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~メイドメモリーズ~私達の『幸せ』の為に

 私が私自身、どのような人間か自覚したのはそんなに昔ではない。そう、『そんなに』昔ではないのだ!!


 声を大にして言いたいほど昔ではないのに、お嬢様は年齢の事について言ってくる。そもそも、女性同士であっても年齢を槍玉にあげて…ごほん!!


 気を取り直して、私がそれに気付いたのは12年前の事。メイドとして初めて奉公しに風雅院家に訪れた時だった…




☆★☆★☆★☆★☆


「大河瞳です。これから誠心誠意、仕えさせて頂きます。」


「お前が新しく来たメイドだな?しっかり頼むぞ。」


「はい、旦那様。」


 私は頭を下げる。大丈夫、習った通りできている。


 旦那様との顔合わせは特に問題無く終わり、色々聞かれると思っていたせいか少し拍子抜けした。


「では大河さん、あなたはお嬢様付きでやってもらいます。比較的、年の近いあなたの方がお嬢様も接しやすいでしょうし。」


「わかりました、メイド長。」


 お嬢様付き、か。期待されてる…訳じゃないな、これはふるいにかけられてるって方が正しい。


 早速、試されるのは癪だけどやれるだけやってみるか。


 私は気を引き締めながらメイド長に連れられお嬢様の部屋に向かった。


「お嬢様、入ります。」


「どーぞ。」


 部屋にに入ると、中はピンクとフリル、ぬいぐるみの多い女の子らしい可愛い部屋で、天蓋付きのキングサイズのベッドの上に座ている女の子は天使の落とし子と言われても納得いくほど可愛かった。


「お嬢様、こちらは本日新しく入りましたお嬢様付きのメイド、大河です。」


「本日からお嬢様付きのメイドに任命されました、大河瞳です。これからよろしくお願いいたします。」


「ではお嬢様、何かありましたら大河の方にお申し付けください。私はここで失礼させていただきます。」


 そう言ってメイド長は部屋を後にした。


「…たいがさん、おねがいがあるんですがよろしいですか?」


 お嬢様はなぜか私に敬語を使ってくる。


「何でもお申し付けください。ですが、お嬢様、私如きにそのような言葉遣いは不要です。」


「いいの?」


「もちろんです。」


「じゃあ…ひとみおねえちゃん、あいりおままごとしたい…」


「わかりました。」


 お嬢様は戸惑いと嬉しさが半分ずつの顔をしながら私に遊ぶように言った。


 メイドなのだからお嬢様のお世話はもちろん、遊び相手も出来なくてはいけない。


「あいりはママやるからひとみおねえちゃんはパパね♪」


「はい。では、いきます…ただいまー。」


「おかえりなさい、あなた。きょうはくりーむぱすたのとりゅふぞえとふかひれいりおにおんすーぷよ♪」

「今日も豪勢だね。ありがとう。」


「ありがとう、あなた♪今日はスープが…」





◇◆◇◆◇◆◇◆◇


 お嬢様付きになって2ヶ月たった。 


 お嬢様の覚えが良いためか、今もお嬢様付きを外されていない。


 知らなかった事だがお嬢様はどんな人にも礼儀正しくしないといけないと教えられていたらしく、後で知った時かなり焦ったが、お嬢様はかなり賢い子のようで2人きりにならないと砕けた態度は一切取らなかったので私は事なきを得た。


「ひとみおねえちゃん、これどうかな?」


「大変似合っておいでですよ、お嬢様。」


「じゃあ、これにする♪」


 今日はお嬢様の4歳の誕生日で、御披露目を兼ねてパーティーを開くことになっていた。


「いっぱいぷれぜんともらえるかな?」


「もちろんですとも。でも…」


 私はこの日の為に用意していた、物を取り出した。


「一番にお嬢様にお渡しするのは私です。」


「ありがとう、ひとみおねえちゃん♪開けていい?」


「もちろんですとも。お誕生日おめでとうございます、お嬢様。」


 お嬢様は嬉しそうな顔をして包みを外していく。


「わぁー、きれい~♪」


 中から出した髪飾りをお嬢様はマジマジと見ている。


「喜んで頂けてよかったです。」


「かみにつけて♪」


「畏まりました。」


 早速付けてくれるお嬢様に涙が出そうになる。


 良かった、給料2ヶ月分を注ぎ込んだ甲斐があったわ…


「どう、似合う?」


「とても似合っておりますよ、お嬢様。」


 実際、白銀の髪飾りに散りばめられたお嬢様の誕生石であるサファイアはお嬢様の黒髪によく栄えていた。


 可愛いお嬢様には何を付けても何を着ても似合ってしまう。


「あいり、これつけてぱーてぃーにでる♪」


 お嬢様はほんっっっっとうに可愛いすぎる!!私はお嬢様付きになれて心の底から感謝した。




☆★☆★☆★☆★☆


 こっ、この可愛らしい天使はっ!!!!


 私がお嬢様の部屋の掃除をしようと部屋に入るとお嬢様が男の子とおままごとをしていた。


 その男の子の何と可愛すぎることか!!!お嬢様も可愛らしくて天使の落とし子だと思っていたけど、この子は天使そのものなんじゃないかと思うほどだ。


「…お嬢様、その御方は…?」


「けいとくんだよ、ひとみおねえちゃん♪けいとくんね、ともだちだからおぎょうぎのいいことばつかわなくていいっていってくれたの♪」


「はじめまして、さいがけいとです。」


 私にぺこっと頭を下げてくるけいとと言う名の天使。


「…」



 あぁ…何て可愛いんだろう…


「おねえちゃん?」


 男なんてみんな下品で下劣で汚物の親戚だと思っていたけど、こんなに綺麗な男の子が存在がしていたんだ…


「おねえちゃん、ちかいよ…」


 この子を見ていると私の方が薄汚れていたんじゃないかと思ってしまう。…持って帰っても…いいよね?



「…ひとみおねえちゃん、どうしたの?」


「ハッ!!すみませんでした、けいと様!!失礼な真似を!!」


「ちょっとびっくりしただけだからだいじょうぶだよ、おねえちゃん。」


 よかった…でも、お嬢様がすごくジトッとした目で見てくるわ…


 こんな顔まで可愛いなんて…お嬢様は恐ろしいわ!!


「ひとみおねえちゃん、けいとくんにごあいさつしないとだめだよ!!あいりのともだちなんだから!!」


「すみませんお嬢様、失念していました。初めまして、けいと様。私はお嬢様付きのメイドの大河瞳です。先程は失礼しました。」


「はじめまして、ひとみおねえちゃん♪ねぇ、ひとみおねえちゃんもいっしょにあそぼうよ!!」


「それいいね、けいとくん♪ひとみおねえちゃんもおままごとしよ♪」


「はい、是非とも!!」


「ひとみおねえちゃんはこどもやくね。」


「はい、わかりました。」


「つづきからだね。あいりちゃん、おふろにはいってくるよ。」


「おせなかながしますわ、あなた♪」


「だめだよ、あいりちゃん。あかちゃんもいれてあげないと。」


「そうだね。あかちゃんもおふろにいれてあげないとね♪」


 あ、赤ちゃん!!子供役では!?


「あかちゃんのふくをぬがせてあげないとね。」


「あなた、あいりもてつだいます♪」


「ちょっ、待って…!!」


「こら、おとなしくしないとだめじゃないか。こんなにてがかかるんだからママもまいにちこそだてたいへんだねぇ~」


「あいりたちのあかちゃんですもの、かわいいことはあってもたいへんだなんてことはないですよ♪」


「だめっ、お嬢様、けいと様おやめ下さい!!」


「ひとみおねえちゃん、いまはこどもやくなんだからあかちゃんらしくしてなきゃだめよ!!」


「そんな!!お嬢様………アッー!!!」




◇◆◇◆◇◆◇◆◇


 おままごとを完全にナメていたわ…


 まさかあそこまでアダルティな遊びだとは思いもよらなかったわ。しかも、3歳児と4歳児にいいように手込めにされてしまったような気がするし。


 …でも、悪くなかったわね。


 けいと様もまた遊びにいらしてくれるようですし、その時はもっと過激なおままごとに…ハッ!!また良からぬ妄想を!!


 これではダメだわ、すぐに気を静めに行かないと…


 私は妄想片手に自室へと走り込んで行った。





◇◆◇◆◇◆◇◆◇


 あれから何度も圭人様とお嬢様は一緒に遊ばれ、旦那様方の意向でとうとう許婚になられた。


 素晴らしいわ!!この二人の御子ならとんでもない子がお生まれになられるはず!!


 その時は不肖ながら、私、大河瞳が圭人様とお嬢様、お二人の御子の御世話をやらさせていただきます。異論は許されません。


 あぁ、私の未来は順風満帆です…




◇◆◇◆◇◆◇◆◇


「その子が圭人君の『お友達』のお友達のようね。」


「何ですか、あなた達は!!ここは風雅院家の跡取りであられる風雅院愛理様のお部屋です、即刻退室願います!!」


「使用人の分際で私に楯突くわけ?引っ込んでなよ。」


「礼儀も禄に知らないんだからここの使用人の質も知れるわね。」


 なっ、なんなのよこの女達は!!いきなり入ってきてこの態度、失礼にも程があるわ!!


「大河、よせ。」


「旦那様!!この者達が勝手に…」


「いいんだ、大河!!…その者達は私の客だ…」


「客、ですか…?」


「あんた何てどうでもいいわ。風雅院、この子連れて行くから。…文句ないわね?」


「…ああ。」


「ちゃんと返しに来るから心配しなくても大丈夫だよ♪ただ、もう一度育て直しになるかもだけどね♪」


「よかったわね~あなたのお陰でお家はまた大きくなるわよ~」


「連れて行くってどういうことですか!!旦那様、何があったんですか!?」


「大河、その者達に逆らうな。」


「旦那様!!」


「うるさい使用人、ね!!」


「うっ……」


 お腹に重い衝撃が与えられ、うずくまってしまう。


「さぁ、行くわよ。」


「いや、いきたくない!!たすけて、ひとみおねえちゃん!!」


「お、じょう、さ…ま…」




 朦朧とした意識の中、お嬢様が救いの声を私にかけるが、そのまま私の意識は途絶えてしまった…




◇◆◇◆◇◆◇◆◇


 …何と言うことだ…


 私の、私のお嬢様が…


 許さない…許さない…あの女達、絶対に許さない!!!!!


 私のお嬢様をこんな目に合わせ、圭人様すらお嬢様と【私】から遠ざけた!!奴らは生かしてはおけない!!


 …だけど、今の私には対抗する力がない。私はなんと非力なのだろうか…


 …まだだ。私は…もう負けない!!


 次こそは絶対にお嬢様を守ってみせる!!


 そうと決めてからは早かった。


 私はメイドを辞め、風雅院家のボディガードになるための訓練を受けた。


 訓練は過酷だったが、私には確固たる信念があった。


 受けた侮辱を倍にして返し、お嬢様を守りきる。


 そして、そして…


 圭人様をお嬢様と【私】のモノにする!!


 殴られる度にあの狂った女達に殴られた時を思い出し、怒りを力に変え殴り返した。


 疲労が溜まり動けない時は、お嬢様と圭人様、お二人の御子と【私の子】との幸せな生活を想い、這い蹲りながら立ち上がった。


 そんな日々を3年続けたら、私は誰よりも強くなっていた。


 優秀な成績を修めたので、かなりの無理を言ってお嬢様専属のボディガードに着くことができた。


 その際、一緒に選ばれた白人の男がいたが、男なのに厭らしい所が無く紳士的だったのですぐ意気投合した。


 その後、正式にボディガードに選ばれるとコードネームが与えられた。


 私は『タカラヅカ』で相棒は『マーキュリー』となった。


 今度こそ守ってみせます、お嬢様!!




◇◆◇◆◇◆◇◆◇


「あなた達が新しいボディガードの方ですか?」


「っ!…はい、私はタカラヅカと申します。」


「マーキュリーデス。」


「そうですか。これからよろしくお願いしますわ。」


 私は胸が締め付けられる思いがした。


 お嬢様はもう、私をひとみおねえちゃんとは言って下さらないのですね…


 …それでも、私はお嬢様を守ります。


 私は決めたのだ。


 記憶が無くてもお嬢様はお嬢様だ。なにも変わらない。


 私がいる限りお嬢様は私が守って見せる。




◇◆◇◆◇◆◇◆◇


 お嬢様専属のボディガードになって10年たった。


 お嬢様は年を重ねる毎に美しさに磨きが掛かり、高校にあがってからはストーカーが多発したので秘密裏に処理した。


 なぜかマーキュリーがノリノリで捕まえた男共をどこかに連れて行っていたのは謎だが、私には関係の無いことだ。


 高校2年に上がるとストーカー達の執念なのか、屋敷に侵入してくる輩まで現れだした。


 マーキュリーはお嬢様に許可をもらい、トラップ部屋なる物を作っていた。


 侵入者が現れると、マーキュリーは嬉々としてそのトラップ部屋に侵入者を誘導して一網打尽にしていた。


 なぜか、いつも侵入者は泣きながらお尻を押さえ、マーキュリーは満足した顔をツヤツヤさせて部屋から出ていた。


 きっとトラップに引っかかってお尻に怪我を負ったのだろう。それを見てマーキュリーも自分の作ったトラップがちゃんと動いたことに満足しているんだろう。


 昔からマーキュリーは捕縛術が得意で、ロープを使った絶対に外せない縛り方を教わったときはとても自慢気だったのを覚えている。


 マーキュリーの話しはさておき、最近、『ヒリア』なる団体が秘密裏に動いているらしく、そいつらの一人がお嬢様のストーカーをしていると言う情報を耳にした。


 どんな者達が相手でも、私はお嬢様を守る!!





◇◆◇◆◇◆◇◆◇


「お疲れ様です、お嬢様…お嬢様、どうなさったんですか!顔色が悪いですよ!!」


 体育祭が終わる時間前に車を停めてお嬢様を待っていると、お嬢様が真っ青な顔をして歩いてきた。


「大丈夫よ…くっ!!」


「お嬢様!!車に乗って下さい、すぐに病院に向かいます!!」


 私は車を開けてお嬢様を後部座席に寝かせ、運転席に向かおうとして、お嬢様に手を掴まれた。


「待って、タカラヅカ…いえ、『ひとみおねえちゃん』。」


「!!」


 余りの衝撃に言葉が出なかった。


「…ひとみおねえちゃん、でしょ?髪型や顔立ちが少し違うけど、ちゃんとわかるよ。…いいえ、思い出したよ。」


「お嬢様…記憶が…」


「ええ、少しだけだけど、思い出したわ…」


 私は涙を止めることができなかった。


 また、お嬢様が私をひとみおねえちゃんと呼んでくれた。


 その事実だけが、ただただ嬉しかった…


「瞳お姉ちゃん。私ね、好きな人が出来たって言ってたでしょ?」


「ええ、言ってましたけどそれが何か?」


「その子ね、圭人君だったよ。」


「本当ですか!!」


 まさか、そんなことが起きるなんて…


「瞳お姉ちゃん。私ね、圭人君が大好き。昔の事を思い出してなお、その気持ちが強くなった。だから…手伝って欲しいの。」


「何でも…何でも言って下さい!私に出来ることなら何でも致します!!」


「圭人君をあの子達から奪い返したいの。だから、手伝ってほしい。」


 お嬢様の言葉に一瞬戸惑ったが、もしやあの女達が絡んでいるのでは、と思いすぐさま思い直した。


「わかりました。私はお嬢様と圭人様の為に力になります!!」


「ふふ、何を言ってるの、瞳お姉ちゃん?」


「お嬢様?」


「瞳お姉ちゃんも欲しいんでしょ?圭人君の事…」


「っ!そんな、私は…!!」


「瞳お姉ちゃんなら、いいわよ…特別よ?」


「お嬢様…ありがとうございます。」


 私は今笑っているだろう。


 目の前のお嬢様と似たような邪悪な笑みを。


 ああ、お嬢様も私と同じ気持ちだったのですね。


 この事実に私は歓喜を抑えることが出来ない。


「さぁ、先ずはお父様の利権を全部私に移すから瞳お姉ちゃん、手伝ってちょうだい。」


 さぁ、始めよう。私達の『幸せ』の為に。


「はい、お嬢様。」


 お嬢様と圭人様、二人の御子と私と【私の子】で幸せな生活をする為に…


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