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俺は体育祭を楽しめない!!~玉転がし、借り物競争~



 次の種目は玉転がしで特に見ることもないから今俺と雪達は父さん達のいる父兄観覧場所に来た。


「よく場所がわかったわね、圭人。最初から知ってたの?」


「母さん達競技始まる前に騒いでたからすぐにわかったよ。恥ずかしいからああ言うのはマジで自重してくれよ。」


「何言ってるの、圭人君。うちの雷華を彼女にしてしかも一位になったら自分を差し出す約束を大声で叫んでた人が言えた事じゃないよ。」


「俺は言ってないよ!!言ったのは雷華と中川だから!!」


「しかもうちの美波と雷華ちゃんを侍らして悦に浸りながら応援してるの見えてたよ。ああ言うのを人前で堂々と出来るところは雅人と一緒で度胸があるけど少しは人の眼は気にしなきゃダメよ?」


「何を見てたの、美波ママは!!俺が侍らしてたんじゃなくて明らかに美波と雷華が俺を侍らしてたでしょ!!」


「うちの雪がパン食い競争頑張ってるのに顔と胸を1:9の割合で見てたのは頂けなかったわよ、圭人君。いつもお風呂で見てるんだからこういう時はちゃんと応援しないと。」


「服の上から揺れるのがいいんだよ!!って何言わせるんだよ、雪ママは!!」


「圭人、仲がいいのはわかるがみんなが頑張っているのに応援もしないでいちゃつくのは良くないぞ。」


「みんなが頑張っているさなかに母さん達といちゃついてた父さんが言えた口じゃないだろう!!」

「まぁまぁ、圭人。これでも飲んで落ち着きなさい。」


「ありがとう、母さん。母さんだけだよ、大人らしくしてるのは。本当に困った大人達だ。」


 あぁ、喉通る麦茶が清々しくてうまい。


「あら、ありがとう圭人。ところで雪ちゃん達とはイクところまでイッたの?」

「ぶふっ!!」


 麦茶を思いっきり吹いてしまった。人がいない方向いててよかった…


「げほっげほっ!母さんいきなり何言ってるだよ!!」



「そうよね、確かにうちの雪とどこまでイッてるのか気になるわ。」


「圭人君は一見、硬派だけど言い寄られたらコロッと行きそうだもんね。」


「そういうところは雅人に本当そっくり。」


「あのね、母さん達、俺は…」


「圭人ったらA、BまでならいいんだけどCまで行こうとすると拒むんだよね。」


「据え膳で口移しで食べさせてあげようとしてるのに何がダメなのかわからないんだよねぇ。」


「イヤじゃないのはわかるのよね。この前なんて抱きついて激しくキスしてきたし。」


 母さん達と雪達は俺をそっちのけで大人なガールズトークを始めてしまった。


 やめて!!近くの家族が驚いた顔したり俺を見て「やり手だねぇ」て小さい声で感心したりしてるから!!


 あっ小さい子が「お母さん、ABCって何?」て母親に聞いちゃってるじゃないか!!すごい母親困った顔してるし…


 父さんは父さんで助け舟を出してもらいたいのに一人達観した顔してるし!!


 俺のイメージが生徒の中だけじゃなく父兄の方々まで悪くなるよ…





☆★☆★☆★☆★☆


「才雅、どうしたんだ?軽くやつれてるぞ?」


「何でもないよ…」


 女子力には男は勝てないと改めて実感しただけさ…


 結構長く話していたのか玉転がしは三年男子の番になっていた。


 何気なく見ていると忌まわしき青ツナギとその仲間達が玉を転がしていた。


 その中に一人だけ見知らぬ人が混ざっていてかなりビクビクしている。


 気持ちは痛いほどわかる。


「玉を転がすのは得意中の得意さ!!君の玉も転がしてあげようか?」


「いやっ、いい!!」


「ダラシネェナ、アッ、ダラシネェナ!!」


「ひいっ!!すみません、お尻を叩かないで下さい!!」


「お前みたいなエビ臭いやつがどうしてこのチームに入ったんだか…悪くないな。」


「すっすみません!!」



 なんて不憫な姿何だろう…


 競技が終わったらすぐにカウンセラーに相談に行った方がいいな、あれは…


 俺は無意識に尻を手で隠していた。


 周りを見ると他の男子も同じ様に尻を手で隠していた。


 みんな同じ危機感を覚えたんだろうなぁ…





☆★☆★☆★☆★☆


 男子達が貞操の危機を感じた玉転がしが終わり、次は借り物競争だ。


 借り物競争はくじを引いたら紙に書かれた物を係に言ってから借りに行くことになっている。わざわざ係に言うのは誰が何を探しているのか放送で流すためである。


 会場の人達が何を探しているのかを知るのもあるが奥手な人だとなかなか物を見つけられないので会場にいる人の親切心で探している物を率先して出してもらおうと言う優しさによるものだ。


 今回は1年の女子から競技が開始された。


 俺達の中で一番最初にやるのは雪だ。


「雪、頑張れよ。」


「絶対、一位取るからね圭人♪」


 意気込む雪の瞳にはただひたすらに純粋な下心が見て取れた。


 順番が来たようで雪はレーンに入って行く。どうやら6番レーンのようだ。


「位置について、ヨーイ…」


 パンッとピストルがなり競技が始まった。


 やはり一番は雪だ。


 基本的にパン食い競争も借り物競争も足があまり速くないから運でどうにか上位に行くのを狙っている競技だから雪が一番になるのは当然なのかもしれないな。


 雪はくじを引いて中の字を読んで係の人に言った瞬間、こっちに走ってきた。

「圭人、来て!!」


「おぉ!!まだ靴がっ!!」


 俺は靴をまともに履かずにゴールまで連れて行かれた。


 雪がゴールの判定員に紙を渡し俺を見せると判定員の奴がニヤニヤ嫌らしい顔を向けてきた。


 何なんだコイツは。こいつも青ツナギの仲間か?


 すると放送がかかった。


「放送が遅れましたが、今ゴールに入った6番の人のお題は『一番大切にしている物』でした。迷わず堂々と連れてきた姿に私はニヤニヤするのを抑えられません。」


 いらん実況をするんじゃない!!


 あぁ、父兄の方々があの子達出来てるんだなぁみたいな目で見てきてるよ…


 雪はわざとらしくイヤ~ンとか言いながら頬に手を当て体をクネクネさせてやがるし。


 次は雷華の番だ。


「…ちゃんとした物を持ってゴールしろよ。」


「当たり前だよ。一位になるんだから♪」


「不安だ…」


 スタートになった。


 100m走でぶっちぎりの一位になった雷華の足には誰もついて行けず雷華はいち早くくじを引いた。


 係の人に言った直後こちらに向かって走って来ている。


 念のため靴を履いくと雷華が俺の腕を掴んで走り出した。


 これはもしや…


 ゴールの判定員に紙を渡し何か話している雷華。判定員が話しを聞きながら少しイラッとした顔を俺に向けてきた。


 やっぱり青ツナギの仲間だから女の子を連れてるとムカつくのかな?


「遅れましたが一番の人のお題は『詳しく説明できる物』でした。判定員の確認では生まれた時から現在までの事を詳しくを言おうとしていたので途中でOKを出してしまうほどだったそうです。先ほどの女の子に大切な物で呼ばれたのに今度は別の女の子に連れられるとは借り物男子は侮れませんね。」


 だからいらん実況を!!


 ただでさえ部活見学の時に悪目立ちしたのに全校生徒とその父兄にまで悪評をつけられたくないよ!!


 だが周りの人達が見る目線はとても突き刺さってきた。


 最後に美波の番が来た。


 もう嫌な予感しかしない…


「…頼むから俺を連れて行くなよ?」


「お題に入ってなかったらね。」


 スタートである。


 美波、独走中。


 くじ引き、係に話してこちらを見る。


 よし、行こうか!! 


 当然のように俺を連れて行く美波。


 美波は判定員に微笑みながら紙を渡すと判定員は紙を見て目を丸くさせた。


 そして俺を見て複雑そうな顔を向けた。


 お前は一体何なんだ?気があるならお断りだぞ?


「…えー、一位の人のお題は『大好物』でした…

 流石の私も今回はノーコメントでお願いします…」


 会場がざわつき始めてしまった。


 俺のせいじゃないよ!!





☆★☆★☆★☆★☆


「どうしてくれるんだ、ドテチ○と生徒指導の先生と校長まで来て説明を要求されたぞ!!」


「そんなこと言われても真実なんだからしょうがないじゃない。」


「そうだよ。嘘ついなら一位になれなかったかもしれないし。」


「圭人だって私のこと『大好物』でしょ?」


 そうだよな、そうなるよな…


 打ちひしがれていると俺の番が来たようだ。


「圭人、一位になったら私もご褒美あげちゃうよ。」


「圭人は特別だからね、いっぱいご褒美あげる♪」


「むしろ私をあげるわ♪」


「…がんばるよ…」


 一気に疲れてしまったが当初の予定通り適当にやろう。うん、それがいい!!


 スタートになり走り始める。


 手抜きで走ってるのに今のところ一位だよ、どうなってんだ…


 くじを引き、お題を見て立ち止まってしまった。


 このお題、絶対悪意があるな…


 でもどうせ放送されちゃうならいいや、ヤケだ!!


 俺は走り出した。


 雪と雷華、美波は私を連れてくのかなって顔をして立ち上がって待っている。


 俺はみんなの手を取り走り出した。


 ゴールの判定員に言う。


「これが俺のお題です!!間違い無いです!!」


「…そこまで言うならいいだろう。一位だ。」


 そして放送が流れる。


「今ゴールした借り物男子のお題は…これはすごいですね、お題は『愛する人』です。3人も連れてこんなにストレートな告白を衆人環視の下出来るなんてこれは月9のドラマですかと私は言いたくなります。」


 ものすごく目線が集まるが周りの目など気にしない。


 俺だって嘘は言いたくないのだから。


 でも、いつか1人を決めて宣言するんだ。


 この人を一番愛している、とね。

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