エピローグ①
そうロロリアに問われた言葉に、三人は黙り込む。
いくら否定しようと、既に本音を知られてしまった後では誤魔化しようがなかった。
「……俺達は」
やがて、ヴァイスがぽつりと口を開いた時。
「あれ、ここギルドだよね?」
「なんで壊れてるの?」
ほぼ原形をとどめていない扉の外から声が聞こえる。それが誰のものであるか、長いつきあいのヴァイス達には考えるまでもなかった。
「アイル」
外へ出ると、壊れた建物を見上げていたアイルが三人の姿に気づく。
「あ」
いつもなら嬉しそうに自分達へ駆け寄ってくる少年が、今は困ったようにさっと下を向いてしまう。
それもそのはずで、彼等が顔を合わせたのは、あの追放の場面以来であった。
「げ、元気でやってた?」
最初につい声をかけてしまったのはネルだった。
「う、うん」
ぱっと顔を上げたアイルが、嬉しさを堪えながら頷く。
「ちゃんと、ご飯は食べてるの?」
「だ、大丈夫」
素っ気なく聞いたアベッサにも答える。
「あ、あの。俺、イースクリッドの大会に出てみたんだ」
そして、ぽつりぽつり遠慮気味にそんなことを話し始めた。
「ああ、そうなのか」
「うん。そこで、運よくだけど、優勝できて」
それは本来驚くべき快挙であったが、誰もがどこかで予想していた結果でもある。
「運じゃなくて、完全な実力よ。王族や貴族の方々も、みんなアイルに注目してたんだから」
横から、すかさずセヴィアが口を挟んだ。
「そうか、それはすごいな」
「あ、あの」
それを静かに聞いていたヴァイスの元に、アイルは小さく駆け寄った。
「これ、受取ってください!」
そうして下げた頭とともに差し出された袋を、その場の誰もがポカンと見つめた。
「何だ、これは」
ヴァイス、アベッサ、ネルが見つめる先でアイルが顔を上げる。
「武術大会の、優勝賞金です」
そう教えられた言葉に、皆が意味不明という顔をしていたが
「え、もしかして、大会に出たのって賞金を稼ぐためっ?」
まっさきに その真意に気づいたのはセヴィアであった。
「うん」
「有名になったり、スカウトされるためじゃなかったの?」
そんな二人の会話で、周囲もアイルの行動の真意が段々と分かってくる。
「あんた、まさか旅銀のことを気にして?」
眉を顰めるアベッサに、アイルは力強く頷いた。
「俺は、絶対に旅銀を盗んだりしてない。けど、たくさん食べるからお金がなくて大変なのは知ってたし。これを持って帰れば、また仲間に認めてもらえるかなって……」