俺はプールを堪能できない!!
6月という季節は梅雨でジメジメしていてあまりいい気分がしない季節だ。
そんな気分を払拭するにはどうするか?
クーラー?除湿器?扇風機?
「プールでしょう!!」
「才雅、ジメジメして暑いからって変なテンションになるなよ。」
「仕方ないじゃないか最近ムシムシするし、湿気を忘れるほどテンションを高めにしとかないとやってられないんだよ。」
「しっかし、ここのプールはでかいな。」
「温水プールにウォータースライダー、死海プールに流れる素麺なんてのもあるぞ。」
「流れる素麺がなんなのか気になるがまだ女性陣が来てないからな。…伊東、防水カメラは持ってきたか?」
「もちろんだ。ちょっと試し撮りな。」
「うわっ、俺を撮るなよ伊東!」
「才雅の写真もある筋に絶大な需要があるからな。しかも水着なら尚更だ。」
「おい!!卸先は誰だ!!」
相手によってはフラストレーションが溜まって直接俺に襲って来るじゃないか!!
「ヒリア内で売っているから誰かは分からんな。」
「くっ、せめて青ツナギ達みたいなタカ派な奴らじゃない事を祈るしかないか…」
「「「「圭人(君)~♪」」」」
雪達と愛理ちゃんが手を振りながら走ってきた。
「どう、似合ってるこのビキニ♪」
「私のはどう?グッとくる?」
「圭人、私の水着姿は気をつけて見ないとジョニーが大変な事になるわよ。」
「圭人君はこういうの好きかな?」
雪は赤いフリル付きのビキニ、雷華は上はタンクトップ型の水着に下を黄色のビキニ、美波は大人っぽい黒いビキニ、愛理ちゃんは白のパレオ付きのピンクのビキニを着ている。
「うん、みんなの水着はプール中にいる全ての俺の目線を奪っているね。」
「落ち着け、才雅。伏見達の水着が可愛くて舞い上がるのは分かるが、こんな所で激しくロマンスをするな。」
ハッ!!みんなの水着が良すぎてロマンスをしてしまった。
はっ、恥ずかしー!!
だが、後悔はしていないし、やめる気もない!!
「やるじゃねぇか、才雅!!俺も負けてらんねぇ!!」
「三山、お前もするのかよ!?」
三山もロマンスに参加し、ダンスのクオリティが上がっていく。
「写真は撮りまくっておくから好きなだけロマンスをしていていいぞ、才雅。」
「助かる、伊東!!みんなの写真は後で一人1000枚単位で焼き増ししてくれ!!」
「俺は業者じゃないから流石にその枚数は無理があるぞ!?」
「楽しそうだから私もやるわ♪」
「私もやる!!ろ~ま~ん~す♪」
「なんかズルい!!私もやる!!」
「えっと、圭人君の動きをマネすればいいんだよね?」
「えっ、ちょっと、何この超展開!?俺もやった方がいいかな!?」
雪達と愛理ちゃん、斎藤も加わりプールの入り口前は、さながらフリラビのライブ会場のような異様な熱気に包まれ始めている。
激しくロマンスをやる俺と三山、雪達と愛理ちゃん。それを撮る伊東。
…自分で言うのもなんだが、なんだこの集団?
☆★☆★☆★☆★☆
「…なんか大事になっちゃったね…」
ロマンサーズになっていた俺達を見て何を思ったか、他の客も一緒に踊り始め、騒ぎを聞きつけてやってきたスタッフの人が俺達を見てなぜかステージに上がってパフォーマンスをして欲しいと依頼して、謎のテンションになっていた俺達はそれを了承し、今に至る。
「いや~、君達には期待してるよ!!サンパークはまだ出来たばかりだから、なかなか客が集まらなくてね。さっきのを見る限り君達は人を惹きつけるようだからこのイベント、絶対成功するよ!!」
ここの社長らしい古館さんは俺達を見て、いたく気に入ったらしく、テンションが高いのなんの。
「それで、古館さん。俺達は何をすればいいんですか?」
「一般参加のカラオケ大会があるからそれの前座としてさっきのダンスを踊ってくれればいいよ。曲は何かリクエストあるかい?」
「才雅、ここはフリラビの『ボビー・デールとティッシュ』がいいんじゃないか!!」「いや、ここは盛り上げる為に『真夏のロビン・フッド』だろ!!」
「ここは『ベイビーローテンション』推しだろ!!」
斎藤達はコアなファンなだけあり、選曲にもこだわりを見せている……が!!
「ここは『1853年に来航~ペ・リー~』一択だろうが!!」
「「「最近の曲しか知らん俄かは黙ってろ!!」」」
睨み合う俺達。男には譲れない物がある!!
「古館さん、フリーズラビットの『会津藩だ』でお願いします♪」
「わかった、手配しとくよ。」
「雷華ァァァァ!!!」
「「「水鳥ィィィィ!!!」」」
「圭人、フリラビは余り知られてないんだから全国的にも多少知られてる『会津藩だ』じゃないとダメだよ。」
「圭人達の選んでる曲もいいんだけど本当に盛り上げるんだったら大衆向けの物にしないといけないわ。」
「愛理も『会津藩だ』なら知ってるからね。これだったら盛り上げやすいと思うよ、圭人君。」
「その理屈はわかる!!わかるんだ!!でもね…分かるだろ、この気持ち…」
「…才雅、お前も同じ気持ちなんだな…」
「さっきは俄かとか言って悪かった…」
「俺達は同じ気持ちを抱く同士だったんだな…」
「「「「ブラザー!!!!」」」」
俺達は今、確かに心で繋がっている。俺は、そう確信した。
「はいはい、暑苦しいからそこまでね。」
「圭人も早く着替えて準備してよ。もうすぐ始まるんだから。」
「着替えるって、パーカーか何か着るのか?」
「違うよ、これにだよ。」
雪が差し出したのはタンクトップとトランクスの『女性物』の水着だった。
「これ、女性物の水着じゃないか!!」
「だってフリラビは5人組だから圭人入れないと人数が足りないんだもん。」
「俺は男だぞ!!身体はデカいし声だって低いからバレるだろう!!」
「大丈夫、圭人の女装は最高だし、声は高めに歌えば圭人なら問題ないよ。それに男だってバレても逆に客ウケがいいかもしれないしね♪」
「ほら、時間無いから着替えに行くわよ、圭人♪」
「圭人君、愛理が可愛くしてあげるからね♪」
「いやー!!!!」
☆★☆★☆★☆★☆
「これより、カラオケ大会を始めます!参加費は1000円で一番高い点数を出した方には賞金として何と10万円贈呈します!!一度歌った方も列に並び直して再び参加費を払えば制限時間まで何回でも参加OKなのでどしどしリトライしてくださいね。それでは大会開始の前座としてこの方達に歌って踊ってもらいましょう、どうぞ♪」
司会のお姉さんの合図に俺達はステージに出た。
「「「「オォー!!!可愛い!!!」」」」
「誰だ!!何てアイドルだ!?」
「クソ!!携帯、ロッカーに仕舞いっぱなしだ!!」
「あの背の高い子、何かカッコいいね♪男の子だったら惚れてたよ♪」
「私…ヤバいかも…女の子が好きになるなんて…」
「イエス、GL!!」
「みなさん、落ち着いて下さい!!歌ってもらうのは、フリーズラビットで『会津藩だ』です、どうぞ!!」
曲が流れると俺達は左から美波、雪、俺、雷華、愛理ちゃんの順番に横一列に並び、踊り始める。
本当だったら顔的には愛理ちゃんがセンターの方がいいのだが、俺が一人だけデカいからセンターにしないとバランスが悪すぎると言うことで、不本意ながらセンターとなった。
「「「「「会津藩だ~鶴ヶ城だ~白虎隊だ~陸奥!!♪」」」」」
歌って踊るのは初めてだが案外出来るもんだ。
チラッと横を見ると、雪達も踊れているし、愛理ちゃんに至っては『会津藩だ』の振り付けを見たことが無く、振り付けはさっき動画サイトで見たフリラビ振り付け集を一回見ただけだ。愛理ちゃんはどんだけスペック高いんだよ!!と、思わざるをえない。
「「「フ・リ・ラ・ビ・フゥゥゥゥ!!!」」」
観客席の最前列で合いの手を入れながら踊っている斎藤達は周りの客達をダンスに巻き込みながら次々とその勢力を拡大していっている。
こういうのは一度始まると周りの人もそれが、さも普通なんだと思い込んで自分もその熱気にあてられてしまうのだ。
「「「「「会津藩だ~鶴ヶ城だ~白虎隊だ~陸奥♪」」」」」
…歌っていたら何だかテンションが上がってきたぞ…
…まずいなぁ、悪ノリしちゃいそうだよ…
「みんな、盛り上がってる!!」
「「「「「イェェェェェェ!!!!!」」」」」
やってしまった…今なら、『みんな、小豆島の果てまで抱きしめて、あの夜のように!!』て、行っても応えてくれそうな雰囲気だ…
だが、後悔はしていない!!
そうして、歌は佳境に入っていく。
そう、ギターソロ中に行うフリラビ名物スーパーロマンスタイムだ!!
「みんなで、せーの!!」
「「「「「ロ~マ~ン~ス♪」」」」」
会場中の客が俺達のロマンスコールに合わせて一斉にロマンスを始めた。もちろん、俺達もやっている。
会場にはロマンスを知らない人がたくさんいるはずだが、俺達や周りの人をマネて精一杯、ロマンスをしている。
この光景は一歩間違えたら、危険な思想を持った教団が邪神を復活させる儀式をしているようにも見えるだろう。
だが、この会場にもはや正常な意識を持っている人はいない。いるのは熱に浮かされた、狂信者のような客のみだ。
そして、曲はラストフレーズに入り、終わりを迎える。
「「「「「会津藩だ♪」」」」」
「「「「「「ワァァァァァァ!!!!!」」」」」」
熱気が冷めやらない会場、鳴り止まないアンコールを背に俺達はステージを出て行く。
こうして俺達の初ステージは成功に終わった…
あれ?俺達ここになにしに来たんだっけ?




