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俺は夏休みの予定を決められない!!


 熱気と恐怖が渦巻く愛理ちゃんの別荘から帰宅してから数日が経った。


 いよいよ夏休みが間近に迫り、教室内に少し浮ついた空気が漂う中、深刻そうな顔をする男子が3人いた。もちろん、呪詛三人衆こと斎藤、三山、伊東の3人の事だ。


「「「才雅……彼女が、欲しいです……」」」


「いや、俺は○西先生じゃないから無理だし。てか、安○先生でも彼女を用意するのは無理だろ」


「だって、せっかく海に行ったのに出会いが全くないんだぞ!!」


「プライベートビーチだからな」


「他の海水浴場にも行くんじゃなかったのか!!」


「そういえば、行かなかったな」


「別に高望みしてるわけじゃないんだ!!普通の子でいいんだよ、才雅!!」


「普通が一番だと俺も思うぞ、伊東」


 深刻そうな顔をしているが、結局は斎藤達も浮ついた空気にやられて焦っているのかもしれないな。


「でも、なんでそんなに彼女が欲しいんだ?いなくても何も問題ないじゃないか」


「「「ふざけんな、クソリア充野郎!!!」」」


 斎藤達は鬼気迫る勢いで顔を近づけてくる。ぶっちゃけ、ムサいから顔を近付けてくるのはやめてほしい。


「お前は周りに女の子を侍らしているから俺達一人者の気持ちがわからないんだ!!」


「どうせ、女の子と一緒に手をつないで登下校したり遊びに出掛ける甘酸っぱい青春を味わいたい年頃の俺達をバカにしくさってるんだろ!!」


「あわよくば、朝チュンを経験したいと思う童貞達の願いを踏みにじるお前はやはりヒリアの敵だ!!」


「わかった!!わかったから鼻息を荒くしながら顔を近付けないでくれ!!」


 近い!!少しでも動けばキスしてしまう程の距離だよ!!


「……何をしてるのかしら、アンタ達?」


 ビキリッ、とまるで液体窒素をかけられたように動きを止める斎藤達。いや、よく見ると細かく震えているのが窺える。


 やめろ!!唇の震えが伝わってくるからやめろ!!


「女の子に相手にされないからって圭人に手を出そうだなんてとんだホモリスト達だよ」



「圭人、こいつらシメてレスリング部の部室に押し込んでくるからちょっとだけ待っててくれない?」


「「「申し訳ありませんでしたァァァァ!!!」」」


「うん、相変わらずキレのあるジャンピング土下座だな」


「キショすぎ。すこぶる機嫌が悪くなるわ」


「こんなんだから女の子に軽蔑の眼差ししか送られないんだよ」


「三山だけはモテてるんだけどね。ブスの中川に」


「そんなのは嫌だァァァ!!」


 三山は涙を流しながら辛い現実を嘆いている。確かに、最近ではブス天狗と呼ばれて気持ち悪さとウザさに磨きが掛かっている中川に好かれるのはマウンテンゴリラと無理矢理交尾させられるくらいに嫌だな。


 どうにかしてあげられないかと思案していると、愛理ちゃんがやってきた。


「どうしたの、圭人君?愛理のストーカーの一人である三山君がまるで明日、後藤芽衣さんと挙式をあげる事が決まってしまった時の北野君と同じリアクションを取っているんだけど?」


「えっ?ゴメスと結婚するとかその人、正気なの?」


「彼は後藤さんに食べられた際、不運にも明るい家族計画を携帯していなかったのよ」


「哀れだ……聞いたか、三山。お前よりも酷い境遇の人もいるんだ。そんなに悲観することはないぞ?」


「俺よりも酷い状況の人がいたとしても俺の問題の解決に全くなってない!!逆に恐ろしい末路を聞いて更に怖くなったわ!!」


「圭人君、これはどういう状態なの?」


「実はカクカクシカジカで……」


「なるほどね、わかったわ」


「いや、カクカクシカジカってマジで言ったのに通じちゃったの!?」


「大体の予想はついてるからね。大方、この浮ついた空気にやられて彼女作って一発ヤりてェェェ!!て叫んでたんでしょ?ゲスいったらありゃしないわ」


「「「叫んでないわ!!!」」」


「だけど、ほぼ合ってるね。流石、愛理ちゃんだね」


「うちのクラスもそんな感じだからね。どうして圭人君以外の男子はこんなのばっかりなんだろう?みんなゴメスに喰われればいいのに」


「「「「「……」」」」」


「おまえら、泣くなよ。クラスの男子全員が声を殺して泣いてるのは怖すぎる」


 愛理ちゃんは自分の影響力について分かってるのかな?いや、分かってるけど敢えてやってるのか。


「う~ん、何かいい方法ないかな?」


「無いわね」


「無いと思うよ」


「救い様が無いわね」


「……ようは出会いさえあればいいのよね、圭人君?」


「そうだね。好きになってくれるかは相手次第だけど」


「じゃあ、丁度いいイベントがあるわ」


 愛理ちゃんは携帯を取り出して文字を打ち込んでいく。その打鍵の早いこと早いこと。


「……出たわ、これよ」


 俺達に見せてきたページには『男女ふれあい広場』と書かれていた。


「このサイトはこの地域の男女交流サイトなんだけど、近々合コンパーティーをするとかで参加者を募ってるらしいからこれに参加してみたらどうかしら?」


「おぉ、意外にもマジメな答えが!!3人共、これに参加してみたらどうだ!!」


「よっしゃ!!やったるぜぃ!!」


「チャンス到来!!」


「激熱!!」


 斎藤達は愛理ちゃんにそのサイトのURLを送ってもらい、ハイテンションで携帯を操作している。


「ところで、何で愛理ちゃんはあのサイトの事知ってたの?」


 そう、出会いを求めてる人なら知っていてもおかしくないけど愛理ちゃんはそんなモノを求めてはいない筈だ。


「異性との出会いを求めるとか何て尻軽なぽっと出なんでしょう。圭人、こんなアバズレの事なんてシカトした方がいいわよ」


「圭人の事愛してるとか言っといて裏ではこんな事してるんだから最低だね。ぽっと出は最初からヤリマン臭いと思ってたんだよ」


「誰にでも股を開くビッチ佐藤と同じ穴の狢って事ね。穴兄弟は一体、何人いるのかしら?」


 ここぞとばかりに毒を吐く雪達に愛理ちゃんは涼しそうな顔をして答える。


「ヒリアの会合の時にそのサイトの話しが出てたのよ。『俺はこれで彼女が出来ました!!』って言って周りのヒリアの希望と嫉妬の星になっていたのを覚えてたのよ。圭人君、安心して。愛理は圭人君一筋だから♪」


「別に疑ってる訳じゃなかったけど納得したよ。じゃあ、そのパーティーにはヒリア勢揃いってことかな?斎藤達には頑張ってもらわないとね」


「「「才雅、お前も参加してくれ!!!」」」


「いや、俺出会いとかいらないし」


「俺達だけじゃ不安なんだよ!!才雅は女の子と話すの慣れてるだろ?頼む、一緒に来てくれ!!」


「伊達に彼女いない歴=年齢じゃないんだ、女の子と上手く話せるかわからないんだ!!」


「才雅がいれば漁夫の利を得られるかもだしな!!」


 確かに、雪達と長い事一緒にいるから女の子と話すのは慣れてる。付き添うだけなら問題無さそうだしいいかな?


「わかっ……」


「「「「却下」」」」


 雪達と愛理ちゃんの声が綺麗にハモる。ホント仲がいいな。


「アンタ達、圭人の部屋のカレンダーちゃんと見た?365日私との予定で埋まってたでしょ?そんな下らない合コンパーティーになんか行くヒマなんて私達にはないの」


「あぁ、あの落書きがいっぱい書かれたカレンダーだったらちゃんと捨てといたよ、雪。それと圭人のこれからの予定は全部埋まってるからアンタ達に構っている時間はないんだよ」


「予定のスペースが古代インカ文字で埋め尽くされたカレンダーなら昨日燃やしといたわよ、雷華。圭人、クソブスビッチが集まるような場所に行って楽しい事なんてある訳ないんだからカレンダーに書かれている通り、私との予定を満喫した方がよっぽど有意義だわ」


「あのトチ狂ったカレンダーなら今朝方廃棄しといたわよ?圭人君、愛理との甘~い毎日が書かれたカレンダーの通りに過ごすべきだと思うの。どんなこっちゃこちゃな奴が来るか分からないようなパーティーに参加する必要なんてないわ」


 メンチを切り合う雪達と愛理ちゃん。同じタイミングでメンチを切るんだからなんだかんだで雪達と愛理ちゃんはウマが合うと思うんだよな。


「……俺は絶対、普通の子を彼女にする」


「俺もだ。毎日カレンダーが新しい物に変わる日常は嫌すぎる……」


「しかも、予定が365日全部に書かれてるとかどんな未来日記だよ……」


「ふっ、まだまだそんなもんじゃないぜ三人とも」


「な、何がだ、才雅?」


「カレンダーだけじゃなく、俺の携帯のカレンダーすら毎日変わってるんだぜ?時々、本当にこれは俺の携帯なのかすら怪しくなるほどだぜ!!」


「「「俺は絶対に普通の子を彼女にするぞ!!」」」


 こうして、斎藤達は合コンパーティーに向けての特訓として夏休みに入るまでの期間、何を思ったかギャルゲーを攻略し始めた。正直、不安すぎる。


 ……仕方ない、影ながらサポートしてやるか。


 と、いうことで、俺の夏休み最初の予定は斎藤達の彼女作りのサポートに決定!!

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