俺は旅行中でも油断しない!!~4日目 その6~
「…これでいいでしょうか?」
逃げ切れなかった(逃げるつもりは無かったのに…)俺は雪達の手により奪還され、その勢いのまま売店に入り恋人定期券なるものを買わされた。
この恋人定期券と言うものには有効期限が5年と書いていてその間に結婚しなくてはいけないらしいが、雪達により、5年の部分に斜線を引かれ、3年と書き換えられた。
「待ってあげるって約束してあげたんだから、これくらい当然でしょ?」
と言うのが雪達の言い分だ。
まさか、タイムリミットを定められるとは思わなかったが待ってくれると約束してくれた手前、反故にはできない。ここが雪達の最大限できる妥協案だとしたら俺もこの提案を飲むしかなかった。
恋人定期券を買った後、プリクラを撮り(熱烈なるキスシーン入り)それを恋人定期券に貼り付けてラミネートしてもらうため店員さんに渡した。
「OKだよ、圭人♪あぁ、これで3年後には圭人は私のモノに…」
「これはもう、周りの人達は圭人が私の婚約者になったことを認めざるをえないよ♪」
「卒業と同時に結婚だなんて素敵すぎだわ♪」
雪達はキャッキャ言いながら盛り上がっている。
「ちょっと!!何で私と圭人君の恋人定期券は作らせないのよ!!」
「「「ぽっと出が調子に乗るな。」」」
「うぅ…圭人君…」
「大丈夫だよ、愛理ちゃん。ほら、愛理ちゃんの分だよ。」
「あ、ありがとう圭人君♪」
「圭人、ぽっと出を甘やかしちゃダメよ。」
「そのぽっと出は、悪いぽっと出だから圭人が気にする価値なんてないんだよ?」
「うちではぽっと出は飼えないの。捨ててきなさい。」
「意地悪しない。雪達にも買ったんだから愛理ちゃんにも買ってあげないと不公平だろ。」
「圭人君、プリクラ!!プリクラ撮ろ!!私プリクラ初めてなの♪」
愛理ちゃんは俺の手を取って嬉しそうにプリクラに行こうと急かす。
「焦らなくても、ちゃんと一緒に行くから。」
「やっぱり、圭人君は優しいね♪おっかない『動物』がいても愛理を守ってくれるもん♪」
そう言うと嬉しそうに笑う愛理ちゃん。
俺に笑いかけると愛理ちゃんは後ろを振り返った。
すると、雪達が呪い殺さんとばかりに愛理ちゃんを睨みつけている。
…愛理ちゃん、雪達を挑発しないでよ…
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プリクラを撮り終えた後、愛理ちゃんの恋人定期券にプリクラを張り付けて店員さんに渡し出来上がるまでの間、暇なのでラブアップル(アップルだけど何故かトマト)とか言う絵馬みたいな物を買って一人一枚ずつ書いた。
結婚前のカップルは黄色いトマト、結婚したカップルは赤いトマトに書かなくちゃいけないらしいのに、雪達と愛理ちゃんは赤い方に手を伸ばそうとしたので、
「それに書いたら選んであげない。」
て言ったら素直に黄色いトマトの方を取ってくれた。
…だが、雪達や愛理ちゃんの執念は凄まじく、書き終えた後、ラブアップルを飾ったときに何を書いたのか見せてもらったら、黄色いトマトが一部血で真っ赤に染められていた。曰わく、
「「「「私(愛理)の方が圭人(君)との仲は熟してる!!」」」」
とのこと。
常軌を逸し、狂気しか感じられない行動に周りの客も店員もドン引きを通り越して、物理的に距離を置いているくらいだ。
ちなみに、どんなことを書いてあったかと言うと
『早く私と圭人との既成事実を作って、最高の家族になりたい。』BY雪
『実際もう夫婦みたいなものだけど、ここで敢えてLOVEしちゃってる宣言をして圭人は私のモノってわからせるよ♪』BY雷華
『私以外の女が『何故か』不慮の事故で死んでしまって傷心している圭人が私を求めますように。』BY美波
『今度、外国にいるお父様達に圭人君を会わせてそのまま結婚式を開きます!!』BY愛理ちゃん
…なんて自分勝手な絵馬だよ…
ちなみに俺は無難に、雪達と愛理ちゃん俺が一人で写ってる写メを貼って、
『この中の一人を俺の嫁にする!!』
って書いておいた。
余談だが、俺達のラブアップルがネットにアップされ、恐怖と嫉妬と憤怒の嵐が某掲示板で巻き起こったとか起きなかったとか…
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「さて、帰りますか。」
恋人岬を余す事なく堪能したので、俺は家路に着こうと提案した。
「まだだよ、圭人。まだやり残してるのがあるよ。」
「雪、まだどこか行きたいの?」
「そ~だよ、圭人。メインイベントがまだあるでしょ?」
「全く、圭人は私の事はよく気がつくのに、こういうのはすぐ忘れるんだから…」
「私の事は気にしても美波の事なんか圭人は気にしてないわよ。勘違いも甚だしいわ。」
「雪も大概思い込みが激しいよね?圭人は一番愛している私を一番に気遣ってるに決まってるじゃん。常識だよ、じょ~しき。」
「ラリってんじゃないわよ、あんた達!!」
「雪がトチ狂った事言ってるからでしょ!!」
「キチな雪達はすぐに病院に行ってくればいいんだよ!!」
「ほんっとに騒がしいわね、あの子達は。あの子達は放っておいて…圭人君、誕生日おめでとう。」
雪達が騒ぐ中、愛理ちゃんはプレゼントを渡してきた。
…忘れてた。今日、5月5日は俺の誕生日だった。
「愛理ね、初めて圭人君に誕生日プレゼントを渡せたのがすごく嬉しい…別のプレゼントも渡すから後で私の部屋に…」
「「「行かせるかぁぁぁーーーっっ!!!!!!」」」
騒いでいた雪達が俺に飛びかかり、そのまま地面に押し倒されてた。
「はい、プレゼント。今年もいい物見つけたから喜んでくれると嬉しいな♪」
「圭人にはいつも最高の物しかプレゼントしないから、期待していいよ♪」
「私のプレゼント、喜んでくれるよね?」
雪達は嬉しそうにプレゼントを差し出してくる。
「…ありがとう、雪、雷華、美波。嬉しいよ。」
俺は笑いかけながらみんなの頭を撫でていく。
「ズルい!!愛理にもやってよ!!」
「ダメに決まってるでしょうに。」
「ぽっと出でなんだから自重しなさいよ、ほんと気が利かないぽっと出だよ。」
「圭人歴0年なんだから偉そうにしないでもらいたいわね。」
うぅーと可愛らしい唸り声をあげる雪達に軽く発作が出そうになったので、それを抑えていると俺の携帯が鳴った。
見てみると、母さんからメールで『圭人の誕生パーティーするから愛理ちゃんを連れて早く帰ってきなさい。』との事だった。
「母さんからで誕生パーティーするから早く帰ってこいって事だから帰ろうか。」
「「「異議無し♪」」」
「圭人君…愛理も行って…」
「「「無理に決まってんでしょ、ぽっと出。」」」
またもや雪達にイジメられる愛理ちゃんは縋るような目で俺を見てくるので、頭を撫でてあげながら俺は言った。
「大丈夫だよ、愛理ちゃん。来てもいいよ。母さんも愛理ちゃんを連れて帰ってこいって言ってるしね。」
「本当に!!…タカラヅカ、車を出しなさい!!今すぐ!!」
携帯を取り出した愛理ちゃんはタカラヅカさんを呼び出す。
すると電話した直後に車がすぐに来て目の前に止まった。
「早く行こ、圭人君♪」
愛理ちゃんに手を引かれ、車に乗り込む。
昔、よく見た光景が思い出さる。
今も昔も変わらない笑顔で俺を引っ張って行く愛理ちゃんを見て、俺は、思い出せて本当によかったと心からそう思った。




