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出会い①


 パーティーを追放され、宿から追い出されたアイルはうつむいたまま ひたすら歩いた。


持ち物は、古びたリュックと安物の剣。服装は、つぎはぎだらけのシャツとカーキ色のズボンに茶色のブーツ。


朝も昼も夜も、アイルは何日もただ歩き続けた。休むことも眠ることもせず。まるで、自分の身に起こった悲しみから逃れるように。


 しかし、遂にその限界がやってくる。パーティーから追放されて幾日か後、照りつける太陽の下でその華奢きゃしゃな体がふらりと倒れる。

何日も休息も食事もとっていない。動けなくなるのは当然のことだった。


 少しだけ休もう


グラグラする頭でそう考え、近くにあった木へともたれかかる。その木陰で、アイルは剣を抱きしめたまま深い泥のような眠りについた。



 「あれえ」

「何かいる」


どのくらい時間が経っただろう。まだ目をつぶったままのアイルは、近づいてくる声で目を覚ました。


「またモンスター?」

「えー、最悪なんだけど」


声は複数。どれも若い女のようだ。


ネルとアベッサが笑い合うかつての幸せだった光景を思い出しながら、ゆっくりと目を開けたアイルは。


「ううん。男の子みたい」


自分を覗き込む二人の少女の顔を目にした。


「うわぁっ」


予想以上に至近距離だったこともあるが、驚いたのは彼女達がまったく同じ姿と声を持っていること。


「サーラ、ソーラ。知らない人をびっくりさせちゃうでしょ」


その後ろからまた人影が現れるが、こちらはアイルと同年代の少女。


「……あ、あの」

「こんな所でお昼寝なんて、おかしな子がいるものね」


更にもう一人、20代前半と思われる大人が姿をみせる。虹色の髪に白い薄手のドレスをまとった非常に美しい女性であった。


「あの、貴女達は」


突然見知らぬ人々に囲まれたアイルが、遠慮気味に尋ねる。


「私はセヴィア」


アイルと同年代の水色の髪をした少女が答えた。


「で、こっちがサーラとソーラ。双子なの」


続いて名前を呼ばれた幼女二人が、同じ声で「よろしくね」と手を上げる。


「そして、こちらが大魔導士のロロリア様よ」


最後にセヴィアが少し勿体もったいつけ、虹色の髪の女性を紹介した。


「あ、俺はアイルといいます」


だから丁寧に頭を下げて名乗ったのだが。


「反応うすっ。っていうか、ロロリア様のこと知らないのっ?!」

「え?」


眉をひそめるセヴィアに怖い顔で詰め寄られてしまった。


「ロロリア、さん?」


確かに聞いたことはあるような気がするが、すぐにはそれが誰だか思い出せない。

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