俺は傾いてなんかない!!
さて、学校に着いた俺達は自分達がどのクラスか探すべく、張り出されたクラス分けの紙と睨めっこ中。
あった。俺はD組のようだな。
隣でC組のところを探してる雷華に見つかったことを言う。
「俺、D組だったよ。」
「じゃあ私もD組だね。」
何故そうなる?
確かに中学まで俺達三人は一緒のクラスだった。クラス替えがあってもいつも同じクラスになってるのは何か作為的なものを感じてしまうが偶然だと思うことにしていた。
だが、義務教育を終えた今、そんな偶然は起きないだろう。新入生のクラス分けなんてきっとバランスを考えて成績が平均になるように組まれていることだろう。
「そんな馬鹿なことを言ってないでちゃんと探しなよ。」
「あった。やっぱりD組だったよ。」
「何!?」
D組の女子のところを見る。
あった。しかも雪も美波もいる。
偶然とは何回も同じことが起きること指す言葉ではない。
同じことが起こる。それ即ち、必然。
「また圭人と同じクラスだね♪」
「俺は作為的なものを感じてならないよ…」
「何言ってるの?圭人が私と同じクラスになるのは必然、自然の理、既定のルールなんだよ。」
「そこまで素晴らしい笑顔で断定されたらそうなのかもと思ってしまうよ…」
「私と圭人はこれからもずっと一緒。これも永遠に変わらない既定事項。アカシックレコードに刻まれた『運命』なんだよ。」
「それは流石にないだろ。」
苦笑しつつも『運命』と言う言葉につい反応してしまう。
この子達がよく俺に言うセリフ
昔から言われ続けた言葉
そして「あの人達」もよく使う言葉。
きっと何度も使うことで現実になると信じてるんだろう。
この子達は昔から真剣だからな。
だからいつものように俺は言う。
「『運命』なんて決まってないよ。」
「私達のは決まってるんだよ。」
いつも通り、いつも通りのやり取りをする。
何年もやり続けられ、既にテンプレになったやり取り。
「このやり取りこそ、必然であり、自然の理であり、既定のルールだと俺は思うよ。」
そう言うと雷華は頬を少し膨らませ、不満そうな顔でボソボソと言う。
「このやり取り嫌い。圭人がそうだねって言えばそれでいいのに…」
いつも通り聞かなかったことにして、俺は雪と美波にも名前があったことを伝えた。
☆★☆★☆★☆★☆
自分達の教室に入ると結構席に座ってる人が多い。
とりあえず自分の名前が張ってある席にカバンを置きつつ椅子に座る。
雪達はカバンだけ置いてすぐ俺のところにきた。
「ねぇねぇ、圭人。今日は午前中で学校終わりだからそのまま遊びに行かない?」
そう言ってきたのは美波だ。昔から知らない所が大好きな美波はこの辺を探索したいんだろう。
「いいよ。この辺ならだいたい何でも揃ってるからね。」
「私も行く。」「私も連れてって。」
すかさず雪と雷華も言う。
「じゃあ一緒に行こうか。」
雪と雷華が嬉しそうに笑っている中、美波は笑顔のままで誰にも聞こえないよう小さく「チッ」と舌打ちしていたのを俺は聞いたが聞こえなかったことにする。
雑談をしつつ時間を潰す。時間になると教師が教室に入ってきてD組の人達を体育館まで引率する。
入学式は基本ヒマだ。やることもなく、ただ時間が来るのを待つしかない。
ケータイ見てたら絶対没収されるし、寝てたら後で何言われるかわからないからただ意識を遠くに飛ばすことしか出来ることがない。
昔、一人しりとりをして虚しい思いをしてからこういう時は意識を飛ばすことにしている。これが意外と時間を潰すのにはちょうどいい。気づいたら終わり間近になってるし。
そうこうしている内に入学式は終わり間近になった。やはり圭人式意識解放術は役に立つ。
教室に戻り、さっき引率してくれた先生が自己紹介していた。担任の先生だったのか。
名前は田中と言うらしい。趣味はゴルフ。
確かに田中先生はプロゴルファー○に似ているから頷ける。でもどちらかというとド○チンに似てるかな?
そんな担任の自己紹介が終わり、次は俺達の自己紹介になった。
田中先生は黒板に名前、趣味、好きなもの、と書いて最低でもこれを言っていくようにと言った。
無難な選択をしていればいいかと思いつつ、クラスメイトの自己紹介を聞いた。
相生君、ラグビー部みたいな体つきなのに趣味は家庭菜園で部活は裁縫部に入りたいってどういうことだ。君はどう考えても運動系の部活に入るべきだろ。
逆に大阪君、君はそんなマッチ棒みたいな体でどうしてプロレス同好会に入りたいんだ?
確かに趣味はプロレスの観戦で好きな物は武○敬司と言っていたがそれは自殺行為だ。俺が言えることは保険の口数を上げることしかないな。
○田壽賀子研究会に入るだと!?葛西さん、正気か!!と言うかあったのか橋○壽賀子研究会!!世界はかなり広いと言うことを実感した今日この頃。
個性的?なクラスメイトの中、俺の番になった。俺は普通だから普通に行くさ。
「才雅圭人です。趣味はパズル、好きな物は…」
と言いかけた所で視線に気づきそちらを見る。
雪、雷華、美波。何故俺をそんな熱い眼差しで見る。そんなキラキラした眼差しを読み取り、翻訳すると、
「好きなものってもちろん私よね?」
となった。
苦笑と共に冷や汗が出る。
たぶん、言わなかったらすごい不機嫌になると思う。何日か目も合わせなくするほど。
だが一人だけ言えば他の二人が殺意を込めた目で見てくるだろう。てか殺されるじゃね?
3人とも言えば不機嫌ながらも不承不承で納得するかも知れないが、今この場でそんなことを言えば新学期そうそうクラスメイトから奇異な目を向けられるのは避けられない。てか悪目立ちしたくない。
クソっ、ドテチ○め、いらんことしやがって!!
心の中で毒づき、三人を見ながら固まった俺を見て○テチンは「どうした?」と言ってくる。
ド○チンをぶっ殺したい衝動に駆られるが我慢して一か八かで答えた。
「…好きな物は………秘密です、以上!!」
と言って、速攻で座り次の人にバトンタッチ。
次の人を立たせたのでドテチ○も何か言おうとしたのを抑えていた。
とりあえずこれでなんとかなった。三人ともキョトンとしていたがとりあえず殺意を込めた目や不機嫌そうな感じはない。
一息ついて自己紹介を聞きつつ、ウーパールーパーが好きとか、この壺を買えば幸せになりますと宗教系な商売をし始める奴やシ○ラーのごとくテンションがイっちゃってるやつなど、現代でこんなに傾いちゃって大丈夫なのかと心配していると雪の番になった。
「伏見雪です。趣味は料理と裁縫。好きな物は…秘密です。」
雪は間をおいて俺をジッと見てから笑顔で言った。
みんなの視線が俺に集まってている。
次のやつもチラチラこっちを見ながら自己紹介している。
雪のやつ、やってくれる…
かなり居たたまれない気持ちになったぜ…
順番がまわり、雷華の番になった。
「水鳥雷華です。趣味は音楽鑑賞。好きなものは…秘密です。」
雷華は間をおいて俺をジッと見てから笑顔で言った。
みんなの目線が少し非難するものになったような気がする。
…雷華お前もぶちかましてくれるな…
俺の印象が少しずつ悪くなっていってるような気がしてならない。
まわりまわって最後は美波の番になった。
嫌な予感が拭えない…
「唯前美波です。趣味は旅行です。好きなものは…秘密です。」
美波は間をおいて俺をジッと見てから笑顔で言った。
視線が半端じゃないことになっている。
憎しみで人が殺せるのなら俺の命は無かっただろう。
…美波、止めはいつもお前だよな…
もうダメだ、早くなんとかしないと…
手遅れなのは分かっているが、そう思わずにはいられない。
俺は普通でも周りの人にはきっと俺がこの教室内で一番個性的(傾奇者)に見えてるんだろうな…