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ギルドの日常⑤

信じがたい。いや、絶対にあり得ない。


「仮に、将来大魔導士になる素質を持った人間がいたとしても、半年でそこまでのレベルには達せないでしょう」

「だから、将来唯一の勇者になれる存在だと言ったんだ」


ヴァイスの言葉で、しばらく四人は押し黙った。


「けれど、それなら責任をもって貴方達がアイル君を育てれば良かったのでは?」


将来を見抜いた大人が近くで指導してくれるというのは、才能ある少年の育成環境としてはもってこいだろう。


「あいつは、俺達みたいな凡庸ぼんような冒険者の近くにいていい奴じゃねえ」


そんな疑問をもった職員に、ヴァイスは少し苦しそうに答えた。


「どういう意味ですか?」

「才能のある奴はどこでも頭角とうかくを現すってのは、実際そうだろう。けど、俺達は才能があっても周囲のせいで潰された奴も大勢見てきた」


その意見は、日々多くの冒険者達と関わるギルド職員にも身に覚えのあるものだった。


「俺の親友は、俺よりずっと剣の才能があったのに、家族が冒険者になることを許さなかった」

「私に魔法を教えてくれた人は、世界に出る機会を逃し、今でも片田舎で細々と薬師くすしをやってる」

「私が出会った一番の魔法の才能を持った人は、他人に手柄をゆずってばかりで、いつの間にか表舞台から消えていった」


ヴァイス、アベッサ、ネルが順番に語る体験は、この世界のどこにでもありふれた話でもある。


「優れた冒険者として認められるには、実力や努力に加え、運や周囲の協力も必要ということは分かります」


そう職員が神妙しんみょうに頷いた通り、将来を嘱望しょくぼうされた天才少年も、20歳を越えれば平凡な冒険者の一人なんて話は至るところに転がっていた。


「だから、あいつは一刻も早くこんな底辺パーティーから抜け出して、強い仲間や恵まれた環境の中で成長すべきなんだ」


そう力説された言葉が、彼等がアイルをパーティーから追放した本当の理由のようだった。


「まあ、確かに周囲の冒険者が高レベルなら、彼の為にはなりますが」


相槌あいづちを打ちつつも、職員の表情はどこか釈然しゃくぜんとしない。


「14歳なんて、本来なら一番能力が伸びる時期よ。アイルは ただでさえ剣や魔法を習い始めるのが遅かったんだから、一秒だって無駄にできない」

「けれど、そらならば正直にそう伝えれば良かったじゃないですか」


熱弁するアベッサに、カウンターの向こう側から職員は首を傾げた。

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