とある真相①
「あら、どうかして?」
椅子が倒れた音で振り返ったロロリアが不思議そうに首を傾げる。
「あ、いや……」
「アイルは、彼等のパーティーのメンバーだったんですよ」
とっさにヴァイス達が誤魔化そうとしたにも関わらず、職員があっさりとそうバラしてしまった。
「ああ、そうなのね」
複雑そうな表情の三人にも、ロロリアは一瞥をくれただけ。
「私が言うのもなんですが、彼は冒険者としても将来有望な子でして」
「そういうの、興味ないわ」
そして、窺うような職員の言葉も素っ気なく切り捨てられてしまった。
「え」
「うちには優秀な弟子がいるの。私は雑用に仕える男の子が欲しかっただけ。使いやすい子なら、別に誰だって構わないわ」
「あ、ああ、そうですね。申し訳ありません」
気まずい職員の愛想笑いに、ロロリアは気怠そうに頬杖をつく。
「ねえ。私、とても忙しいの。手続きはそちらで適当にやっておいてくれるかしら」
「……それは構いませんが、アイル君の給金や食料はどうしますか?」
そんな二人のやり取りを、ヴァイス達は息をつめて見守っていた。
「そんなの必要なの? まあ、最低限でいいんじゃない?」
しかし、ロロリアが面倒そうにそう答えた時
「ちょっと、あんた」
それまで押し黙っていたヴァイスが、背後から声をかけた。
「ヴァイス」
「あんたみたいな大魔導士様は知らないだろうがな、その程度の食料じゃ、育ちざかりの子供には全然足りねえんだよ」
慌てて制止するネルを振り払い、ドスのきいた声が鳴り響く。
「あら、そうなの」
しかし、対するロロリアはちらりとヴァイスを見返しただけ。
「それにな、最低給金なんて奴隷じゃねえんだぞ。衣服や生活用品だって必要だし、少しくらいは好きにできる金を……」
「あなた、アイルの何なのかしら?」
ムキになって言い募るヴァイスに、大魔導士はわざとらしく尋ねてみせた。
「は?」
「私はアイルと契約を交わした正規の雇い主よ。それに引き換え、貴方達は彼のなに?」
「それ、は……」
ずばり聞かれた問いに、答えることが出来なかった。
元々が赤の他人である以上、パーティーを離れてしまえば仲間の縁などは全て断ち切られてしまう。
「無関係なら、余計な口出しはしないでくれる? その権利は、貴方達にはもう無いのよ」
冷たく告げられ、ヴァイス達に言い返す言葉はなかった。
実際、懇願するアイルを追い出したのは、他でもない自分達である事実は変らないのだから。