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ギルドの日常⑥

「『君のことを大切に思うからこそ、このパーティーを卒業するべきだ』と。わざわざアイル君が悲しむ方法を選ばなくても」

「それが出来たら、苦労はしなかったわよ」


それに答えたのは、深いため息をついたアベッサだった。


「と、いうと?」

「あの子は、本当に純粋で優しい心を持った子なの。まして、身寄りのなかった自分を拾ってくれた私達に心から感謝してる」


職員の脳裏には、いつもほがらかに笑ってヴァイス達の後をついて回っていたアイルの姿が浮かぶ。


「“お前の為だ” なんて言ったら、あいつは間違いなく遠慮して俺達の元から離れられなくなっちまう」


ヴァイスの声には信念があり、それはアイルのことを僅かしか知らない職員にも確かにそうだろうと思えた。


「じゃあ、あえて嫌われるために?」

「私達のことを嫌って出て行けば、アイルも後腐あとくされなく新しい道に進めるでしょ?」

「つまりは、心おきなく他のパーティーに入れるように、ということですか」


確かに、アイルでなくても冒険者が別のパーティーに加入する際は、元の仲間に対して罪悪感を感じる場合が少なくないという。

それが、まだ幼い純真な少年ならば尚更なおさらだろう。


「なるほど、事情は了知りょうちしました」


頷いたヴァイスパーティーの面々を見渡した職員は、意外にもあっさりと彼等へそう告げた。


「それなら、早く脱退の手続きを」

「ただ、書類に数か所 不備ふびがあります」

「はあ?」


安堵あんどしたヴァイスは、冷静な突っ込みに出鼻をくじかれる。


「ちゃんと書いただろうよ」

「まず、ここのスペルが間違ってますし、空欄は全て埋めてください。お手数ですが、訂正ていせい印を押して再度こちらの窓口に提出いただければ幸いです」


機械的に頭を下げる職員を、ヴァイスら三人は苦虫をみ潰したような顔で見返していた。

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