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俺は旅行中でも油断しない!!~4日目 その5~

 愛理が語ってくれた話しはあまりにも衝撃的だった。


 うちの爺さん達や一族の意向で俺達を許嫁にしようとしていたこと。


 俺達は昔よく遊んでいて、お互いに好き合っていたこと。


 それを見て、父さん達も俺達を許嫁にすることを決めていたこと。


 不慮の事故からお互いに記憶を無くし、それを負い目に感じた愛理の親父さんは許嫁の関係を解消して、仕事関係以外は疎遠になったこと。


 それを不憫に思っていた母さんが、記憶を無くしたのにまた俺を好きになった愛理を見て記憶を戻すきっかけを作ってくれたこと。


「圭人君、私の記憶はまだ全部戻った訳じゃないけど、小さかった時の私は圭人君を本当に好きだった。私にお菓子を選ばせてくれる優しいとこ、大きい犬に怖がってた私の前に出て守ってくれたかっこいいとこ、動物が大好きなとこ、なんでも出来るのに絵はヘタなとこ、全部大好きだった…」 


「…」


 愛理の話しが本当だったら、俺も記憶を失っていることになる。


 確かに、俺は3歳頃の記憶が定かじゃない。4歳からの記憶はハッキリしているのに。


「小さかった時の記憶が無くなっても、私は圭人君をまた好きになった。圭人君の事を好きになったのは単なる一目惚れだと思ってたけど、きっと記憶が無くても心は圭人君を求めてたんだと思う…私にはちゃんと圭人君を好きになってしまう理由があったの。」

 


「それに、圭人君は昔の圭人君と変わってなかった。…いえ、更にかっこよくなっていた。あの学校にいれば私が圭人君を好きになってしまうのは時間の問題だったのよ。」


 気づいたら、愛理は俺に覆い被さるように抱きついていた。


「ねぇ、圭人君。私ね、愛理はね、また圭人君と一緒にいたい。あの頃のように、一緒にいるのが当たり前だったあの時のように…」


 さっきから頭痛とともに愛理と小さな子供がダブって見える。


「また、いろいろ教えてあげる。愛理の方がお姉さんだからね、帝王学から経営学までなんでも知ってるよ。」


おままごと

お菓子

すべり台

足し算


 頭痛がする度にいろんな記憶が溢れ出す。

「思い出して、昔のこと、愛理のこと…」


 あの子。親の前だとしっかりしてるけど、俺の前だと、とっても明るく、ちょっとワガママだった、あの子。


「うぅっ…」


 頭痛が止まない。


 あの子。わんこを怖がっていたけど、なれるとすごくだい好きになっていた、あのこ。


「もう大丈夫よ、圭人君。愛理がずっとそばにいてあげる。」


 頭を優しく撫でてくる、愛理。


 あのこ。かえるじかんになるとなきそうなかおをする、さみしがりやの…あいりちゃん。


「あいり…ちゃん…ぼくは…」


「圭人君…」


 愛理ちゃんは涙を浮かべながら、俺を強く抱きしめる。


「…昔は親達が決めた関係だったけど、今は違う…愛理は自分の意志で圭人君と一緒になりたい。」


 俺の唇に強く押し当てられる愛理ちゃんの唇。







 ちゅーするのはね、だいすきなあいてにしかやっちゃいけないんだって。だから、あいりはパパとママとけいとくんにしかちゅーしないの♪







「…大好きな人としかちゅーしないんだったね、愛理ちゃんは…」


「そうだよ。だけど今は圭人君にしかしないよ。愛理の大好きな人は一人だけだから…」


 愛理ちゃんはその見るもの全てを狂わさずにはいられなくするその笑顔を俺に向けてくる。


 昼間とは違い、その笑顔に俺は目を離せられない。


 その笑顔は昔、俺が初めて好きになった子が向けてくれたもの。そして、今も同じ笑顔を俺に向けてくれる。


「愛理ちゃん…」


「圭人君、愛理まだ聞いてないの。圭人君は愛理のこと、好き?」


 愛理ちゃんがそう聞いてきた時、なぜかゾクッとした。


 俺を誘う唇も、朱を帯びた頬も、見ていてドキドキする筈なのに、そのくすんで汚れた瞳が俺を捉えて離さない。


 恐ろしいと思う反面、それでも俺はその瞳を拒絶出来なかった。


 なぜなら、俺は…


「俺は………愛理ちゃんを……あ」


 バタンッ!!!


 部屋中が響き渡る程の音を鳴らしてドアが開く。


「…あんた、また性懲りもなく私の圭人に何してくれてんの?」


「私の圭人を連れ去るなんていい度胸じゃない。一度死んでみる?」


「とりあえず、跪いて許しを請いなさい。絶対許さないけどね。」


 入ってきたのは雪達だった。


 …そうだった。俺にはこの子達がいるんだ。


「いい所に入ってくるなんて無粋な子達ね。私の圭人君を奪った12年間は楽しかったかしら?」


「はぁ?何言ってるの?最初に圭人を奪おうとしたのはあんたでしょうに。あんたなんて永遠に圭人の事を忘れていればよかったのよ。」


「そうだよね、忘れてればよかったんだよ。…あんたは私の圭人に手を出した、だから相応の報いが必要だよ。」


「あんたなんかには圭人は相応しくないわ。そんな薄汚れた野良犬のような目をした女が圭人の近くにいるなんて怖気が走るわ。穢らわしいから離れなさい。」


「ふふ…あなた達、面白い事言うわね。…私は子供の時、圭人君に大好きだと言われてたわ。あなた達はどうかしら?あの頃の圭人君に好きだと言われた事がある?」


 愛理ちゃんの言葉に雪達は押し黙ってしまった。


 俺は小さい時、雪達に大好きだと言ったことがなかった。初めて言ったのは中学校に入ってからだった。



「無いわよね?だからあなた達は私を圭人君から遠ざけた。自分達の力じゃ圭人君を振り向かせられなかったから。」


 俺の頬を優しく撫でながら、愛理ちゃんは不敵に笑う。


「うるさい!!昔の事なんてどうでもいいわ。今の圭人は私を見てるの、私を愛してくれてるの!」


「私は生まれてからずっと圭人と一緒にいるの!!それはこれからも変わらない、永遠に一緒なんだよ!!」


「圭人の事を一番理解してるのは私だけ、私以上に圭人に相応しい女なんていないわ!!」


 こんなにも俺を想ってくれる優しい雪達を、俺は一瞬でも忘れてしまっていた。


「愛してるとか、ずっと一緒とか、相応しいとか、そんなの関係ないわ。私は圭人君を奪って行くって決めたの。あなた達からも、圭人君の心も身体も意志すらも全部奪って私のモノにするって…どう?素敵じゃない?」


 心が訴えてくる。


 初恋の人を、大好きだった人を忘れて他の人を好きになっていたお前は余りにも不誠実だ。今ならまだ間に合う。この子に許しを請いて、手を取るんだ、と。


「させると思ってるの?」


「させてもらうわよ。幸い、圭人君も昔の事を思い出してきてるみたいだし。優しい圭人君が私の事を思い出したのに私を蔑ろにしてあなた達を選ぶ訳がないわ。」


 その通りだ。俺は見て見ぬ振りなどできない。


 知ってしまった以上、知らなかった時には…戻れない。


「圭人、今すぐ私を選んで!!私が好きだって、愛してるって言って!!」


 雷華が俺の手を取って叫ぶ。


「圭人、私よね?私を選んでくれるよね?」


 美波は俺に切実に願ってくる。


「圭人…私嫌だよ…私を選んでくれないのは嫌!!」


 雪は俺の肩を揺さぶって悲痛な叫びをあげている。


「無駄よ、いくら圭人君があなた達の誰かを選んでも、私はその場で圭人君を奪って行くわ。でも、今のうちにハッキリさせましょうか。圭人君があなた達じゃなく、私を選ぶことを、ね…」


 愛理ちゃんは余裕そうに雪達を見下している。


 俺は…わからない…


 誰を選べばいい?誰を選ぶのが正解なんだ? 頭の痛みは更に酷くなってきて、まともに考えられない。


 わからない、頭が痛い、わからない、わからない!わからない!!わからない!!!


「「「「圭人(君)、私を選んで!!」」」」


「お、俺は…俺は……………」










 圭人、焦らず選びなさい。大切な事は特に、ね…








「あっ……………」


 …思い出した。


 昔、父さんが俺に言った言葉…


 愛理ちゃんと遊んだ事を話した時に父さんが俺の目をじっと見ながら言っていた。


 大切な事を決める時に焦って決めてしまったらすぐに後悔してしまう。どんな状況でも、どんな状態でも、どんな心境でも焦らず、後悔しない決断をしなさい。…父さんみたいにならないようにね…


 あの時の父さんの顔は、忘れていた筈なのにハッキリと思い出せる。


 あんな悲しそうな顔、後にも先にもあの時だけだった。


 …父さんも悩んだんだろうか?


 母さん達とのことを、自分で選んだ選択を…


「…圭人、どうしたの?」


「…行くぞ。」


 俺はベッドを出て歩き始める。


「待って、どこに行くの圭人君?まだ話しは終わって…」


「嫌なら着いてくるな!!俺は…選んだんだ…」


「「「「………」」」」


 唖然とする4人を無視して俺は部屋を出る。


 部屋の外に出ると、島流しにした筈のマーキュリーがボコボコにされて倒れていた。


 ついでだから、また水月に蹴りを喰らわしといた。


「くっ…圭人様…お怪我は…ございませんか?」


 お腹を押さえながら、タカラヅカさんが俺に話しかけてきた。


「大丈夫です。…タカラヅカさん、行きたい場所があるんで今すぐ送って下さい。」


「何を言っているのですか!!今は不審な3人組の女が侵入していて危険です!!うっ…私もプロですが、このザマです…」


「その3人は俺の大切な人達です。何も問題ないので早く車を出して下さい。」


「ですが!!」


「タカラヅカ、圭人君の言う通りにしなさい。」


 俺に追いついてきた愛理ちゃんがタカラヅカさんに命令をする。


「お嬢様、お怪我は!!」



「ないわよ。あなたの方が酷そうね、肋骨は折れてない?」


「幸い、骨折はありませんが…お嬢様、その者達は何者ですか?」


「この子達のことはいいの。早く車を出してきなさい。」


「…わかりました、お嬢様。」


 不承不承ながらタカラヅカさんは走って行った。


「…圭人、どこに行くの…?」


 雷華が恐る恐る尋ねてくる。


「俺が今日行こうと思っていた場所だよ。」


「そこって…どこ…?」


 美波も不安そうな顔しながら訪ねる。


 俺が今日行こうと思っていた場所。


 この旅行中に誰かが言うんじゃないかと思っていたが、誰も言わなかった場所。


「恋人岬だ。」




☆★☆★☆★☆★☆


 夕陽が照らす鐘の下、俺達は水平線を眺めている。


「まさか、圭人がこんなベタな場所に来たがってたなんて思わなかったわ…」


「そだね…ベタ過ぎてぜっっっったいにこないと決めてた場所だったからすっかり忘れてたよ…」


「圭人と素敵な思い出を作ろうと必死になって鍾乳洞を見つけたのに、圭人はこんな安直な場所に来たがってたなんて…」


 雪達は揃って肩を落とし、脱力している。


「だって、ネットで検索したらここがイチ押しって出てたんだぞ!!行くしかないじゃないか!!」


「で、圭人君。圭人君は誰を選んだのかしら?」


 4人の視線が俺に集まる。


 「ああ、俺は決めた。考えてみれば簡単な事だったんだ。難しく考えすぎて思考が纏まらない状況じゃ、何もわからない。だから心を落ち着かせて、頭を真っ白にして、ようやく…わかったんだ。俺は…」


 4人の顔が緊張で強張る。










「俺は…………まだ決めない!!!」








「「「「はぁぁぁーーーっっっっ!!!!?????」」」」


 綺麗にハモる4人。なんだかんだで仲いいじゃないか。


「何ナメたこと言ってんの!?圭人、今すぐ私を選ぶと訂正しなさい!!」


「ふざけんな!!俺だってどんだけ悩んだかわかってんのか!?俺が最低な男ならお前ら全員とヤって飽きたらポイ捨てキメてるぞ!!」


「散々悩んで決めたのがこれ!?あ~り~え~な~い~!!!!!!」


「あ~り~え~る~の~!!!!!!俺を何歳だと思ってるんだ!?焦らせすぎだ!!」


「何年待ってると思ってんのよ!!ここで私を選ぶのが筋ってもんでしょうが!!」


「そっちは一人でもこっちは三人なんだぞ!?しかも一人増えたから尚更悩むに決まってんだろうが!!」


「私には関係ないわ!!圭人君、愛理のモノになりなさい!!」


「初恋の相手だからってぽっと出が調子に乗るな!!確かに昔は愛理ちゃんのことが大好きだったけど今は雪達だっているんだ、俺が選ぶまで整理券持って列にちゃんと並びやがれ!!」


 ぜっーはっー、ぜっーはっー…


 叫びすぎて疲れたぜ…


「…頼むよ、俺を誠実でいさせてくれよ。みんなの事が好きだから、ちゃんと考えて選びたいんだ。可愛いから、綺麗だから、ヤりたいからだなんて、そんな軽い理由で選んだなんて思われたくないんだ。頼むよ…」


 俺は深く深く頭を下げた。


 情けないのも、しょうもないのも理解してる。理解してるがこればっかりは譲れない。


 俺は雪達を散々待たせたが、雪達は俺を散々悩ませたんだ。俺がまだ決めないと決めたんだからもう少し待つべきだ。


 頭を下げたままでいると、雪が口火を切った。



「…顔をあげて、圭人。て言うか頭を深く下げすぎ。折りたたみ携帯みたいになってるわよ。」


「しまった!!これは決してふざけたわけじゃ…」


「…私は待ってあげてもいいよ、圭人。」


「雪…」


「仕方ないよね。圭人はこれって決めたら頑固だから。」


「雷華…」


「わかってるわよ、圭人。圭人は軽い気持ちで悩んでた訳じゃないのは知ってるから…待ってあげるからちゃんと私を選ぶのよ?」


「美波…」


「愛理には関係ないって言ったわよ!!圭人君の意志なんて知らない!!愛理のモノになればなんだっていいの!!」


 愛理ちゃんだけは納得いってないようだ。


 そんな愛理ちゃんの姿を見て、雪達は馬鹿にしたように笑う。


「わかってないわね、この女は。」


「ほ~んとわかってないね。」


「まったくわかってないわね。圭人歴0年じゃ、仕方ないか。」


「何がよ!」


「圭人の心をいらないだなんて言えるんだから圭人の事をまるでわかってないのよ。」


「圭人の心を掴むことこそ、圭人に選ばれる最短ルートってのがわかってないね。」




「それに、私達から奪えたとしても…まぁ、奪えないけど、仮に奪えたとしても、圭人の意志が無いのに愛されてると感じられるの?あんたは圭人のどこを好きになったの?」


 雪達の言葉に愛理ちゃんはたじろぎながらも答える。


「あっ、愛理は………優しくて、かっこよくて、なんでも出来る圭人君が好き…だった…でも…」


 愛理ちゃんは道に迷った子供のように不安な顔をしている。


「…でも、それ以上に対等に接してくれたのが一番嬉しかった…いつでもどこでも行儀よくしてなきゃいけなかったけど、圭人君は愛理に普通に接していいって言ってくれた…家にいても一人ぼっちだった愛理の、初めての友達…大切な人…」


 言葉を紡ぐとともに、狂気に満ちた瞳が揺らぐ。


「だから、ずっと一緒にいて欲しかった…一人で寂しい時間は圭人君のお陰で少なくなって、代わりに圭人君と会うのを楽しみにする時間が増えた…圭人君と一緒にいればおっきな犬だって怖かったけど好きになれた…愛理でも誰かの為に何かできるって、そう思えた…」


 そう言って、愛理ちゃんは黙ってしまった。


「…愛理ちゃん。俺、全部思い出した訳じゃないけど、思い出したよ。初めて会った時のこと、一緒に遊んだこと、足し算を教えてもらったこと…俺にとってどれも掛け替えの無い、とても大切な思い出だったよ。愛理ちゃんと過ごした日々は短かったけど、俺は愛理ちゃんが大好きだった。笑顔がとても可愛いかった愛理ちゃん、少しお姉さん振る愛理ちゃん、帰る時泣きそうになって、遊びに行くとすごく嬉しそうに迎えてくれた愛理ちゃん…俺にいろんな表情を見せてくれた愛理ちゃんの事を、俺は忘れてしまってた。例え、どんな『理由』があったとしてもその事実は変えられない。こんな俺を許してくれとは言えないけど…もし、許してくれるなら…また俺と一緒にいてほしい。」


「え?」


「「「圭人!?」」」


 愛理ちゃんが驚いた顔している傍ら、雪達は驚き、慌てふためいている。


「俺はまだ決めないって言ったよ。…言ったけど、それでも愛理ちゃんとまた一緒にいたいんだ。もちろん、そこには雪達もいるけどね。」


「…呆れた。まだ決めないって言っておきながら一緒にいたいだなんて…なんてワガママなんでしょうね、圭人君は…」


「ムシのいい話しだとは重々承知してるよ。…してるけど、それでも一緒にいてほしいんだ。…ダメ、かな?」


 愛理ちゃんを見ると呆れたような顔をしていたが、やがて諦めたように言った。


「…いいわ、一緒にいてあげる。…愛理はお姉さんだからね、折れてあげる。それに…」


 愛理ちゃんは俺に抱きついて耳元で囁くように言った。


「それに…愛理は手の掛かる子が好きなの。こんなに大きくなっても昔と変わらず甘えん坊なんだから…ほんと、手が掛かるわね、愛理の圭人君は…」


「ありがとう、愛理ちゃん…」


 俺も愛理ちゃんを抱きしめる。


「…もう帰っちゃイヤだよ、圭人君…」


 そう言いながら、愛理ちゃんは俺の手を取って近くにあった鐘の紐を握らせる。


「お先に失礼♪」


 愛理ちゃんは悪戯っぽい笑顔を雪達に見せ、グッと紐を引っ張る。




 カラ~ン、カラ~ン、カラ~ン


「「「やられたっ!!」」」


 雪達は悔しそうな顔を愛理ちゃんにしていた。何でだろう?


「これはね、ラブコールベルって言って、この鐘を3回鳴らすと恋愛が成就するって言われてるのよ。…何で圭人君が知らないのよ?」


「いや、場所だけしか調べてなかったんだよ。先に知ったら面白くないし。…そんな、俺を非難する目で見ないでよ!!」


 そう言いながら俺は後ずさる。


「…まぁ、いいわ。圭人君、それ引っ張って♪」


「これ?」


 近くにあった紐を軽く引っ張る。さりげなく、愛理ちゃんも紐を掴んで引っ張っていた。


カラ~ン、カラ~ン、カラ~ン


「「「またしてもやられたっ!?」」」


 …まさかこの鐘も?


「圭人君、今すぐグアムに行くわよ♪」


「「「させるかぁぁぁぁ!!!!!」」」


 雪達は一斉に俺に抱きついて無理やり4人で鐘を鳴らされた。


 ガシャンガシャンガシャン!!!



「あぁ!!ダメだよ、こんなに荒く鐘をならすもんじゃないよ!?」


「次はこっちよ!!」


「すぐに鳴らして私との恋愛成就を祈願しないと!!」


「この鐘を鳴らすのは私と圭人よ!!」


 ガジャガシャガシャガシャ!!!!!!


「落ちる!!鐘が落ちちゃうって!!」


「いいじゃない、圭人との恋愛成就が成されて落ちるならこの鐘も本望よ。」


「圭人と私の恋愛成就に一役買えるならこんなにも名誉なことはないよ。」


「愛で空が落ちてくることだってあるんだから、この鐘だって私達の愛で落ちて当然なのよ。」


 むちゃくちゃな理論を持ち出す雪達はとにかく必死そうだ。


「品位の欠片もないわね、あなた達は…愛理と圭人の思い出の場所を壊さないでよね。」


「調子に乗り過ぎよ、ぽっと出。私達より圭人と一緒にいる時間が短いんだからさっさと後ろに下がっときなさい。」


「正確には隣の県まで下がっておけばいいからね。ほら、さっさと行ってきな、ぽっと出。」


「圭人とイチャイチャした後に時間があったら『ぽっと出バッジ』をあげるからあっち行ってなさい、ぽっと出。ちなみに、イチャイチャする時間に終わりは無いからあしからず。」


「相変わらず間違い、勘違い、キチガイな子達ね。こんな子達が近くにいたら圭人君の教育に悪いわ、すぐに処分しなくちゃ。」


 睨み合いを続ける雪達と愛理ちゃん。


 …逃げちゃダメかな!?逃げちゃダメかな!?大事な事だけど2回だけじゃダメなような気がしてならないよ、ミ○トさん!!!


「みんな、落ちつい、ン゛ン゛ン゛!!」


 睨み合ってたと思ったら、美波が急にキスしてきた。


「美波、抜け駆けしたわね!!」


「これで私と圭人の恋愛は成就するわ♪残念だったわね、雪♪」


「圭人、今のは野良狐がじゃれてただけだから気にしないくていいよ…んっ…」


「雷華!!ドサクサに紛れて!!」


「あなた達、愛理の圭人君から離れなさい!!マーキュリー、やりなさい!!」


「オマカ…ロッキュー!!!!」


「気持ちの悪い生き物が圭人に近づくな!!」


「あんた、さっきボコボコにしたのにまた来たの?ドMなの?死ぬの?死にたいのね?死なせてあげるわ!!」


「ここでヤっちゃったら変な伝説ができそうだけど、それも観光客を呼ぶにはちょうどいいかもね♪」


「圭人君、行きましょう。ここの売店で恋人宣言証明書って言うのが売ってるから早速買いましょ♪」


「「「ゴラ゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛!!!!!!!」」」


 バーサク状態な雪達が後ろから迫る中、愛理ちゃんに引っ張られるまま走る俺はどうしようもなくビビっているけど、ほんの少し、ほんの少しだけ、この状況を楽しんでいた。





「「「ゲェィドォォォォォ!!!!!」」」






 ウェ○カーかよ!!!


 やっぱ、この状況を楽しむのは無理です!!




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