俺は決してフラグは立てない!!
カーテンの隙間から溢れた光に目を覚ました俺が目にしたのは女の子の顔のアップだった。
大丈夫、問題ない。俺は冷静だ。妄想や幻覚じゃないよ。
「雪、起きろ。朝だぞ。」
俺は雪の肩を叩いて呼びかける。
「う~ん…」
雪は寝ぼけているのか俺に抱きついてきた。
う~ん、顔が近いですよ、雪さ、うぉあ!!
雪は抱きつきながら俺にキスしてきた。しかもディープなキス。フレンチなキス。執拗に俺の舌を蹂躙してくる。
「っ、ぷぁ!起きてるだろ、雪!!」
無理やり引き剥がし言い放つ。
さっきまで半開きだった目が見開かれ雪は妖艶に笑っている。
「おはよう、圭人。昨日はすごかったわね♪」
と自分の体を抱きつつ雪は顔を少し赤らめる。
もちろん俺は何もしていない。
「アホなこと言ってないで朝飯食いに行くぞ。」
俺が布団から出ると雪は名残惜しそうにしながらも布団から出た。
「おはよう、父さん。」
「おはよう、パパ。」
俺と雪は父さんに挨拶してリビングのテーブルについた。
「おはよう、圭人、雪ちゃん。」
父さんも俺達に笑いながらそう言った。
「おはよう、圭人、雪ちゃん。朝ご飯できたから持ってって。」
「今日は私が卵焼き作ったから期待しててね。圭人君、雅人。」
そう言いながらキッチンから料理を持ってきた母さんと雪ママ。
俺と雪も運ぶのを手伝ってみんなで朝ご飯を食べ始めた。
「今日から高校生だけど二人とも何か部活とか決めてるの?」
と、雪ママが俺たちに聞いてきた。
「俺は今のところ部活はやらないよ。」
「私も入らない。」
「いや、やっぱり俺軽音部に入ろうと思うんだ。」
「あら、奇遇ね。私もそれに入ろうと思ってたところよ。」
「でも、体力をつける為にワンダーフォーゲル部に入ろうかな。」
「私も最近、山の素晴らしさに気づいてからワンダーフォーゲル部が気になってた。」
「しかし!ここはあえて俺は橋田○賀子研究会に入る!!」
「私も壽○子のような脚本家になりたい。」
おい、コラ。お前絶対嘘だろ。ワンダーフォーゲル部までならギリギリわかるが橋田壽賀○研究会なんてある訳ないだろ。
嘘ばかりつく悪い子はガッペムカつくあの人に生放送中にキスされちまえ。
そんな俺達のやり取りに父さん達は笑いながら朝食を楽しんでいた。
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朝食を終えて、朝の占いで雪に負け、別の番組なら!!とチャンネルを変えても負けていたので少しブルーになりながらも制服に着替え終えると母さんが「雷華ちゃんと美波ちゃん来たわよー。」と呼んできたので雪と玄関に出た。
二人は雪に一瞬鋭い殺気を孕んだ視線を送ったように見えたが今は笑いながら俺に挨拶してくる。
雪を見ると、とても満足そうな顔しておはようと返している。
…朝から本当にディープな気分だ。朝の占いのラッキーアイテム、痛ンブラーを用意すべきだった。
俺達が通う事になった市立流雲高校はこの辺じゃ結構ランクの高い学校だ。
本当なら一番ランクの高い所も射程圏内だったのだが、家から一番遠く、遊ぶ所からも遠いのでランクを下げて安全圏のこの学校にした。
…断じて幼なじみ三人に頼まれて選んだ訳じゃない。
涙ながらに「一緒の学校に行きたい……」と懇願されて折れた訳では断じてない!!
ホントだよ?
だが、未だに気になるのは俺が「流雲高校にするよ。」と言った時の三人の笑顔が何故か「計画通り」と言っているような気がしてならない。
そんなことを考えながら歩いていたら美波が話しかけてきた。
「ねー、圭人。選択科目何にするの?ちなみに私は文系だよ。」
確かに美波は理数系より文系の方が得意だからな。いい選択だと思う。俺は数学とかの方が得意だから理数系にしよう。
「俺はり…「私も文系だな。」「私も。」…文系にしよう…」
視線だけで蜂の巣にされそうなこの状態で俺が出来たのは自分で選んだんだ、と思い込むことだけだった。