エピローグ③
「それで料理や裁縫ができるかを確認してたんですね」
そこまで聞かされてしまえば、膨れっ面のセヴィアもそれ以上は何も言うことは出来なかった。
「でも、やっぱり早いうちから強いパーティーで経験を積んだほうがアイルのためになるんじゃ」
それでも最後の小さな抵抗をみせる弟子を、ロロリアは穏やかに見下ろす。
それがヴァイス達への不満からではなく、アイルの将来を心配しているためだと分かっているからだ。
「確かに、彼が将来 剣聖や大魔導士を目指すなら、そうかもしれない」
「え?」
微笑んだ口元で語る師匠を、セヴィアは仰ぎ見た。
「でも、アイルが将来なるべきは、魔王を倒す大勇者よ」
そう宣言した先には、ヴァイス達に囲まれ嬉しそうに泣き笑いをするアイルの姿がある。
「勇者に必要な資質は、強さや名声だけじゃない。それは、分かるかしら?」
「……はい、なんとなく」
言葉には出来ないながらも頷くセヴィアに、ロロリアは微笑む。
「きっと世界には、勇者の素質を持って生まれた冒険者はたくさんいる。だけど実際に勇者になることができる人間は ほんの数人足らず」
「その足りない部分を、彼は持っていると?」
まだ釈然としないながらも、セヴィアの瞳には幸せそうなアイルの笑顔が映った。
「その答えは、これからの彼等が教えてくれるでしょう」
明るい太陽の下、ヴァイスパーティー四人の騒ぐ声が壊れたギルドの敷地に高らかに響いていた。