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俺は体育祭を楽しめない!!~父兄借り物競争、応援合戦~


 小さな子供達にトラウマが残りそうな鬼ごっこと言う名の死刑執行は数分で終わり、何人か看板と一緒に全裸で吊されているシュールな状態のまま昼休みはゆったりと流れていく。


 かなりいい笑顔をしながら帰ってきた母さん達と雪達はまた定位置に戻ってお弁当を食べさせようとした時、風雅院さんがなぜか現れた。


「なんかグラウンドで一騎当千な無双武将達が千人切りをしていたような光景を見たんだけど圭人君、また君の仕業なの?」


「断じて違います。俺はいつだって劉備様について行く避難民の如き男ですから。」


「あら、圭人。その綺麗な子はどなた?」


「生徒会長の風雅院愛理さん。二年生の先輩だよ。」



「初めまして、風雅院愛理です。圭人君には『色々』とお世話になってます。」


 風雅院さん、そんな何か含んだ言い方する必要ないでしょ?


 あ~、雪達がまた血濡れのあれこれを出そうとするし。


「おぉ、風雅院さんの娘さんか。大きくなったね。」


「お父様をご存知何ですか?」


「風雅院家と才雅家はもともと親戚同士なんだよ。かなり遠い親戚だけどちゃんと家系図にも載ってるよ。何より名字に『雅』の字が入っているのがその証拠。」


「へぇ~、知らなかったなぁ。まさか風雅院さんと親戚とは思わなかったよ。」


「私も初めて知ったわ。」

「そこまで親戚関係が深い訳じゃなかったからね。どちらかというとビジネスパートナーって感じかな?昔一度だけ誕生パーティに参加したとき圭人も会ってるはずだぞ?」


「そうなの?覚えてないなぁ…」


「圭人はまだ3歳だったからな。仕方ないよ。」


「なるほど…と言うことは圭人君は私と幼なじみと言うことに…」


「ならないわよ。何抜かそうとしてるのこの妄想超特急は。」


「一回しか行ってない誕生パーティでどうして幼なじみってなるのか理解に苦しむわ。」


「第一、圭人のこと覚えてなかったんだから幼なじみなんて言えるわけないじゃない。愉快な妄想したかったら腕に包帯巻いて「静まれ、静まれ…」て言ってればいいのよ。」


「…この子達の前だと自分が年上なのかわからなくなるわね…」


「風雅院さんが余計なこと言わなければ雪達はちゃんと敬語使いますよ。」


「私と圭人君がお互い好き合ってることは周知の事実じゃない。余計なことじゃないわ。」


「そんな事実はありません。ありもしない事実を捏造しないでください。あなたはどこかの遺跡発掘の大学教授ですか?」


「圭人、あなたどうあれこの子はあなたのことが好きみたいなんだからそんなに邪険にするものじゃないわ。」


「母さん、知ってると思うけど俺は雪達のことが好きなんだよ。借り物競走の時俺が何を持って行ったか見てたでしょ?」


「あれは格好良かったわよ、圭人君。雅人がいなかったら惚れてたわ。」


「確かに堂々と愛する人連れて行くことが出来るのは男らしいよね。」


「私もあんな風に連れて行ってほしいわね。」


「だからね、俺は雪達以外は見ないし、見る気もない。風雅院さんには悪いとは思わないよ。今の俺の道は3つにしか分かれてないんだから。」


「それはわからないわよ。私が圭人君の心を手に入れられないなんてことは絶対無いんだから。圭人君ね絶対は私の絶対で覆してみせるわ!!」


「圭人、お母さんこの子気に入ったわ。愛理さん、だったわね?」


「は、はい!!何でしょう、お母様!!」


「私とアドレス交換しましょう。何でも相談に乗るから。それと暇ならうちに遊びにいらっしゃい。」


「母さん、何を言って…」


「圭は愛理ちゃんにつくんだ。ま、そうなるわよね。」


「圭はいつも美味しいとこ持って行っちゃうから困るのよね。だけど、今回は雷華が勝つわよ?」


「うちの美波が負けるわけないじゃない。美波は私と似てるから必ず一番になるわよ。」


 なにやら母さん達の間で火花が散っちゃってるですけど。


 てか俺の話し聞いてないね。


「圭人、あんな女のことなんて気にする必要なんてないわよ。圭人には私がいるんだから。」


「圭人はいつものように私だけを見てればいいんだよ。」


「圭人はもう私を選んでるんだから後は私とイクとこまでイキましょう。」


 雪達も不機嫌オーラ丸出しだし。こう言うときはどうすればいいんだ?


 ググったら出てくるかな?


 現実逃避していると後ろから風雅院さんが抱きついてきた。


「何抱きついてきてるんですか!!」


「お母様がいいと仰ったんで。いいじゃない、女性に後ろから抱かれるなんて嬉しいことはあっても嫌って事はないでしょ?」


「嫌です。」


「私は嫌じゃないわ。」


 何なんだこの強引さは。まだストーカーの方が慎み深いんじゃないのか?


「圭人に抱きついてんじゃないわよ、離れなさい!!」


「そうよ、私と圭人の間に横恋慕だなんて恥知らずも甚だしい女ね。」


「圭人、ストーカーには然るべき処置をすべきだと思うからとりあえず110番とあの女の担任と親に連絡すべきだわ。」


 俺と雪達が風雅院さんに抗議していると斎藤達が気がついたようだ。


「うぅ…死にゆく男達が死神の列に揉まれながら同人誌を買ってる夢を見たような…って、一人増えてる!!才雅、いつの間に風雅院さんまで!!」


「目が覚めたと思ったらまだ地獄にいたのか。ハーレムを見せつける地獄だなんて閻魔様も厳しいお人だ…」


「童貞だから天国に行けると思ったのに、何故だ!!」


 起きたとたんにこのテンションはある意味すごいな。


「母さん、風雅院さんに何か言って…」


「今回も私が勝つに決まって…」


 ダメだ、ヒートアップしてる!!


「父さん、母さん達を止めてよ!!」


「圭人、お前が雪達を御しきれないように父さんにも母さん達を御しきれないだよ…」


 肝心なときに役に立たん父だな!!


 こうなったら仕方がない。今、俺に出来るのはただ一つ。


 それは…





「あぁ、刻が見える…」


「「「才雅、そっちの世界行っちゃダメだ!!」」」



 意識だけでも異次元に逃げ込むだけだ。





☆★☆★☆★☆★☆


 遠い世界に行っていた俺は気がつくとフォアグラを作るガチョウのようにお弁当を食わされていた。


 これ下手すると窒息死するだろ。てかしてるし。


 口に入っていた大量の食材を噴き出しむせかえっている俺に4人はいたわりの言葉をかけてくれる。


 これは君達のせいですよ?


 こんな短時間で物凄く内容の濃い昼休みが終わり応援席に戻ることになった。


 戻りながら斎藤が話しかけてくる。ちなみに雪達は風雅院さんに猛抗議している。よくもまぁ、あんな形相の雪達を涼しい顔して受け流せるな、風雅院さんは。


「才雅、伏見達のお袋さん達はお前の親父さんベッタベタだったけど伏見達の親父さん達とは大丈夫なのか?」


「あぁ、雪達のお父さんは俺達が小さい時に亡くなってるんだよ。俺も合った記憶が無いくらい昔のことだけど。」


「そうだったのか…」


「だから幼なじみの父さんがいろいろと気にかけてたらしいんだよ。うちに雪達を泊めさせたりとか誕生日の時とかもうちでやったりとか。」


「それにしても今だにお前の親父さんを伏見のお袋さん達は奪い合ってるように見えるんだよな…」

「…きっとそうなんだろうな…」


「え?」


「いや、何でもない。父さん達は幼なじみだから心の距離が近いんからそうみえるだけだよ。ちなみに母さんは幼なじみじゃないよ。高校の時に同じクラスで知り合ったらしい。」


「…なるほどな、伏見達がお前に友達作らせないわけだ…」


 斎藤はそういうと憐れむ目を向けてきたから地獄突きを食らわせてやった。




 午後の部最初の競技は父兄借り物競争と応援合戦だ。


 父兄の方々が競技をするので紅組、白組はそれぞれ思い思いの方法で父兄の方々を応援するのだ。

 紅組は男子も女子も学ランでかなりオーソドックスな応援をしている。


 対しては我らが白組は…


「何故、女装しているんだ?」


「紅組が全員学ランって聞いて対抗したんだって。」


「いや、女子が学ラン着ても可愛かったりやる気がでても男子がメイド服やらチアリーダーの服を着てもテンション下がるだけだぞ…」


「完全に作戦ミスだね。」


「誰がこんな愚かな作戦考えたのかしら?」


 応援合戦は負けたな。逆に勝つとは思えん。


 そう思ってるとナース服を着た女子(男子だったら無視だった。)が話しかけてきた。


「ごめん、悪いんだけどこのままだったら男子のキモさで負けそうだから君達3人に応援出て欲しいんだよね。頼める?」


「いいですよ。」


「私もOKです。」


「構いません。」


「本当!よかったぁ。」


「「「ただし」」」


「えぇっ!何か条件あるの?」


「「「圭人も一緒ならやります。」」」


「ちょっと、待て!!何故ここで俺が出ることになる!!」


「さぁ、あなたも行きましょう。」


「勝手に話しを進めないで下さい!!雪達も引っ張らないでよ!!」


~5分後~



「「「キャー、圭人可愛い♪」」」


「何でこんな目に…」


「いやぁ~最初はあの3人だけでよかったけど君、ちょ~似合ってるよ。足も綺麗だし顔も化粧したら完全に女の子だよ。少なくともブスの安売り特価セールの中川って子よりも500倍くらい可愛いわ♪」


 中川の異名がどんどん凄いことになっているがそんなことはどうでもいい。


「なんで俺がゴスロリ着なきゃいけないんだよ!!」


「いいじゃない、私達とお揃いだよ♪しかもちゃんと圭人の大好きなネコミミ、尻尾もつけたんだよ♪」


「私もイヌのたれ耳だよ~♪」


「キツネが一番可愛いでしょ、圭人♪」


「伊東、今すぐ写真を撮るんだ!!」


「もう撮っている!!」


「俺のじゃない!!雪達のだ!!大判で印刷してラミネート加工もしてくれよ!!」


「任せろ!!全員の等身大看板を作ってやる!!」


「だから俺のはいらんて!!」


「ほら、応援合戦に入った、入った。」


 いつの間にかゴスロリになったが着させられた以上やるしかない。雪達も離してくれないんだから。


「それにしても、ゴスロリなのにポンポンってどんな組み合わせだよ。」


「可愛いければ何でもいいじゃない、圭人可愛いからすごい視線集めてるよ♪」


「男が私の圭人にいかがわしい目を向けてくるのは万死に値するけど今なら許してあげれるくらい圭人可愛いよ~♪」


「もうダメだ!!圭人、空き教室に行こう!!圭人が可愛すぎて辛抱ならない!!」


「うわっ、応援中に抱きつかないでよ!!みんな見てるよ!!」


 いや~俺達が来た途端に会場の視線釘付けだよ。キモい女装男子まで見てるし…


「あれ、父さんも出るんだ。」


 スタート地点に父さんが立っている。何だか嫌そうな顔してるからきっと無理やり参加させられたんだろうな…


スタートのピストルが鳴り全員走り出した。

 父さんは今の所一位で走っている。案外足が速いんだな。


 くじを引いて、開いた途端にビクッと体を震わせ止まった。


 あぁ、何だかデジャヴ…


 父さんはすぐさま父兄観覧席の方に走っていく。


 そして母さん達はすでに立っている。てか自分が呼ばれるのが当然って感じで立ってる姿がなんとも威風堂々。


 父さんは案の定母さん達全員を連れてゴールした。


「先ほど一位でゴールされた借り物男子のパパさんのお題は「キスしたことのある人」です。まさか妻だけでなく他の奥さんも連れてくるとは借り物男子のパパさんは相当なジゴロ助だったようです。始めてのチュウは男の癖に涙が出ちゃったのでしょうか!!」


 だからあの実況はだれなんだ!!


 そして○テチンは大声で泣くな、誰も憐れにすら思ってないから!!


 そして母さん達も顔を赤く染めながらキャーキャー言うな!!


 頭を抱えたくなったが抱える腕は取られっぱなしだし動こうにも抱きつかれてるから動けない。


 この羞恥プレイは競技が終わるまで続いた。


 競技終了後、俺は大量の男子と女子に囲まれ名前を聞かれたりアドレス交換、交際を迫られたり(!?)した。


 男子はわかるが今の姿で何故女子がと思ったら俺に雪達が情熱的に抱きついているのを見て百合百合しい子達が俺を見初めたらしい。


 俺はそろそろ、いろんな物を諦めなきゃいけないのかと真剣に悩んだ

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