とある真相②
「あ、でも安心して」
消沈するパーティーを見下すように、ロロリアはその美しい顔に薄笑いを浮べる。
「彼との契約は、この地域にいる間、荷物の持ち運びをさせるだけ。そうしたら、もう用済み」
「はあ」
何が言いたいのかと、訝しそうな顔をするヴァイス達。
「あんな どんくさい子、雑用くらいしか使い道がないもの」
そんな馬鹿にしたような一言と、ガラスが激しく割れる音がしたのは ほぼ同時だった。
「……どういうつもりかしら」
ロロリアが不機嫌そうに目を細めながらアベッサを睨む。その足元には、壁に当たって砕けたワイングラスが散らばっている。
アベッサがロロリアの顔の真横すれすれに投げつけたものであった。
「あら、ごめんなさい。相手が憧れの大魔導士様だと思ったら手元が狂ってしまって」
答えるアベッサの表情は怒りに震えていた。
「貴女、さしずめ魔術師ってところかしら。そんな下位者が私に……」
「ああ、そうよ! 私はしがない底辺魔術師よ!」
走り出したアベッサが勢いのままロロリアの胸ぐらを掴み、周囲から悲鳴が上がる。
「けどね、あんたよりアイルのことは何倍も分かってんだよっ」
そう怒鳴った声に、彼女達を引き離そうと動き出していたヴァイスとネルの動きが止まる。
「あの子はね、いつでも一生懸命で誰よりも頑張り屋で、剣も魔法もすごい才能の持ち主なんだから!」
ふらついたロロリアとの体が離れたところで、アベッサは胸元から魔法の杖を取り出す。
「私達はね、自分らの食料は削ってでもあの子に食べさせ、欲しい物を我慢しても不自由させないようにしてきた」
その杖に赤い光が集まり出すと、意味を理解した周囲の人間達は慌てて その場から逃げ出す。
「ギルドの中ですよ!」
「こんなとこで魔法を使う馬鹿がいるか!」
職員やヴァイスが叫ぶが、唇を噛みしめるアベッサの耳には入っていなかった。
「あんたにとっては、その辺にいるガキかもしれない。けどね、私達にとっては、世界で一番大切で大好きな存在なんだよ!」
その絶叫と呼応するように、魔法の光は大きくなりロロリアの白い顔を照らし出す。
「止めないところを見ると、他のメンバーの方達も同じ意見なのかしら?」
同じく杖を取り出したロロリアの問いに、ヴァイスとネルも静かにだがアベッサの後ろで頷いた。
「当たり前だろうが」
「アイルを馬鹿にする奴なんて、大魔導士だか何だか知らないけど やっちゃえ!」
そんな二人の応援とともに、アベッサの杖から溢れ出した魔法のエネルギーは正面のロロリア目掛けて繰り出された。