 

 高身長のおにぃを背負うには同じく高身長の彼じゃないと無理だ。

 そう言う意味ではお似合いなふたりだったする。

 ハッ、何がお似合いだよ、そんなわけないじゃないっ。

 私は今自分が思った事を慌てて否定した。

 おにぃのパートナーとして理想なのは私なんだからね。

 私はおにぃの無事を安心して様子を見てみることにした。

 

「自分の性別くらい自覚しておけ。いいか、カナタ。お前は前から思ってるんだけど、女の子っていうことを自信を持てよ。そりゃ、後輩から王子様みたいに慕われたりするんだけど。男の俺から見れば十分、女の子だっての」

 

 ……むむっ、もしや、この機に私のおにぃを口説いてる?

 何やらいけない雰囲気になりつつある気がする。

 ベッドに横たわるおにぃを見つめる彼の視線が危ない。

 私の大切な人が狙われてる!?

 

「上原君は優しいね。いつもそうやって励ましてくれる」

「……励ましてるつもりじゃないんだがな」

「そうなの?」

「カナタの場合ははっきり言った方が良いかもな。あのさ、カナタ。俺は……」

 

 上原さんがおにぃの肩に手をかけた。

 

「え、あ、あの、上原君?」

 

 戸惑いで顔を赤らめるおにぃ。

 まずい、告白って流れだけは絶対に阻止するんだから!

 良い雰囲気になんてさせるかぁ!!

 

「――おにぃ!」

 

 私は雰囲気をぶち壊す大きな声で乱入する。

 

「……保健室では大きな声を出さないで、貴音」

 

 私の登場におにぃはため息がちに呟いた。

 うぇーん、上原さんと私との反応が全然違うよ!?

 

「何よ、おにぃが心配だったのに! 怪我は大丈夫なの?」

「今のところは問題なし。冷やしていれば治るよ」

 

 私がすり寄ると、彼女の隣にいた上原さんがこちらに嫌な視線を向ける。

 その目は「邪魔したな?」と言ってるように見えた。

 当然じゃん、おにぃを貴方になんて渡さない。

 しばらくして、保健の先生が来てくれておにぃは治療を受けた。

 怪我も大した事がない様子で、すぐに帰れるようになったの。

 

 

 

 

「……」

「……」

「……」

 

 沈黙する3人が夕焼け空の下、帰り道を歩いていた。

 おにぃを背負う上原さんの後ろを私がついていく。

 うぅ、何でこんなシーンを見せられなきゃいけないの。

 おにぃの怪我は大した事がなかったけども、未だに体調が悪かったので上原さんが家まで送っていくことになったの。

 

「は、恥ずかしいなぁ、もうっ……」

「カナタでも恥ずかしがる事があるんだ」

「ボクだって羞恥心くらいあるよ。こんなシチュはさすがに照れます」

「冗談だよ。カナタのこんな姿、後輩の子達には見せられないな」

 

 笑いながら和やかな雰囲気の二人。

 ホント、見せたくないわ、こんなおにぃ。

 プチデレの顔を見せるおにぃなんて、ファンの子が泣いちゃうよ。

 そして、私も悔しさで泣きそうです。

 彼女を背負う上原さんが楽しそうなのがムカつく。

 

「おにぃ~。私のこと、忘れてない?」

「……そこにいたの、貴音?」

「ひどっ。おにぃは私を大切にしてほしいのっ」

 

 妹の私をもっと可愛がってよね。

 私が拗ねていると、彼はポツリとつぶやいた。

 

「なんていうか、本当にお前たち姉妹は仲が良いよな」

「当然だよ、上原さん。私とおにぃは運命に繋がられてる関係なんだから」

「……ボクと貴音の関係は変な運命があるよね」

 

 おにぃってば素直じゃないなぁ。

 私との間にラブな運命があると認めて欲しい。

 

「そう言えば、こんな風に3人で一緒にいるのは久し振りかも」

 

 おにぃの一言に私も頷いた。

 私にとって上原さんは友達でもないし、ただの顔見知り。

 言うならば、友達の友達みたいな感覚だ。

 そして、恋敵と言う事もあり、それほど一緒にいる機会はない。

 

「私が上原さんと話をするのって、中学の卒業式に皆で集まった時以来かな」

「俺とカナタは運動系の部活で一緒にいる機会が多いからな。中学からも同じクラスが続いているし。貴音さんとはあんまり付き合いもない」

「まぁ、それ以外にも理由はあるけどね」

 

 互いの視線、何も言わずともその理由は分かってる。

 恋のライバルは仲良くなんてできないのです。

 おのれ、私の敵めっ。

 そんな微妙な空気を読まないおにぃは微笑しながら、

 

「こういう風に一緒に帰るのもいいよね」

「……たまには、な」

「時々くらいなら、ね」

 

 私と上原さんが仲良くすることは多分ないと思う。

 最近は本気でおにぃを口説こうとしているみたいだし。

 油断しちゃダメだ。

 今日はおにぃが怪我をしているので、大人しくしておく。

 おにぃを背負っていなかったら、上原さんにも言いたい事を言えるのに。

 そろそろ、一度、彼とはちゃんとおにぃについて話しておくのもいいかもね。

 私の大好きなおにぃに近付くなって。

 微妙な雰囲気が漂う中で、おにいだけはそれに気づいていない。

 ホントにおにぃは鈍感スキルを何とかするべきだと思うの。

 

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