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俺は旅行中でも油断しない!!~3日目 その2~


「圭人、カモメにエサあげようよ♪」


「ウミネコだよ……ありゃ、カモメじゃあねーぜ。ウミネコだ。どうやって見分けるか?ニャアニャア鳴くのは、ウミネコだ。」


「いや、ニャアニャア鳴いてないし。」


「ごめん、ごめん。つい言ってみたかったんだよ。」


「そんなことはいいから早くエサをあげるよ、ヌケサク。」


「誰がヌケサクだ!!」


「ごめん、ごめん。つい言ってみたかったのよ。」


「とりあえず、アホなやり取りはここで切るとして、早くカモメのエサを買いに行こう。」



「圭人から始めたのに私が発端でアホなこと始めたように言われるのは頂けないわね…圭人はそんなにこの遊覧船をタイタニック号にしたいのかしら?」


「ごめんなさい、許してください!!」


 美波はヤル時は本当にヤってしまう子なので、すかさずジャンピングDO☆GE☆ZAで何とか場を納めようとする。


「ダメよ、今すぐキスしなさい。」


「それはちょっと…」


「えっと、ハンマーはどこにあるかな?」


「わかったよ、わかったからせめて目立たない場所でやらせてよ!!」


「あら、大胆。船の上でヤルなんて圭人ってアウトドア派?」


「そう言う意味じゃないよ!!」


「もうっ、じっれたいわ!!」


 そう言うと美波は俺の頭を引っ張って無理矢理にキスをした。もちろん、周りの人はあまりにもディープなキスにディープなインパクトを受けているようだった。そして、俺の気分はディープブルーだ。


「美波、下に降りよう。ここには流石にいられないよ。」


「え~もっと~♪」


 顔を赤らめながらクネクネしだす美波を引っ張りながら階段を降りて船の中に入る。


 船の中はちょっとした売店があり、飲み物や食べ物は地上よりも割高で売っている。近くに競争相手がいないと割高になるのは富士山や山の上の旅館などの売店や自動販売機と一緒なんだと思う。ペットボトルの水が500円とかどんなインフレだと思わずにはいられないね。


 ちなみに俺達は飲み物も食べ物もコンビニで買って持ち込んでいるので関係ない。


「とりあえず、あの端の椅子に座ろう。ちょっと疲れた…」


「いいよ♪」


 椅子に座ると美波は甲斐甲斐しく俺に世話を焼いてくれる。


「はい、圭人。ポッキーあげる♪」


「くれるのはありがたいんだけど、何でそのポッキーをくわえてるの?」


「圭人と一緒に食べるからに決まってるでしょ、当たり前じゃん♪」


「いや、一本のポッキーを端から食べ合うのはどうかと…」


「ハンマーコネ…」


「食べさせて下さい、お願いします!!」


 喰らった奴が光になってしまうようなハンマーを使うときに叫ぶセリフを言いながら平然とハンマーを掴まれたらタイタニックの前に俺が地獄か天国に召されてしまうわ!!


「はい、圭人♪」


 俺は美波がくわえるポッキーの反対側をポリポリと食べ始めると美波もサクサクサクッと食べて行く。美波の食べるペースが早すぎるのですぐにポッキーは短くなって仕舞いにはまたキスしてしまった。


「んぐっ、美波、ストップ!!」


「んはぁ~、何、圭人?」


「何じゃなくてあまり人前でこういうことするのは良くないっていつも言ってるでしょ!!そもそも美波は…」


 俺が熱く語る中、美波はペットボトルを開けてお茶を飲み始める。


「美波、聞いてる?これは美波の為に、ん゛ん゛っ、!!」


 またもや美波は俺にキスをしてくる。しかも今回は口移しでお茶を注いでくる。


「んぐ、んぐ、んぐ…っっぱぁあーっ!!美波、いきなり何するんだよ!!」


「ポッキー食べたら喉渇いただろうから圭人に飲ませようと思ったんですけど、何か?」


「その気遣いは嬉しいんだが場所が悪いよ。せめて2人きりの時にしてよ。」


「今は2人きりだよ?」


「そうじゃなくて、こういうのは2人きりの場所にいる時ならいくらでもするから人前では抑えてよ。」


「…それじゃダメだよ。」


「美波?」


「だって2人きりの場所になったら雪や雷華ともするんでしょ?それじゃ、嫌。私はどんな時でも、どんな場所でも圭人を感じていたいの。圭人は一人を決めるって言うけど私はもう決まってるの。圭人がいればいいの、圭人じゃなきゃ嫌なの!圭人には私がいればいいの!!」


 俺を真っ直ぐ見る美波の目は涙を溜めて今にも零れ落ちそうだが、それでも俺から目を離さない。


「…圭人。私はね、私はね、圭人を独り占めしたいの。きっとこの気持ちは雪も雷華も一緒。圭人に自分だけを見てほしいと思ってる。でもね、私は、私だけは圭人の特別で、圭人の一番で、誰よりも愛してくれている。…私はそうなりたいの。」


 美波は自分の気持ちを次々と表していく。


「圭人は私を愛してくれてるのはわかるよ。ずっと一緒にいるんだもん、わからないわけないよ。でもね、私は3等分の愛情じゃ足りないの…」


 美波は俺に抱きつき、俺の胸に顔をうずめながら語る。


「お願い、圭人。私を全力で愛して。圭人の心を全部受け止めるから、私の心も全部受け止めてよぉ…」


 声を押し殺して泣く美波の涙が俺の胸が濡らしていく。


 …こんな俺なんかに涙を流すほどの気持ちを打ち明けてくれたんだ、俺も誠意を見せなくてはならない。


 俺は美波の頭を撫でながら美波の気持ちに応えるべく言葉を紡ぐ。


「美波、俺はね、小さい頃3人とも俺のお嫁さんにしようと思ってたんだ。…でもね、大きくなるにつれて色々わかってくるとウチがどうしようもなく普通とは違うことに気付いてきて、気付いてしまったら思わずにはいられなかったんだ…何で父さんは一人を選ばなかったのか、妻である母さんに対してあまりにも不誠実なんじゃないのかってね…」


 顔を上げた美波は何か言おうとしていたが構わず続けた。


「わかってるんだ。母さん達はそれでも幸せなのは。でも、俺はどうしても納得出来ない。どんなに平等に愛すると言っても絶対に偏りがでてくる。複数の人を平等に愛するなんて無理だ。相手がそれで良くても俺は嫌だ。だって一人一人が全力で愛してくれるのに俺が返せるのは3分の1だなんて不誠実にも程がある。だから決めた、一人を決めるって。」


「…圭人、お父さんと一度ちゃんと話し合って。お父さんは不誠実な人じゃない、圭人が尊敬できる人だよ。」


「…それも追々父さんと話してみるよ。今は美波や雪、雷華の事だ。3人とも大切で特別な存在だから下手な事は言えない、言いたくない。…嫌われたとしてもね。」


「…じゃあ、もし圭人が私を選んだとき、私が圭人を嫌いになってたら?」


「その時は全力で惚れ直してもらうさ。ずっと待たせたんだ、はいって言われるまでアピールする。どれだけ大好きなのか、愛しているのかわかってもらうまでね。」


 そう言うと、美波は涙を流しなが悪戯っぽく笑う。


「だったら圭人のこと嫌いになろっかな、私にベタベタな圭人を見てみたいし♪」


 そんな美波を見て、俺も美波をからかう。


「それ、今したら雪か雷華の所に行っちゃうかもよ?」


「それはダメ!!」


「でも、俺のこと嫌いになるんでしょ?」


「ダメ!!大好きだから、愛してるから行っちゃダメ!!」


 抱きつく力を強めながら美波はイヤイヤと頭を振る。


「…やっぱり可愛いな、美波は。」


 そう言いながら頭を撫でてあげると、美波は頬を膨らませて拗ねた顔をする。


「…いじわる。」


「ごめん、ごめん。」


「…悪いと思ってるなら、キスして。」


 俺は苦笑いをしながらも美波と口付けを交わす。


 美波は3人の中で一番積極的だけど、一番女の子らしい、俺は再度実感した。


「…今すぐ私を選んでくれなくてもいい、せめて今だけは、私と2人きりの時だけは私だけの圭人でいて…」


「…わかったよ、美波。」


 俺達は口付けを交わす。


 今の美波には俺しか見えていないだろう。だって、俺も美波しか見えていないのだから。


 今、俺達の世界には俺達しかいない。


 きっと、雪や雷華でさえも入りこめないだろう。


 だから、後ろの方で聞こえる、


「ねぇ、あれってドラマの撮影か何かかな?」「あんなに自分の気持ちをぶつけ合えるのって素敵ね…」

「妬ましや、妬ましや…」

「確かここに『リア充を殺ちゅ☆100の方法』が載った本があったはずだが…」

「何で、何で私にこんなの見せつけるのよー!!私みたいなブスはひたすら走ってりゃいいってことなのー!!」

「中川さんが海に飛び込んじゃったわ!!」

「中川さん、泳ぐのも速っ!!」

「でも、泳いでる時の顔は壊滅的に酷いわね!!」


 などと言う言葉もきっと気のせい何だと思う。


「ぼがぁ、ぶがっ、おぶっ、あ゛じがぁぁぁ~、がぶあ゛あ゛あ゛!!」


「「「中川さーーーんっ!!」」」




 …気のせい何だからね!!


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