俺は部活に入らない!!~水鳥雷華編~
今日は雷華と二人で部活見学をすることになった。
昨日は一緒に帰れなかったから不機嫌だったが、今日はすこぶる元気がいい。
尻尾を振りまくって走り回る子犬のようでマジで可愛い。
お持ち帰り不可の店で無理にでもテイクアウトしようとするおばちゃんのような気持ちを何とか引き止めようとする日雇い店長の気持ちで相殺する。
もちろん、おばちゃんは文句タラタラだが。
「じゃあ、雷華。どこにお持ち帰り…じゃなかった、どの部活見てみたい?」
「う~ん、まだ決まってないんだよね。ほら、いっぱいあるし。」
「それじゃ、一緒に決めようか。」
「うん、圭人と一緒なら地獄の底からベッドの上までどこでもいいよ♪」
そういうと、雷華は俺の腕に自分の腕を絡ませて今日もニコニコいい笑顔…て、違う!!
こら、そんなことみんながいる廊下で言うな!
ほら、みんな見てきてるし。
心なしか昨日より目線が訝しむものに変わった気がする。
「アイツ、昨日と違う子引き連れてるぞ。阿良○木暦か奴は。」
「昨日は手加減してやったが今日は違うぞ。本気でリア充が爆発する呪い作ってくる。」
「俺も若いときはあれくらい普通だったな。」
などなど。
だから○テチン。お前の言葉から真実を抽出しようとするとお前の隣には物凄い化け物しか想像できないぞ。
「とりあえず、ここに行こう!!」
この場所を離れる為に、適当に決めた園芸部に行くことにする。
「きゃ~、どこに連れてってくれるのかしらん♪」
…こいつ、分かっててやってやがる。
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ちょっと急ぎ気味で校庭に出て裏庭に着いた。
学校の裏庭は結構広く、いろんな植物が栽培されていた。
人が集まっている場所でおそらく園芸部の活動について説明してるんだろう。
近づいて見てみると、しゃがみ込んで苗を植える相生君がいた。
相生君、裁縫部に入る予定では無かったのか?
それ以前に君は運動系の部活に入るべきなんだ。
そんな気持ちになっていたが、部員らしき女子達が、
「君、上手だね~」
と、相生君を誉めている。
ゴツい身体なのにやっている作業は一つ一つ丁寧で優しい。
本当に家庭菜園が趣味だったのか…
人は見た目によらないと言ういい見本だな相生君は。
適当に決めた見学場所だったが、いい勉強になった。
見学に来てくれた人に小さな苗を渡してるらしく、俺と雷華は一つずつ苗を貰った。
「何が咲くんだろうね、圭人。」
「もしかしたら、花じゃないかもよ?」
「なら、咲くまでのお楽しみだね♪この苗、圭人の家で育てていい?ちゃんと毎日水やりに行くからさ。」
「いいよ。ある程度大きくなったら庭に移さなきゃならないからね。」
「2人の記念の花が咲けばいいね♪」
「そうだね、楽しみだ。」
俺達は笑いあいながら、何が咲くか楽しみに待つことにした。
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もらった苗を教室に置き、次に向かったのは体育館。
体育館ならいろんな部活がやってるし 、選ぶにはちょうどいいと思ったからだ。
体育館では男、女バスケ部、男、女バレー部、ステージのとこで卓球部がやっていた。
とりあえず、バスケ部を見ることにした。
男女混合で部活紹介をしているらしく、シュートやパス練習を軽く見せた後に2対2のゲームを始めた。
ルールは先に5本決めれば勝ちだ。
流石にバスケ部なだけあって動きが激しく、見てるだけでもなかなか楽しめる。
「次は見学者の人もやってみるか?」
キャプテンぽい男子が見学者を見渡す。
何やら既視感を覚えるこの感じ…
「じゃあ…そこの2人、やってみるか!」
やっぱり俺らか…ずっと腕組んでたらそりゃ目立つはな。
前回と同じように前の2人に、
「呼ばれてるよ。」
と、言おうとしたら、
「そこの腕組んでる2人な。」
と、先に言われてしまった。
仕方なくゲームをすることにした。
「2人とも、バスケ歴はどれくらい?」
「授業くらいでしかしたこと無いです。」
「私もです。」
「とりあえず、どこまで出来るかやってみようか。」
このキャプテンも目的が見え透いててウザイな。そんなに俺が無様に負けるのが見たいのか。
てか、素人に自分の有利なもので勝っても面白くも何ともないだろうに。
「やるからには勝つよ、圭人!!」
雷華さん、やる気満々だね…
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制服にバッシュだけ借りてコートに入る。
ゲームと言う名の見せしめが始まったが、今勝っているのは俺達のほうだった。
おそらく、俺達の方が連携が上手く取れてるからだと思われる。
相手は今日初めて一緒にプレイしましたって感じの男女だし、お互い遠慮してうまくパスが繋がらないでいる。
一方、俺達は目を見れば何となくしてほしいことが分かるので、不意にパスしても面白いくらい通る。
何より、雷華の運動神経はかなりいいので、どのスポーツも万能だと言える。
俺?
俺はそこそこさ。普通の人だからね。
周りの観客の盛り上がりも最高潮に達してきて、色々叫んでいる。
「あの子、すげー!!」
「本当に未経験者なの!?」
「何で適当な所に投げたボールが通るんだよ!!」
「どうしてギリギリパンチラしないんだ!!」
「…見えた!!」
「見える、私にも敵が見えるぞ!!」
「あぁ、刻が見える…」
途中から変な奴混ざってるし!!
「圭人、よそ見しない!」
「おぉと!悪い、雷華。」
今のは危うく取られるとこだったな。
「最後決めていいか、雷華?」
「いいよ、カッコいいとこ見せてよね♪」
「任せろ。」
俺はドリブルで一気に男子の方へ走る。彼は止めようと構えている。
俺は右足を出して右に抜けようとする…振りをする。
彼は自分の左に行くと思ってか重心が左に寄った。
そこから右手に持ってたボールを左手にチェンジする。
もちろん、さっき出した右足の内側に力を込めてるので、思いっきり踏み出し一気に左から相手を抜き去り、そのままレイアップシュートを決めた。
「「「クロスオーバーで抜いた!?」」」
バスケ部の人も見学者も驚きながら俺を見る。
するとキャプテンぽい人がいきなり怒鳴ってきた。
「君、未経験者じゃなかったのか!!」
「未経験者ですよ?さっきも言ったじゃないですか。」
「じゃあ何であんな鋭いクロスオーバーが出来るんだ!」
「クロスオーバー?さっきのフェイントの事でしたら自分で考えたフェイントですよ。」
「嘘だ!!」
「本当ですよ。雷華達と遊びでバスケしたときに思いついてそれからよく使うようにしてたんですよ。」
「未経験者にバスケ部があんな簡単に負けるのはおかしい!!」
「プロだってアマチュアに負けることくらいあると思いますけど…まぁ、いいや。先輩、見学させて頂いてありがとうございます。雷華、帰ろ。」
「うん、圭人カッコ良かったよ♪」
俺達はハイタッチをしてニッと笑う。
雷華、イタズラが成功した悪ガキのような顔してるなぁ。きっと俺もだけどね。
借りた靴を返して帰ろうとすると、キャプテンぽい人が俺達を止めてきた。
「待ってくれ!君達、バスケ部に入りに来たんじゃないのか?」
「違いますよ。見学に来ただけです。」
「バスケ部に入ってくれ!!君達ならレギュラーだってすぐ取れるぞ!!」
「今の所、入る気はないので。失礼しました。」
俺達は軽く頭を下げて体育館を後にした。
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さっき貰った苗を持ちながら家に帰る俺達。
「今日は楽しめたね、圭人。」
「そうだね。久しぶりに雷華とバスケ出来て楽しかったよ。」
「面白いくらいシュートもパスも通るからねぇ~。そういえば圭人のフェイント、ちゃんと名前あったんだね。」
「クロスオーバーって言ってたね。ま、今まで通り使うけどね。」
雷華と組んでスポーツをすると自分が上手くなった気になる。
実際は、雷華が上手くサポートしてくれてるからだと思うけど、あんなに一生懸命にやってる姿をみたらつい、俺も頑張らなきゃって気持ちになる。
負けず嫌いで一生懸命な雷華には何時だって全力で応えたい。
いつかこの苗も花を咲かせるように雷華への想いも咲くことを祈る。




