出会い③
「うーん、そうねえ」
そんな 願いに、ロロリアは少し困ったように首を傾ける。
「「お願いします」」
サーラとソーラにも同じ声でねだられ、小さくため息をついた顔がアイルを見る。
「貴方のいたパーティーは、どれくらいの強さだった? ランクは何位?」
そう聞かれた問いに、アイルは少し口籠った。
「あの、特にランクはありませんでした」
冒険者パーティーが溢れるこの世界では、全体の半分以下の順位となるとランクはつかずに、まとめて“番外”となる。要するに、その他大勢という扱いだ。
「ふうん」
素気なく告げたロロリアは、アイルを上から下まで値踏みでもするように眺めた。
「じゃあ、料理や裁縫は得意?」
「……いえ。すみません」
続けての質問にも、更に小さくなり申し訳なさそうに答える。
「でも、アイルは男の子だから力持ちだよ」
少し気まずくなってしまった空気を紛らすように、サーラかソーラのどちらかが口を挟んだ。
「荷物持ちの召使いを雇いたいって、ロロリア様言ってたじゃん」
「けれど」
双子の意見にも、大魔導士の歯切れは悪い。
「お願いします、ロロリア様。面倒は私が見るし家事も教えます。そうしないと、アイルはここで野垂れ死ぬことになっちゃう」
渋る彼女を最後に説き伏せたのは、セヴィアの必死の訴えであった。愛弟子にそこまで言われ、ロロリアは深いため息をつく。
「分かったわ。彼をつれて行くことを許可します。ただし、当然うちのパーティーメンバーとしてではなく、召使いとしてよ」
「ありがとうございます!」
とりあえずだが許しを得たことにセヴィアが頭を下げたので、アイルも慌ててそれに倣う。
「アイル。じゃあ、こっちに来て。色々教えてあげるから」
「あ、うん」
そのままセヴィアに手首を掴まれ、まだ状況に理解が追いつかないままアイルは歩き出した。
「もう大丈夫だから、安心して」
そう笑うセヴィアが、自分を本気で心配してくれていることだけは分かる。
「……うん」
そんな気持ちが有難いのは確かだけれど、アイルの脳裏には未だにヴァイスやアベッサ、ネルの姿が浮かぶ。
「早く、こっちよ」
「うん」
けれど、少しの間、この優しさに甘えてしまってもいいのだろうか。
「……よろしく」
遠慮がちにだが そう言ったアイルに、セヴィアは嬉しそうな笑顔で頷いた。