俺は全てを処理しきれない!!
「このままぶっちぎれ、赤ヒゲ!!」
「させないよ、圭人!!行け、ファンネ……もとい、赤い甲羅!!」
「トゲ付きの甲羅もプレゼントだよ、圭人♪」
「トドメに雷ドーン♪」
「マンマミーヤッ!!」
俺の操る赤ヒゲオヤジは雪達の一斉攻撃により吹き飛ばされ無惨にもコースアウト&湖に真っ逆さまに落ちていき、俺は敢え無く最下位となった……
お分かりになっているとは思うが、俺達は世界的に有名な赤ヒゲオヤジのレーシングゲームでエキサイトしている。ハードはあのスティックをグリグリ回すと赤ヒゲオヤジがグルグル回ると評判だった残念党99だ。
今のご時世にそんな古いゲームとか……と思われるが、古いゲームは内容がシンプルだからこそ自分の力量が試される物が多いと俺は常々思っている。
「惜しかったね、圭人君。でも大丈夫!!圭人君の仇は愛理が取ってあげるからね♪」
「ハイハイ、妄想乙」
「そもそもぽっと出はまだ一位になったことないのによくそんな大見得切れるよね。どんだけなんだよ」
「ぽっと出には最下位がお似合いなんだから自重しなさい。ところで圭人、そろそろこのゲームにも飽きてきたから赤ヒゲオヤジのスーパーテニスか爆弾男の爆殺遊戯をやりましょうよ♪」
「UFCならマルチタップ付けて5人対戦出来るから爆弾男をやろうか」
俺は残念党99の電源を切り、代わりにUFCの電源を入れる。テレビには白い爆弾男と黒い爆弾男が凶悪な面をしながら敵を市民諸共爆撃しているシーンが映し出される。よく規制されなかったものだと思う。
「どうしたの、圭人?最下位になった罰ゲームの『雪ちゃん、僕を食べて……プリーズイートミー!!』をする時のことでも考えて悶々してたの?」
「いや、そんな約束してないからね、雪!!」
全く、油断も隙もないな……
そんなやり取りをしながらもキャラクターを選択する。俺はオーソドックスに白い爆弾男を選ぶ。雪は爆弾女、雷華はDr.ケミカル、美波はドメスティックライオン、愛理ちゃんは黒い爆弾男を選び、ゲームがスタートした。
「それにしても、斎藤達は今頃デートでもして楽しく過ごしてるんだろうなぁ。アイツ等もリア充の仲間入りをしてしまうと思うと……僕もリア充になりたぁぁぁぁい!!」
「何を養鶏人間みたいなセリフを言ってるのよ、圭人。それに、圭人は昔からリア充だよ。私という恋人が一緒にいるんだからね♪」
「圭人にとって最高の嫁であるところの私がいるんだから圭人がリア充じゃない筈がないんだよ♪」
「愛すべき私がいるんだから圭人がリア充なのは自明の理。どうして圭人が自分の事を非リア充だと思ってしまうのかまったくわからないわ」
「ヒリアの代表として見ても圭人君はリア充だよ。何て言ったって愛理の旦那様なんですから♪」
「リア充じゃないから。俺が一人を決めた時、初めてリア充だと名乗れるんだと何回言わせるんだいミチ達」
「じゃあ、名乗れるじゃない♪圭人が私を決めるのは『運命』だからね♪」
「雪が脱法系のあれを使っちゃって頭の中のお花畑でラリラリしちゃってるから変な事のたまってるのは気にしなくて良いよ。大丈夫、圭人は私を選ぶよ♪だって、それが『運命』だから♪」
「雪も雷華もあれほどマジックマッシュルームを食べた後はカフェインが入った物を飲まないように言ったのに飲んじゃったのね。カフェインに反応してフラッシュバックを起こしてるからあんな脈絡の無い事を言ってるのよ、圭人。おかしいわよね、圭人が私を選ぶのは私達が生まれた瞬間から決まっている『運命』なのにね♪」
「圭人君、その子達を一度お医者さんに診せた方がいいよ。愛理の知ってる病院なら心療内科もやってるから。ついでに産婦人科の先生も紹介するね♪今後絶対に愛理と圭人君がお世話になる『運命』にあるからね♪」
「「「「……」」」」
「こらこら、無言で凶器を突き付け合わない。そんな事してるから全員まとめてド~ン♪」
「「「「あっ!!」」」」
「さて、俺が勝ったから今日は全員語尾にニャと付けて過ごしてもらうかニャ♪」
「「「「わかったニャ♪」」」」
「いや、だからそんな約束してないでしょ!?」
「「「「もちろん、圭人(君)が負けたら……」」」」
「しまった、やらかした!!」
こうして負けられない戦いが始まるのだった……
☆★☆★☆★☆★☆
そんなこんなで時間が経ち、ただ今昼飯中。
「ところでだよ、みなさん。夏休み中の予定なんだけど、どうする?」
「「「「予定ならカレンダーに……」」」」
「そのネタはもういいから!!ちゃんと考えようよ!!」
「ニャ~ニャ~!!」
「お~ぼ~だニャ~!!」
「私の要求を飲めにゃいのかニャ~!!」
「愛理の予定に異議があるにゃら原稿用紙10枚に纏めてから来にゃさいニャ~!!」
「みんなブーもとい、ニャーたれない。そもそも休み入る前に予定を決めないから悪いんだよ。ちゃんとみんなの要望は聞くから、ね?」
「ニャ~……私、山に行きたいニャ……」
「雪は山ね。他は?」
「はい!!私運動できる所行きたいのニャ!!」
「私はフリラビの全国ツアーライブを見に行きたいニャ♪」
「運動できる所にライブっと……」
「圭人君、愛理は昔一緒に行った公園に行きたいニャ、二人きりで♪」
「公園、二人きり……と。他には?」
「私と圭人だけで買い物ニャ♪」
「圭人と二人きりで夜の散歩ニャ♪」
「圭人と二人だけで一日中部屋に籠もるニャ♪」
「圭人君、愛理のお父様とお母様に会いにカナダに行くのニャ♪きっと喜ぶニャ♪」
~30分後~
「全員の要望を元にスケジュールを纏めた結果、夏休み全部使っても要望を消化仕切れないことが判明しました……てか、みんな少しは自重しなさい!!」
「「「「えぇー!!!!」」」」
「そもそも、二人きりって言う括りのせいで予定を消化するには夏休み5回分以上必要だよ。括りがなくても夏休みの中に納めるのは到底無理。売れっ子アイドルかって言うほどの過密スケジュールだよ」
もちろん、食事睡眠トイレ等の時間無しでこの日程だ。俺は東京下町の交番に勤務している黄色い制服を着た男の親父か!!72時間も働けません!!
「今出した要望の中から1人2つまでなら選んで良いから夏休みの中に収まるようにしてよ、頼むから!!」
ニャニャニャニャ~と唸りながら悩む4人を一時放置して俺も自分の予定を考える。
まず、宿題を片付けたい。これは雪達と手分けしてやれば1日も掛からず出来る。サンパークにも何回か行くべきだろう。前行ったときは古館さんを始め従業員の人達が一斉に頭を下げて挨拶してきて驚いたが、母さんがスポンサーとして色々と便宜を図ってもらった聞いて納得したんだよなぁ……
「「「「決まったニャ~♪」」」」
どうやら決まったようだ。さてさて、今年の夏休みはどうなる事やら……
☆★☆★☆★☆★☆
夏休みの予定が決まったので、午後からは宿題を片付ける事にした。雪達は毎年夏休みになるとうちに泊まりっぱなしになるので宿題も一緒に持ってきているが愛理ちゃんは宿題を持ってきていなかったので一度家に帰って宿題を終わらせてくると言って帰って行った。
さて、愛理ちゃんが戻ってきたときに宿題が終わってないなんてならないように俺達も始めますか。
カリカリカリ、カリカリカリ……
「……」
「……」
「……」
「……」
カリカリカリ、カリカリカリ……
「……」
「……」
「……」
「……」
カリカリカリ、カリカリカリ……
「……古今東西~」
「「「……イェ~イ……ニャ」」」
「……俺の好きな物~」
「「「私ニャ!!!」」」
雪達はお互いにメンチを切り合い、舌打ちと共にシャーペンや消しゴム、分度器を無言のまま突きつけ合う。
「こらこら、口を動かしてもいいけど手も動かしなよ。こんなめんどくさい物はとっとと片付けるに限るんだから」
「「「誰のせいだと思ってるニャ!!」」」
こんな他愛ないやり取りをしつつも夕方には全ての宿題を終わらせることができた。宿題が終わって10分後、愛理ちゃんが戻ってきたので夕飯をどうするかを決めることにした。なぜなら今日は父さん達は帰ってこないからだ。
というのも母さんからのメールの「弟と妹、どっちがいい?」という文面から今日は家に帰ってこないのがありありと読み取れるからだ。毎月一回はそんなメールが来るもんだから息子にそんな報告すんな!!と声高に叫びたいところだ。冗談ならいいのだがこのメールが本気だとしたら……
ま、まぁ、その事はいい。父さんが種無しブドウなのかもなんてとってもどうでもいい事だ。
「圭人、私買い物したいから外食にしないかニャ?」
「私も買いたい物あるから外食がいいニャア♪」
「愛理もどっちかと言うと外食がいいかニャ?」
どうやら雪、雷華、愛理ちゃんは外食兼買い物がいいらしい。
「そう、じゃあいってらっしゃい。私と圭人はここに残ってお互いを貪りあってるニャ」
「おやおや、美波さん。僕は食べ物じゃないから食べられませんよ?」
「私は食べれるわよ?圭人は私を食べたくないの?」
「……じゃあ、少しだけ味見……」
「「「フニャーッッッ!!!」」」
可愛い可愛いネコ達のキャットファイトを見つつ、ちょっとイタズラをしようと俺は財布や携帯等をポケットに入れてそ~と玄関まで行く。
「……行ってきまーす!!」
「「「「こら、圭人(君)!!!!」」」」
赤く染まる街を駆け抜けながら俺は自然と顔が緩んでいくのを感じる。
今年も楽しい夏休みになりそうだ。




