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ボクと妹の禁断領域  作者: 南条仁
ボクと妹の禁断領域
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第10話:ボクと妹の添い寝

【海東彼方】


「――おにぃ、今日は一緒に寝よっ♪」

 

 貴音の襲来にボクは問答無用で部屋の扉を閉めた。

 

「……見なかった事にしよう」

 

 そろそろ、寝ようと思った頃に妹が部屋にやってきたのだ。

 部屋の外では貴音が扉をノックしながら、

 

「あ~け~て~」

 

「……うるさい。夜なんだから静かにしなさい」

 

「だって、おにぃが意地悪するんだもんっ」

 

 仕方なく部屋にいれてあげると彼女はパジャマ姿だった。

 

「たまには姉妹の親睦を兼ねて一緒に寝ない?」

 

「寝ません」

 

「というと、思ってるけど、ここはあえて強硬策。えいっ」

 

 貴音がボクの布団に寝転がって占拠する。

 

「……つまみだすよ?」

 

「お、おにぃ。顔が怖い。乙女なら、女の子らしい顔をして」

 

 眠い時間帯だけに、大人しく帰ってもらいたい。

 それにボクのベッドはふたりで寝れるほどは大きくはない。

 

「中学時代はたまに一緒に寝たじゃない。それなのに、高校に入ってからはゼロ。夜が寂しいよぉ。私はもっと、おにぃとスキンシップを取りたいの!そこで妹として、添い寝を提案します」

 

「却下。寝てる人に悪戯をしておいてよく言う。ボクのパジャマを脱がそうとした罪を忘れたの?悪いのは貴音でしょうが」

 

 彼女には前科があるので、ボクは一緒に寝たくない。

 何をされるか分からないんだから。

 

「……そんなこと、あったっけ?」

 

「犯行を行った本人が忘れてるってどうなの?」

 

「おにぃとの愛の思い出は覚えてるはずだけど、そんな記憶は思い出せません」

 

 しらばっくれる妹。

 本気で布団から引きずり降ろそう。

 

「ま、待って。おにぃ」

 

「さっさとどいて」

 

「心が狭いよ!?姉妹愛を深めようとは思わないの!?」

 

「姉を襲おうとする妹と、愛を深める気はありません」

 

 心の中で大きなため息をつく。

 

「……おにぃ」

 

 ウルウルと瞳を潤ませてこちらに迫る妹。

 その目はずるい。

 

「はぁ……好きにしてよ、もう」

 

「やった。おにぃのそういう優しい所が大好き♪」

 

 貴音相手に本気で拒絶することができない姉です。

 だって、彼女の場合、ホントに拒絶すると泣くんだもん。

 それも嘘泣きじゃなくてマジで泣いちゃう。

 他人に甘える事に関しては貴音には敵わない。

 ふたりで寝るには狭いベッド。

 ボクらは枕を並べて布団に入る。

 こんな風に一緒に寝るのは久しぶりだ。

 その上、ボクの身長も高くなっているために、余計に狭く感じる。

 

「おにぃの温もり~っ」

 

「こっちに寄らないで。狭いんだから大人しくしなさい」

 

 貴音はボクに胸を寄せつけてくる。

 ボクと違ってスタイルはいいのが羨ましい。

 

「こら、ボクに胸をくっつけないで」

 

「それは、私にあって、おにぃにないもの」

 

「……部屋から出ていけ」

 

 ちょっぴり、本気で妹に敵意がわいた。

 スタイルの悪いボクが気にするところでもある。

 体つきは女の子らしくもないから……。

 

「おにぃはスレンダー体型だからいいじゃない。胸だけがすべてじゃないよ」

 

「そこまで嘆かれるほど、貧乳でもないし」

 

「あははっ。おにぃもそんな事を気にするなんて、女の子の一面もあるんだね」

 

 笑う貴音にボクは反論する。

 

「ボクは正真正銘の女の子だ」

 

「……おにぃ、自分に無理をしなくてもいいんだよ?」

 

 同情された!?

 ホントに追い出したくなるのを堪えながら、

 

「もう、さっさと寝なさい。ボクは寝る」

 

「えーっ。もう少しお話しようよ。こんなの久しぶりでドキドキしてるのに。私……いいんだよ、おにぃになら」

 

「何がだ!?」

 

 マジで、この妹は百合要素ありすぎる。

 明日の朝を無事に迎えられるか心配になる。

 

「おにぃ。そう言えば、友達と話してたんだけど、日本語って危ないよね」

 

「いきなり何?」

 

「語尾に(性的な意味で)をつけるだけであらゆる言葉が危険に思えてくる」

 

 えっと……何か聞いた事がある気がする。

 

「例えば、私はおにぃを愛してるよ(性的な意味で)」

 

「本当に危険すぎるわ!?」

 

「私に貴方を食べさせて(性的な意味で)」

 

「……ゾクッとするからやめてください」

 

 姉に身の危険を感じさせないで、妹よ。

 

「それじゃ、逆に。私のすべてをあげる(性的な意味で)」

 

「全力で遠慮させてもらいます」

 

「おにぃ、やめて。私に何をするのっ(性的な意味で)」

 

 とりあえず、教育的指導をしたくなってきた。

 確かに語尾にそれがつくだけで危険だ。

 

「おにぃ……今日は素敵な夜になりそうだね(性的な意味で)」

 

 ……うん、段々とイラッとしてきた。

 これ以上、危険発言をしないように妹にお仕置きしておこう。

 ボクは貴音の口を手でふさいでみる。

 

「んー、んー!」

 

「もういいから。寝なさい」

 

「ぷはっ。口をふさがないでよ。おにぃってば、実はそういう趣味が」

 

「ありません。日本語の危険性はよく分かったから黙っておいて」

 

 ボクの隣に添い寝する貴音。

 

「おにぃ……興奮して眠れない」

 

「……」

 

「ねー、もう寝ちゃったの?」

 

 寝たふりをするボクを貴音はぎゅっと抱きついて距離を縮めてくる。

 近すぎて妹の体温が伝わってくる。

 

「寝たふりしてるのは分かってるんだからね。今日は寝かさないぞ(性的な意味で)」

 

「もう、それはいいっての。お願いだからボクを寝かせて!?」

 

「ダメ。今日はじっくりとおにぃに私への想いを確認してもらうんだからっ」

 

「いやぁ。もう寝かせて……うぅ……」

 

 それからしばらくの間、貴音に付き合わされてしまうボクであった。

 翌朝、貴音もぐっすりと眠ったおかげで無事に目が覚めることはできたけども。

 ――やっぱり、妹と一緒に寝るのは危険だ(あらゆる意味で)。

 

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