秘められた力②
「あ、サーラとソーラもその孤児院の子達でね。他にも、私と同じように魔物に家族を奪われた子供がたくさんいた」
そう呟いた時だけは、少し悲しそうな色がその瞳に浮かんだ。
「その孤児院から、ロロリア様に引き取られたの?」
「私、小さい頃から魔法だけはすごく得意でね。ロロリア様が孤児院に慰問に来てくださったことがあって、その時 孤児院の所長が私のこと頼みこんでくれたの」
「それで、弟子に」
「うん」
答えたセヴィアは明るく笑う。
「それでね、私がロロリア様について孤児院を出発した時、なんと あの双子が荷物の中に隠れてて」
「サーラとソーラが?」
「ロロリア様、もう孤児院に戻るのも面倒くさいって、そのままあの2人も弟子にしてくださって」
当時を思い出して笑うセヴィアに、いつしかアイルもつられて笑っていた。
「ロロリア様は、困ってる人は放っておけない。だから、アイルももう大丈夫だよ」
普段は、もう少し優しいかんじの方なんだけど。と呟きながら、セヴィアはアイルの耳元へと顔を近づける。
「だから、家事が覚えられたら、私が魔法や剣術を教えてあげる」
「え?」
まるで内緒話でもするように言われ、アイルは間近の顔を見つめ返した。
「今までは、まともに教えてもらえなかったんでしょ? これでも私、魔法の天才っていわれてるから安心して」
セヴィアの言葉は決して奢りや同情からではなく、アイルのことを本気で心配してくれているのだろう。
「あ、ありがとう。でも……」
「その剣だって、ボロい安物じゃない」
返答に困る様子には気づかず、セヴィアの視線は小屋の入口に立てかけられたアイルの剣へと向けられた。
「それは」
「私が使ってたので良ければ、それもあげる。お古だけど、あの剣よりはずっと上等なものよ」
「あの」
早速テーブルから離れ山積みの小箱へと手を伸ばすセヴィアに、アイルも後を追うように立ち上がった。
「アイルなら、少し長い刀身のほうがいいかな。これから、どんどん背が伸びるもんね」
困惑するアイルに、どこか楽し気なセヴィアが振り返った時だった。
何かが破壊される轟音に、二人は同時にその場から咄嗟に飛び退く。
驚いて振り返れば、小屋の壁は木端微塵に吹き飛び、さっきまで自分達がいたテーブルと椅子が派手に壊れ床に散乱していた。