04.炎の集落
太陽と人々が眠りただ静寂が訪れている時間帯、二人の男はたくさんある天幕から少し離れた所人目を忍んでいた。
「風の民には気づかれていないな?」真っ赤な装束に身を固めた四十代初めの男は横に控える青年へと小声で囁く。
「はい、確かに。抜かりはありません」問われた赤い髪、黒い瞳の青年は仰々しく答える。
「そうか……。この辺りで確かなのであろうな?」再び確認するように炎に照らされた暗闇の中、男は聞く。
「はい、確かです。以前迷い風の民に世話になった者達の証言によりますと、確かに我らが位置する場所近くに間違いないと……」声潜め青年は主に頭を垂れた。
「わかった。明日、日の出と共に出立する。準備を怠るな」
「かしこまりました」恭しく青年は主人の言葉を心に留めると、去りゆく男へ再び深く頭を下げた。そして男の姿が見えなくなったことを確認すると、陰に潜んでいた三人の男達を呼び寄せる。
「わかっているな?」
「……本気ですかい?」男達のリーダー格は皆の心内を短く代弁すると、青年の意志をあおぐ。
「おまえらの主は私だ。なら聞く必要はないだろ?」男達がうなずくのを確認し、顎で方向をしゃくる。指されるがまま三人の男達は一画の赤く彩られた天幕……先ほどの男が入った天幕へと音もなく忍び込んでいった。
青年はそれ見届けると早足で自分の天幕へと消える。
その暫く後。赤い天幕から白い煙が上がり始める。それは瞬く間に強くなり、ついには赤い天幕が炎に包まれ出した。
轟々と音を立て、周りにも手を出すかのように炎は暴れている。
「か、火事だー! 長のテントが燃えているぞー!」異変に気づいた民達は慌てて各自の天幕から姿を現す。
「水だ、水を持ってこい! 火を消すんだ~」 人々は口様々に言葉を発すると各々消火作業へと勤しむ。だが乾燥しきったこの大地で、すでに轟々と燃えさかる炎を押さえつけることは出来なかった。
「どうした、一体何があったんだ!」赤髪、黒瞳の青年は自分の天幕から飛び出ると、そう言いながら脇目もふらず燃えさかる一棟の天幕へと走り出した。
「父上! 父上」叫びながらその中に飛び込もうとする。だが周りにいた民衆は彼を力ずくで止める。
「いけません、若様。お父上はすでに……」
「ばかを言うな! このような小さな天幕から父上が出てこれないはずはない!」
「し、しかし……すでに火は回りきっております!」男の言葉を聞き愕然とした青年は、それでも思い直ったようにまた声を荒げる。
「火を! 火を消すんだ! ありったけの水を持ってこい! とにかくなんでもいいから火を消すんだー!」
だがその言葉虚しく、火は消えることがなかった。燻る火の前にひざまずき、塵と化した天幕の前で青年は頭を垂れていた…。
そしてその黒い瞳に写る煌く光……。口元が……引き締めても緩む。
苦痛そうに顔を歪めてみても、心では微笑む自分がいる。
「そうとも、父上が燃えさかる炎の中から出てこれないはずはないだろう……。当たり前だ、出て来ようにも既に息絶えていたのだから……」そうつぶやいた独り言は誰にも聞かれる事はなかった。
そして周りはそんな意気消沈な青年に労りの目を向ける。背中を見せる青年はどう見ても、若くして肉親を失い項垂れる不幸な青年にしか見えなかった。
◆ ◆ ◆
「ここは、何処だと思う?」
「……あまり聞きたくない台詞ね……」
「そうかい? 至極当然の台詞だと思うけど?」
「……まぁ、そうね。私が同じ立場だったら間違いなく聞くことではあるけど……でもあなたが私と同じ立場だったら聞きたくない台詞だと思わない?」
「さぁね、僕にはわからないよ」
「あっそ! じゃぁ、私もわからないって答えを逃げることにするわ!」
「おい! お前らさっきからうるさいぞ! いいからさっさと歩け!」強面な男に先へと促され、デュオと名づけてもらった青年は先端の尖った長い棒でこづかれる。
「いたっ。痛いなぁ。もっと優しく扱ってよね。お客さんなんだから」金の髪を揺らし青年は後ろへ抗議する。
「……これがお客様に対する扱いと思っているわけ!? 手が繋がれてなかったら、あんたの髪をぐちゃぐちゃにしてやりたいわ」デュオと名づけた少女は上目遣いでその流れる金髪を睨み付ける。
「嫌だな。今のは嫌味に決まってるじゃん」その視線を軽くかわして青年は飄々と答える。そんな様子もさまになる青年を少女は頬を軽く染めながらそれでも呆れた様に見つめた。
今度はその視線にニッコリと微笑みながら、嫌味が通じてない事に紐で繋がれた手で肩をすくめて見せた。
二人はそのまましばらく歩かされると天幕の一画に連れてこらされた。赤い質素な天幕の中に通され、暫くそのまま待つように言い渡される。
中はこれと言った装飾もなく、ただ入り口正面の奥に一つの椅子が陣取っている。
そんな中を興味なさそうに、それでも見渡すと青年は少女に話しかけた。
「しかし、野次馬いっぱいだったな~。なんでこんな所にたくさん集まってるのさ?」
そんな飄々とした青年を叱るように少女は声をひそめて囁く。
「しっ、ばかね……。ここは集落よ。つまり村。でも確かにこんな所に集落があるなんて聞いたこともないわ。しかも簡易天幕……それにこんな近くなら……」
「なにどうしたの? シェ……リィーダちゃん」慌てて言い換える青年に再び非難の赤い瞳をぶつける。
「……容姿から言って、炎の部族だわ……」再び声をひそめて、リィーダことつまりシェピアは言う。
「……炎?」
「そう。昨日話した通りこの島には五つの部族がいるの。覚えているわよね?」
「つまり、君の所の風……」言いかけた所で鉄拳が飛んできた。
「あんた馬鹿?! 私が昨日言ったこと全部忘れてんじゃない?」先日夜の驚異から抜け歩き出した二人だったが、夜本番になると冷えが堪えそのまま近くの岩陰に姿を隠し、朝が来るのを待つことにした。
あまりの寒さに凍え死ぬのでは? と思ったシェピアだったが、青年の特異希な力によって凍死することはなかった。この際腹の虫はどうにか押さえた。
だが悠々と睡眠することは出来ず、何も知らないと語る青年にこの島の歴史を語って聞かせたのだ。
一つはなぜこの様な大地になってしまったのか。昔の王が女神の不況を買ったと言う話だが少女もいまいち信じてなく、おとぎ話の部類に入る。
一つは島の民の話。五つある集落……地・火・水・風プラス闇の部族の話。各々の仲間意識が強く他の部族との関わりを拒み、それぞれが独立した信念と統制を持って生活している。
いがみ合うとまでは言わないがどの部族共々仲がいいとは言えなかった。いつ何時他の部族の弱みや粗を笠に取られるか解ったものではない。
そんな話を色々としている内にいつの間にか寝てしまったようで、朝目覚めた時にはなぜか二人はしっかり抱き合っていたのだが、その事に触れるとシェピアの鉄拳がまた飛んできそうなので青年は黙秘した。
しかもすでにデュオは目覚めた時にしっかりたっぷりとシェピアをからかって遊んで満足していたので、あえてその事に今は触れなかった。
だがそのからかって遊んでいる際大騒ぎをしていた為に丁度近くにいたらしい男達に捕まってしまったのだ。
その相手がどうやら他部族だと分かると、シェピアは自分の身分を隠しとっさに別名を名乗ったのだ。
青年は先ほど肘が飛んできた頬を悲惨そうにつながれた両手でなでる。
「覚えてるよ。ただちょっと今は抜けちゃっただけで」そんな青年を見、少女はありったけの肺の空気を吐き出す。
「で? 何か言いかけてでしょ?」
「……あ、そうそう。つまり……君の……所? とは違うって事だよね?」一語一語少女に確認取るようにそろそろと言葉を紡ぐ。
「……そうね」そんな青年にか、言葉にか、満足したように少女は頷いた。そして今までになく慎重に周りを見渡し、早口で静かに言った。
「だからはっきり言っておくけど、私の立場はかなりやばいわ。まずばれたらどうなるか分からない。特に炎の部族の族長は名の通り気性の激しい方と聞いてる」
「…………」いつになく真剣な少女に青年もさすがに茶化す口元を引き締めた。
「下手を打てば部族同士の抗争となりかねない。それはなんとしても引き留めなければ……」
「ご心配なく。それこそ私たちの思うところ」
◆ ◆ ◆
いきなり第三者の声が天幕の中へと引き込まれた。
「誰?!」二人が後ろを振り返るとそこにはまだ10代と思われる若い青年が一人たたずんでいる。
シェピアは怪訝な顔をする。デュオも少し顔を引き締める。
「これは失礼。紹介が遅れましたね。お察しの通り私が炎の集落の長、マヴラァスと申します。お見知りおきを」
「マヴラァス……?」
「よりによってこんな時分にいらっしゃるとは、本当についているお方だ……」苦笑混じりに長と語った青年はシェピアへ視線をそそぐ。
「あなた……ここの、長?」少女は眉を歪めたまま青年を観察する。
赤い髪。だがシェピアのそれとは明らかに違う色。矛盾のようだが漆黒の赤。深く深い奥底に在るような色彩。例えるなら柘榴石を思い出させる。
そしてそれに追なる瞳。だが瞳のそれは形容するならば黒だ。赤と呼ぶには深すぎる色素が黒と呼ばせるだろう。
整った顔立ちと細くしなやかな体形、スラリと伸びた足は長く、背も高い。とても優しそうで穏やかそうな雰囲気でありながら、その髪と瞳が整った顔に溶け込んでいるだけでどこか違和感を感じさせる。
狂気を含んだ黒い瞳。なぜかとても恐ろしい……と本能でシェピアは恐怖を感じた。
「私の容姿が意外ですか?」物腰柔らかく青年は問う。少女の青年とは違う輝き光る鮮やかな赤い瞳の中から問いを見いだしたのだろう。
「……そんなことは……ございません」言葉を改め、少女は同じく丁寧に答える。
「まぁ、確かに。私よりもそなたの方が異端児な存在だろう」悪びれた様子もなく青年は少女の傷をえぐった。
「……」その痛みに無言で少女は耐え、青年の次の言葉を待つ。
「……ふむ、確かに。馬鹿ではないようだな。風の皇女シェピア」ばれてはいるだろうと思ってはいたが、いざそうはっきり名前を聞くと動揺せずにはいられなかった。
「確かに。我らが部族にとっては恋い焦がれる容姿ではあるな……無理もあるまい。だが……」青年は少女を無遠慮に眺めると一人で納得する。
少女は自分の容姿のことを言われているのだと改めて思い知らされた。青年の言う通り、確かに風の民では異端児であった。
皇女というだけで色々な好奇な目にさらされるのに、風の民と言うにはかけ離れた容姿ではあった。
赤い髪に赤い対の瞳。肌の色は透き通る白とは言い難い。
普段、風の民を象徴する色は銀の髪。青もしくは緑の瞳。多少茶色、黒が混ざろうとも、ここまではっきりとした鮮やかな赤が混ざったことはない。
突然変異とは言え、こうも対極な色に支配されている少女は何かにつけて風の民の問題とされていたのだ。
「確かに。悪いようにはしない。目的がここにいるのだ。何も風をどうこうする気はない」
「目的……?」
「このようにバランスが取れていない。風の民にはそなたが生まれ。炎の集落には妹のようなものが生まれ……確かにそろそろ必要なのかも知れない。だが!」
「妹……? 一体あなたは何を言っているのです? 私には何を言っているのか……」少女はどうにか動揺を押さえつけてはいるが、無意識の内に素に戻っている。
「ふむ、確かに。風の民の皇女は箱入り娘というのは本当の事だったか……」
また傷をえぐる。無知な侮辱に身を振るわせながらそれでもシェピアは聞いた。
「私が何も知らないのは確かです。分かっています。でもそのままでいるつもりはありません。何を考えていらっしゃるのですか!」そんな少女を見、マヴラァスは愉快そうに喉を鳴らし確かに、とまたつぶやいた。
そんな二人を傍観していたデュオはいい加減飽きてきていた。
もともと短気な彼がこうもシェピアを馬鹿にされ、また自分の事も放っておかれ我慢できるはずがなかった。
「確かに確かに、確かに確かに……確かにってうるせぇーよ、ガキが!」
「だいだいよ、さっきから聞いてたら何訳わかんないこと言ってんだか。俺達はただ迷ったって言ってんだろ! なのにてめーは勝手に一人で納得しやがって! シェピアに謝れよ!」デュオは一気にまくし立てると男を睨み付けた。
「はっはっは」マヴラァスは声を立てて愉快そうに笑った。
「これはこれは、皇女はなかなか毛色の違ったペットを飼ってらっしゃるとお見受けするが……。皇族に対する態度というのを調教してないようだな」マヴラァス楽しそうに、顔に笑みを浮かべそれでも瞳の奥は笑わずに辛辣な言葉を吐いた。
シェピアは二人の間に立つとより一層顔を引き締め膝をついた。
「彼の言動には謝罪します」そう言うと頭を垂れる。
不満そうな青年が言うより早く少女は手で制し、優雅に立ち上がった。
「ですが私と分かっててのこの扱い。マヴラァス殿の方こそいささか不遜ではありませんか?」私の部分に力を入れ、少女は真っ正面からマヴラァスと対立する。先程のマヴラァスに対する恐怖はいつの間にか消えていた。
「確かに。だがな、姫君。不審者を厳重にもてなすのは何処も同じでしょうに」少女の態度に満足そうに青年は頷いて見せた。
「だが、私の目ではっきりと確認した以上、この様な扱いは遠慮させて頂こう。おい!」青年がそう問いかけると、天幕の外で見張っていただろう男達が数名入ってくる。
そして、無言でシェピアの手枷を外す。
「申し訳なかった。時期が悪かったものでね。なんせ王位継承がすんだばかりなのでね」と、何気なくマヴラァスは言う。
「……お父上がお亡くなりになられたのですか?」幾分声を潜め少女は労りの言葉をかける。
「ああ、先日。何者かに天幕に火をかけられて……」
「っ!?」シェピアは飄々と語る青年に瞳を向けた。
「ああ、その男も外してやれ。なにやら姫にとって大切なお人の様だからな」男達にそう指示するとシェピアに微笑みかける。
「マヴラァス殿!」慌てて少女は怒鳴ると、非難の目をマヴラァスへと向ける。
「そう思われる方がいいだろう? 民は今殺気立ってる。父が殺された日にこんな近くに風の民の皇女がいるのだから。道ならぬ恋人と密会していたと思われれば疑いも晴れよう」
「……あなたは、疑ってはいないのですか?」
シェピアのその問いにマヴラァスは気持ち眉をひそめた。だがその質問は聞かなかった事にしたようで、そのまま何も言わず天幕を出て歩き出した。
シェピアもマヴラァスに促されるままついていく。 デュオも行き場がなく仕方なくついて行く。不満な色を隠そうともしない。こんな所とは早く別れたいと思っているに違いない。
「そなたと話してみて……な。噂通り心根の綺麗な方のようだ」後からとってつけた答えに少女は少し肩すかしを食らったようだ。不審な表情を隠そうともしていない。いや、隠すよりも早く顔に出てしまったのだろう。
そんな少女を見て、マヴラァスはまた愉快そうに笑った。
「驚く事はないだろ。私は正直に言ったのに。あなたは美しい。力強く輝いて、自信に満ちている……。好奇の目に晒されていようと正面を見て歩いて来たのだろう? ……愛されて……」
「…………」褒められている、とは思わなかった。素直に賞賛を称えてはいるが、その言葉には棘があった。
「風の民の皇女よ。……何も知らずに嫁に行くか?」
「…………」シェプアは無言で次の言葉を待った。だがマヴラァスは答えない。無言の時が流れた。
そうしている内に、三人は集落から少し離れた一つの黒い天幕にたどり着いた。
「知るも知らないもあなたの自由だ。真実を知りたいのならこの中へ。無知に甘んじるならあそこに見える天幕で今日は休むがいい」マヴラァスはそう言うと自分は黒い天幕に入っていった。
そして先ほどのマヴラァスの視線の先には赤い天幕が一つ建っていた。
◆ ◆ ◆
一時が流れても無言のシェピア。
「……今日は泊めてくれるみたいだけど、どうすんだ?」しびれを切らしたように青年は簡潔に聞いた。
シェピアはそんな青年を見上げると、首を振ってみせる。自分ではすぐに決められないのか。
「……真実を知ることが全て正しいとは思わないわ。でもお父様は全く語ってはくれないの。愛されているのは分かってる、でも私自身の事。知る権利はある。でも別の人の口から語られていいものかが分からない……」ジレンマに身を裂かれそうだ。まるで実際に裂かれるのを押さえるかのように、少女は自ら体を抱きかかえる。
「僕には全然何のことかわかんないから、何も言うことは出来ないね」と肩をすくめる。そんな青年を見て、少女はここに来て初めて顔を緩ませた。
「そう言えばあなた、さっき……」苦笑混じりに言う。
「あ、ああー……! ごめん。ついカッとなっちゃって。今考えるとかなりまずかったよね」心底すまなそうに鼻をかいて見せた。
「ううん、ありがとう。怒ってくれて。本当はなんか嬉しかった。感情をぶつけてくれて……」
「……シェピアは格好良かったな~。ほら口調とか、態度とか!」
「あれは……。自分の身を守るための鎧……。ああ言う態度をとっていれば誰も何も言わない。皇女らしく振る舞えば、誰も何も不満を言ってこないから……」
「……苦労してるんだねぇ~」と、あまり労っていない口調で感想を述べる。
それでも腹は立たなかった。それどころか、感謝すら覚えた。深く追求しない彼が、それでも自分を気遣ってくれているのが分かる。
「ねぇ、お願いがあるの。リィーダを、探してくれる?」少女は縋るかのような声で力無く頼んだ。
ここに囚われるとき、置いてきぼりとなった獣。いまだ、きっと身を潜めた岩陰でひっそりと主人の帰りを待っているのだろう。
「おやすいご用さ!」明るく青年は言うと前触れもなく少女の体を引き寄せた。
「ちょ、ちょっと……」慌てながら両手でその胸を押したが、力は全く入ってなかった。
「心配しないで。僕が側にいるから」そんなこと頼んだ覚えはない。そう叫ぼうにも唇は動かなかった。
両手にくるまれながら少女は心が落ち着いて来るのを感じた。思っていた以上にしっかりとした胸板に触れ、暖かい想いが流れてくる。
シェピアはこの時初めて気がついた。自分は寂しかった事に。誰かにこうして抱きしめてもらいたかった事に……。
シェピアは自然と両手を青年の背中へと回す。
「シェピア……。気をつけてね」何に? とは聞かない。きっと彼は自分の気持ちを分かってくれている。
「あなたも……」見上げ、二人の瞳が重なる。
そして青年の唇が、少女のそれにゆっくりとそっとかぶさる。
軽く、触れるようなキス。
「今はまだこれぐらいね」と冗談交じりに言うと、青年は少女から離れ踵を返し歩き出した。
「ばか……」シェピアはそう一言つぶやくとデュオを感じた唇をそっと人差し指でなぞる。そこはとても熱を持って熱かった。
やっと少し近づきました。
そして新しい人間出てきましたが!……マヴラァス殿はなんだか言葉使いが定まってません。
最初の内はすごく仰々しい話し方をしていたのですが、私が疲れたので(笑)普通な感じに戻したので、なんだか変な所がいっぱいあるかも知れません。
そしてシェピアさんも同じです。ヒロインのくせして話し方がごっちゃごっちゃ。
統一感を持たせようと直してはいますが、最初から完結までずいぶん時間掛かったせいか、セリフだけじゃなく私自身の書き方がずいぶん変わっている気がします。すいません。
次回は火曜日更新します。