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俺は海をナメてない!!~到着~


 サービスエリアで瞳お姉ちゃんの事を思い出し感動の再開を果たすと、瞳お姉ちゃんは今までよりも甲斐甲斐しく俺の世話をするようになった。


 もちろん、愛理ちゃんの方を優先してやっているが、それでもだ。


「えっと、瞳お姉ちゃん?」


「はい、何でしょうか圭人様?」


「普段は愛理ちゃんも言っているようにコードネームで呼んだ方がいいですか?」


「いいえ、名前で呼んで下さい。元々、コードネームはボディガードの家族や親類、友人等を人質に取られないようにする為の処置ですが、私の場合は両親はもう亡くなっていて天涯孤独ですし、友人と呼べる友人は相棒のマーキュリーくらいしかいないですからね。全く問題ありません。」


「何を堂々と言い放ってんのよ。それ、ただのボッチ宣言じゃない。格好つけて言ったって何も変わらないわよ。」


「寂しい女な訳だね。いい歳してまだ結婚もしてないんだから性格に問題があるんだろうね。」


「あのホモと友人になるくらいならまだボッチの方がマシだわ。あんな奴と一緒にいたら品性を疑われるわ。」


「こらこら、瞳お姉ちゃんに酷いことを言っちゃダメでしょ。瞳お姉ちゃんが結婚してないのにはちゃんとした理由がある筈だよ。そうだよね、瞳お姉ちゃん?」


「勿論です。私はむさ苦しくて男々した人とは結婚したくないんです。そもそも、男が嫌いです。…でも、結婚はしなくてもいいから子供は欲しいです……キャッ!圭人様の前で言っちゃった!!」


「初めてって言うと変ですけど、伊豆で会った時も同じ事言ってましたね、瞳お姉ちゃん…」


「愛理の後だったらいいわ。…特別よ、瞳お姉ちゃん♪」


「それも同じ事言ってたよ、愛理ちゃん!!」


「適当な事抜かしてんじゃないわよぽっと出!!圭人は私との初夜で一発懐妊させるつもりなんだからね!!」


「みんな酷い妄想癖を持ってるようだね。一度心療内科に足を運んだ方がいいよ。圭人、こんな頭の中がランランルーな奴らは放っといて私といちゃつきましょ♪」


「本当どうしようもない奴らばっかりね。圭人、こいつらはもう手遅れよ。最後の餞に私と圭人との子作り動画をノンカットで見せてあげましょう。」


「あの~、お客様。他のお客様に迷惑になるので…」


「あぁ、すみません!!みんな、周りの人の迷惑になってるからもう出るよ!!」


 俺は近くにいた美波の手を引いて売店を出る。


「圭人、やっぱり私と子作りしたかったのね♪今日は妊娠するまで寝かさないんだから♪♪」


「「「させるかぁー!!!」」」


「圭人様、そんな女よりお嬢様と子作りをしないといけませんよ。…私の番が詰まってるんですから…」


「誘導は出来たけど何だかマズいことになってる!?」


 その後、みんなを車の中に押し込んで落ち着かせた後、時間も時間だからと出発する事になった。






☆★☆★☆★☆★☆


 サービスエリアを出てから2時間後、俺達は愛理ちゃんの別荘に着いた。


 大きな屋敷から放たれる煌々たるライトは暗くなった辺りを明るく塗りつぶしているのを見ると、灯台よりも頼りになりそうな気がしてくる。


「こっちよ、圭人君♪」


 愛理ちゃんに手を引かれて扉の前まで行くと使用人らしき男が扉を開ける。


「「「「「「お帰りなさいませ、お嬢様。」」」」」」


 中にいる執事とメイドが左右一列に列んでお出迎えをして来た。


 ドラマやアニメでしか見たことがなかったが、金持ちというのは本当にこんな事が出来るんだなと関心してしまう今日この頃。


「メイド長、食事の準備は出来てる?」


「申し訳ありません。後続の方達に合わせましたのでもう暫く掛かります。」


「そう、じゃあ先に部屋に案内して。あっ、圭人君は私と同じ部屋でいいから。」


「言い訳ないでしょ!何を勝手に決めてるのよ!!」


「そうだよ、私達は客なんだから私と圭人を同じ部屋にしないなんてどういうつもりなのさ!!」


「ぽっと出はあのホモと一緒に寝てればいいのよ。圭人、私の部屋に一緒に泊まりましょう♪」


 いつものように雪達が愛理ちゃんに毒づくと、若い執事が怒った顔で雪達に怒鳴ってきた。


「お前達、お嬢様に向かってなんたる口の聞き方を!!」


「「「黙れ、丁稚奉公。」」」


 雪達の一言にキレた若い執事が雪達に掴み掛かろうとする。


「ふざける、ボゴォォォ!!」


 が、その前に殴り飛ばしておく。汚いて手で雪達を触ろうとするなんてあり得ん。


「…躾のなってない執事だな。おい、ここの管理任されてる奴は誰だ!!」


「私でございますが。」


 出てきたのは老齢な執事で動き一つ一つがキビキビしていて長年の研鑽が現れているように思う。


「お前の所の執事は客に失礼な発言をするだけじゃなく、暴力まで振るうように教えてるのか?」


「申し訳ございません。あの者はまだ未熟者故、我々が躾ている最中なのです。今回の事はきつく指導しますので、私めに免じて許して頂きたい。」


 そう言って深々と頭を下げる老執事。


「わかりました、あなたに免じてこの場は納めます。ですが、俺達が滞在中また同じ様な事があればあの人の命の保証はしてあげれませんので悪しからず。」


「肝に命じます。」


「ごめんなさい、圭人君。不快な思いをさせてしまったわね。」


「構わないよ。愛理ちゃんの別荘とは言っても実際は愛理ちゃんのお父さんの物何でしょ?直接愛理ちゃんが選んだ人選じゃないんだから愛理ちゃんに非はないよ。」


「ありがとう、圭人君。…何をしているの、早く部屋に案内しなさい!!これ以上、私に恥をかかせたいの!!」


「申し訳ございません、すぐにご案内いたします!!」


 別に愛理ちゃんが叱らなくてもよかったんだけど、こういうのはちゃんとしとかないと弛んでくるからね。


 結局、部屋は個人ごとの部屋を与えられた。雪達や愛理ちゃんは不満そうにしていたが我慢してもらおう。


 俺は部屋に入るとベッドに寝転んで一息ついた。


 それにしても広いなぁ、この部屋。ベッドもキングサイズだし、調度品とか怖くて触れないレベルだよ。


 そうして、ゴロゴロしているとコンコンとノックの音が聞こえた。


「失礼します。圭人様、後続の方達が到着しましたので食堂までご足労願います。」


「ありがとう、瞳お姉ちゃん。今行きます。」


 俺はベッドを降りて部屋を出る。


「ご案内しますので着いてきて下さい。」


「分かりました。…ふと思ったのですが、瞳お姉ちゃんは今愛理ちゃんのボディガード何ですよね?何でこんな使用人のようなマネを?」


「少し前にボディガードからお嬢様の補佐役に着任したので全般的な事を任されるのです。」


「でも、俺を呼ぶなんてたくさんいる執事とかメイドにやらせればいいじゃないですか。」


「私が圭人様をお呼びしたかったからです。それと、この屋敷での圭人様のお世話は私が承りました。他の者だとまた何か粗相をしてしまうかもしれませんしね。」


「そうですか。ならここでの滞在は気兼ねなく過ごせそうです。」


 瞳お姉ちゃんの後ろを着いていきながら他愛ない会話をしているといつの間にか食堂に着いた。


「圭人、遅いよ。さぁ、ここに座って♪」


「ちゃんと圭人の席を用意しといたから♪」


「ぐぬぬ~、パーは弱すぎだよ!!もう2度とパーには頼らないよ!!」


「圭人君の隣に座りたいのに…無礼講なんだからホストだからって上座に座らなくてもいいじゃない!!」


「ダメです。愛理様は風雅院を受け継ぐ身なのですから無礼講とは言え、最低限の事は守りませんと。」


 何やら席で揉めてるようだが、俺は気にせず雪と美波の間に座った。


 すると、扉が開きメイドに引き連れられて斎藤達がやってきた。


「助かった…助かったよ…」


「俺、もうお婿にいけなくなるかと…」


「あの野太い猫の泣き声がまだ頭に…」


 どうやら、凄まじい程の精神攻撃を受けたように感じられる。


「瞳お姉ちゃん、食後に精神安定剤を用意してもらえませんか?」


「わかりました、手配しておきます。」


「じゃあ、全員揃った所で乾杯といきましょう。圭人君、乾杯の音頭を取って♪」


「俺がするの!?普通、ホストがやるんじゃないの?」


「いいから、いいから♪」


「じゃあ、全員グラスは持った?よし、思いっきりこれ赤ワインだけど乾杯!!」


「「「「「「「乾杯!!」」」」」」」


 距離があるから隣の雪と美波とだけ軽くグラスを当てワインを飲む。


「甘くて美味しいね。これのノンアルコールとかってあるの、愛理ちゃん?」


「御座います。」


 愛理ちゃんに聞こうとしたら先にあの老執事に応えられた。


「そうですか。すみませんが後で持ってきてもらえませんか?えっと…」


「申し遅れました、私ウォルターと申します。コードネームなのはご了承下さい。先程は私の部下が失礼をしました。」


「いいんですよ、さっきのはあなたに免じて許したんですから畏まる必要はありませんよ。」


「ありがとうございます、才雅様。ジュースの方はすぐにお持ちします。」


「お願いします。」


「圭人はお酒飲んだって酔わないのに何でブドウジュースを用意したの?」


「せっかくカッコつけてノンアルコールて言ったのが台無しだね。酔わないからジュースでいいんだよ。無理に酒なんて飲まなくてもいつか嫌でも飲むんだから。」


「そんな物かなぁ?」


「そんなもんだ、んぐぅ!!」


 雪と話してると不意打ち気味に雷華がキスしてきた。


 しかもワインを口移して飲ませてくる。


「…んく…んく…プハァァァ!!圭人、飲んでる?飲んでるのかな?まだまだ始まったばっかりなんだからね、飲まないとダメだよ!!」


「やっぱり、雷華が一番最初に酔っちゃったか…ほら、大丈夫?」


「大丈夫も何もないよ!!圭人、私の酒が飲めないの!!」


「飲むから顔にワインのボトルを押しつけないで。」


「雷華は相変わらずお酒弱いわね。」


「まぁ、酒乱になって暴れる訳じゃないからいいさ。雷華、お肉切り分けたけど食べる?」


「食べる♪」


 雷華が開けた口に肉を入れてあげると幸せそうに肉を噛みしめている。


「美味しいね、この肉。そうは思わない、美波?」


「…」


 美波は無言でひたすらワインを飲み干していた。


「美波、大丈夫?」


「…あっ、圭人…」


 美波は俺に気づくと、無言でぴとっと腕に抱きついてきた。


「美波、どうしたの?」


「…何でもない…」


 ワインを呷りながらも、力強く組まれた腕は決して離さないぞと無言で訴えているように思えた。


「そっか。美波もお肉食べる?」


「…食べる…」


 美波の口にお肉を入れてあげると、モグモグ言わせながら食べ始めた。


「…才雅ァァァ、どうして…どうしてゴーリの美少女版のフィギュアが出ないんだ~…うぅ、アニマルモードの時のフィギュアは大量に出てるのにぃぃぃ…」


「うぅ…最近、ブスの中川が俺に変な視線を送ってくるんだよぉ…きっと体育祭の時にフラグが立っちまったんだ…」


「…涙の数だけ強くなれても、あのホモは嫌だよぉぉぉぉ…今日は鉄のパンツ履かないと寝れないよぉぉぉ…」


 どうやら斎藤達は泣き上戸らしい。


 斎藤達の相手はメイドさん達に任せるとしよう。


「あれ、愛理ちゃんはどこに?」


 愛理ちゃんが座ってた席を見てもいないので首を傾げると、後ろから誰かが抱きついてきた。


「圭人君、いらっしゃい♪愛理すっっっごく待ってたんだからね♪」


「愛理ちゃんもだいぶ酔ってるね。大丈夫?」


「大丈夫だよ♪ほら、愛理のお部屋で遊びましょう♪」


 美波から俺の腕を奪い取り無理矢理引っ張って行く愛理ちゃん。


「愛理ちゃん、そんなに強く引っ張らないで!!肩が外れちゃうよ!!」


「待ちなさい!!勝手に圭人を連れて行くなんてどういう了見よ!!」


「圭人、まだ全然飲んでないでしょ!!私の酒を飲めー!!」


「…圭人、行っちゃイヤ…」


 雪は酔ってないからいつも通りだが、雷華は俺に酒を飲むよう強要しながらもワインをラッパ飲みしているし、美波は愛理ちゃんが掴んでる俺の腕と逆の腕を取って、またくっついてくる。


「圭人君のお友達?だったら一緒に遊びましょう♪ほら、行こ♪」



 そう言うと愛理ちゃんは雪達の腕も取って歩き出す。


「だから強いって!ウォルターさん、すみませんが斎藤達が酔いつぶれたら部屋に押し込んどいて下さい!!」


「畏まりました、才雅様。」


 引っ張られていく俺を見てウォルターさんは小さく笑っていた。






☆★☆★☆★☆★☆


「あなた、お帰りなさい♪」


「ただいま、愛理ちゃん。」


 部屋に入ると早速おままごとがしたいと言う愛理ちゃんに当初、難色を示していた雪だがお酒で幼児退行しているから と言って渋々ながら了承を取った。


「どうして私が子供役…」


「ガマンして。見た目は大人でも今は子供なんだから。」


「…圭人がそういうなら…」



「ほら、雪ちゃんもパパにお帰りなさいって言いなさい。」


「くっ…お帰りなさい、パパ♪」


 軽くヤケになったのか雪は俺に抱きついてきた。


「よしよし、ただいま雪。」


「…お帰り、パパ…」


 今の状態だと何を考えているか分からないが、すんなりとおままごとに参加している美波は子供役も嫌がる事なく受け入れ雪と一緒に抱きついてくる。


「ただいま、美波。いい子にしてたかい?」


「…パパがいないから寂しかった…」


 これはいけない。今の美波の可愛らしさは犯罪級だよ。


「くっ……美波は可愛いなぁ。」


「わんわん♪」


「おぉ、うちのわんこもお出迎えか。ただいま、雷華。」


「くぅ~ん♪」


「よしよし♪」


「あなた、遊ぶのはいいですけど赤ちゃんのおしめを取り替えるのを手伝って下さい。」


「お許し下さい、お嬢様!!この歳になってあんな醜態を晒したくは…」


「赤ちゃんは元気がいいでちゅね~♪ほら、暴れるからあなたも手伝って下さい。」


「…ごめんなさい、瞳お姉ちゃん…」


「圭人様、後生ですから!!お願いしま……イヤァァァー!!!!」






☆★☆★☆★☆★☆


 一通りおままごとが終わると酒が完全に回ったのか、雷華と美波が眠っちゃったので今日は寝ることにした。


 瞳お姉ちゃんは着崩れた服を涙目で着直し、そそくさと部屋を出て行った。



 みんなが寝静まった後、そっと屋敷を抜け出して散歩することにした。


 中庭を歩いているとバラ庭園が目に入った。


 バラは暗闇の中でも分かるくらい鮮やかな赤色をしている。


 思わず見蕩れていると、後ろから人の気配がするので見てみると愛理ちゃんが いた。


「…幼児のマネは楽しかった?」


「あら、バレてたの?結構自信あったんだけどなぁ。」


「分かるよ。幼児は人の服を脱がす時に嗜虐的な笑みはしないよ。」


「でも楽しめたでしょう?」


「瞳お姉ちゃんが不憫だ…」


「瞳お姉ちゃんもあれはあれで楽しんでたでしょう?赤ん坊はパンツ脱がされても濡れないわよ?」

「…今思い返すとあの頃から瞳お姉ちゃんにはMっ気があった気がするよ…」


「確かにね。立ち話もなんだし座りましょう。」


 愛理ちゃんに連れられて歩いていると、バラに囲まれたテラスのような場所に着いた。


 そこにはテーブルと二組のイスがあって、イスに座るよう促される。


「綺麗な場所だね。」


「この別荘で一番いい場所よ。気に入った?」


「うん、気に入ったよ。後はここに紅茶とお菓子があれば完璧だね。」


「お持ちしました。」


「おぉ、びっくりした!!驚かさないで下さいよ、ウォルターさん。」


「お嬢様と楽しい一時をお過ごし頂いていたので邪魔にならないようにしていました。」


「いいじゃない、圭人君。こうして紅茶とお菓子が来たんだから完璧でしょ?」


「気遣いの出来る執事まで来たらパーフェクトと言わざるを得ないね。」


「ありがとうございます、才雅様。…お茶が入りましたのでどうぞご賞味下さい。」


「ありがとうございます。…美味しいですね。」


「ウォルターは昔から何でも出来るからね。」


「そんな人が何で別荘の管理人なんて地位に収まってるんですか?」


「旦那様のやり方に思う所がありまして当初は辞めるつもりでしたが、周りの反対が強く仕方無くここの管理をすることになりました。」


「でも、それも今日までよウォルター。あなたは私の所で働いてもらうから。」


「…旦那様にはなんと説明なさるんですか?」


「お父様達は隠居したわ。今は私が風雅院家の当主よ。だから私に従いなさい。」


 ウォルターさんは一瞬、表情が動いたがすぐにポーカーフェイスに戻し、深々と頭を下げる。


「…承知いたしました、お嬢様。」


「それと、圭人君は私の夫になるからそのつもりで接しなさい。」


「こら、また決まってないことを…」


「それはもう承知していることですのでその指示は不要です、お嬢様。」


 ウォルターさんは嬉しそうにそう応える。


 …どゆこと?


「…やっぱり知ってたのね。」


「もちろんです。だからこそ私は旦那様を見限ろうと思ったのです。」


「えっと…話しが見えないんだけど…」


「ウォルターは私が小さい頃よく面倒を見てくれたんだけど、私達が一緒に遊ぶようになった頃、外国で仕事をしてたのよ。」


「外国からでもお話しは伺っておりました。お嬢様に許婚が出来たと聞いたときどこの馬の骨がお嬢様をと思いましたが、家柄や大河からの報告を聞く限りお嬢様に相応しい人物だと思いました。許婚の話しを解消なされた時は残念でなりませんでした。」


「それは昔の事じゃないですか。今は許婚じゃあないですし、それに俺はウォルターさんが思うほど立派な人格はしていませんよ。」


「いえ、今の才雅様の方がお嬢様に相応しいです。大切な人の為に身体を張れるような者じゃなくてはお嬢様は任せられません。それに…大切な人にキバを向けた者に容赦しないやり方も好感が持てます。」


「…そこにはあまり好感を持ってはいけないのでは?」


「いいのです、大切なモノの為に自らを投げ打って事に臨む。それこそが雅集院の血なのですから。誇ってもいいんです。」


 ウォルターさんは俺の肩に手を置き俺の目をしっかりと見る。


「それに、才雅様の女性に対する考え方はとても高潔です。そんな方にこそお嬢様を任せたいのです。…私が執事を辞めなかったのもお嬢様の許婚に下賤な者がこないよう見張る為、そしてお嬢様に相応しい方が今ここにおられる。こんなに嬉しいことは御座いません。」


「…なんだか愛理ちゃんのお父さんみたいですね、ウォルターさん。」


「確かに、お父様よりもウォルターの方がお父様らしかったわね。」


「私をお父様と呼んで頂いてもよろしいですよ、お嬢様。」


「それもいいわね、ウォルター。いえ、お父様♪」


「才雅様も私の事をお義父様と呼んで頂いても結構ですよ?」


「いや、俺までウォルターさんをお義父様って呼んだら訳が分からなくなりますよ…」


「それもそうですね。」 


 ウォルターさんはさっき見せたのと同じ笑みを見せる。


 俺は苦笑するが、ウォルターさんの父性溢れる笑みを見ていると本当に父親みたいな人だとそう思った。


 そうして、温かな時間は紅茶の香りとお菓子の甘みに包まれつつ、夜と共に静かに更けていった。








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