後悔
その頃、ヴァイス、ネル、アベッサの三人は不機嫌な顔でギルドまでの道を歩いていた。
その理由は。
「おい、聞いたぞ。あの坊主を追い出したって」
「本当なのか?」
道すがら、知り合い達からこんな言葉をかけられるのは、もう何十回目。
「それが何だってんだよ」
立ち止まったヴァイスが相手を睨みつけながら聞き返すが、集まった冒険者達は互いに顔を見合わせ
「いや、だってなあ」
「最近、お前のとこのパーティーで魔物倒してたの全部アイルだったじゃねえか」
当然のように、そう言われてしまった。
「えっ?」
しかし、そんな言葉に三人は驚いたように固まる。
「そう、だったか?」
ヴァイスがネルとアベッサへ顔を向けるが、二人も困惑した表情を浮かべながら
「言われてみれば……」
「確かに私達、最近は討伐数少なかったかも」
そう呟きあう。
「あいつの討伐数抜いたら、ノルマ達成できないんじゃねえか?」
「一番貢献してる奴を追放してパーティー消滅じゃ、いい笑いものだぜ」
周囲の他の冒険者達から一斉に笑われ、ヴァイスは唇を噛みしめた。
「全然、気づかなかったわ」
「あいつ、いつの間に……」
ネルとアベッサもそんな事実が信じられないようであった。
「惜しいことしたな」
「馬鹿だなあ」
からかいの声を聞きながら、ヴァイスの脳裏には最後に見たアイルの悲しそうな顔が浮かぶ。
「まあ、後悔しても遅いけどな」
そんな言葉を残して、他の冒険者達は去って行った。
「ヴァイス……」
その場に残されたアベッサが、不安そうな声を出す。
「私達のしたこと、間違ってなかったんだよね?」
ネルの問いかけに、突然近くの木を殴りつける音が響いた。
「俺の判断は、正しかった」
体を震わせるネルとアベッサの耳に、感情を抑えたヴァイスの声が届く。
「……どいつもこいつも、好き勝手言いやがって」
そう独り言ちたヴァイスは、どこか遠い場所を睨みつけた。