とある真相③
ロロリアの杖からも七色の魔法が発現し、赤い光へと衝突する。
「うわあぁっ」
魔法同士がぶつかり合った衝撃で、その場にいた人間はもれなくギルドの建物と一緒に軽々と吹き飛ばされていた。
運悪く一番間近で巻き込まれた職員が爆発の瞬間に見たのは、何故か突風の中で小さく微笑むロロリアの横顔だった。
「痛てて……」
土煙が収まり、ヴァイスは頭を押さえながら起き上がる。
顔をしかめながら周囲を見回すと、幸いにも怪我人は出ていないようだが、ギルドは半分が派手に消し飛んでいた。
「おい、大丈夫か?」
ハッとしてすぐ近くに倒れるネルとアベッサに声をかけたが、二人ともヴァイスと同じようにふらふらと立ち上がる。
「本気で魔法使うとか、ありえない」
「あんただって、便乗してたじゃない」
黒く汚れた顔でケンカを始めるネルとアベッサの前で、白い煙が徐々に消えてゆく。その先には、先ほどと変わらぬ姿勢と表情のロロリアが立っていた。
「うわあ、やっぱり全然きいてないじゃん」
ネルが苦笑いをするが
「いや、見てみろ」
周囲に再び集まってきた冒険者の一人が声を出す。
皆が見つめた視線の先で、ロロリアの美しい髪が焦げてはらりと地面へと落ちた。
ただそれだけではあるが、それは信じられぬ出来事であった。
「あ、あのロロリアの体にダメージを入れたぞ」
「ただの魔術師が、大魔導士相手に!?」
野次馬達に騒がれる中で、当のロロリアはふっと笑った。
「さっきの言葉、しかと聞かせてもらったわ」
その一言に、何のことかと黙り込んだヴァイス、アベッサ、ネルの三人だったが
「あ」
つい先ほど、彼女の挑発にのって自分達のアイルへの本心を語ってしまったことを思い出した。
「いや、それは」
柄にもなく恥ずかしそうに俯くヴァイスの前に、ロロリアはガラスの靴で近づく。
「私も世間では大魔導士なんて持て囃されているけど、初めて弟子を持って、自分がいかに未熟な人間だったかを毎日痛感してる」
そう話し出す姿は、それまでの刺々《とげとげ》しい態度が嘘のような、本来の穏やかな彼女であった。
「だから、師匠として先輩である貴方達に対して生意気だとは思ったけど、本当の気持ちを聞かせてもらうために、あんなことを言ったの」
「ってことは、今までの言動は演技ってこと?」
拍子抜けしたようにネルの体から力が抜ける。
「確かに、アイルの潜在能力は計り知れない。いづれはその将来について真剣に考えなければならない時がくる」
「そう思ったから、俺達は」
「でも。今の彼には、まだ帰る場所が必要なんじゃないかしら」