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ギルドの日常②

「現在、この世界には10万組ほどの冒険者パーティーがあるとされています。それらは魔物の討伐数や世の中への貢献度によってランク付けされ、全体の半数より上位のパーティーにはランクがつきますが、それ以下は番外として一緒くたとなります。つまりヴァイスさん達のようなところのことですね」


さりげなく悪口を言われ、アベッサが「うっさいわ」と言い返す。


「認可を受けたパーティーのメンバーには、ランクに応じて給与と食料が支給されます。ランクの低い所帯はそれだけではやっていけないので、副業をしたり雑用の依頼をこなして生活の足しにしているようです。あ、よくご存知でしたね」


またも余計な一言にネルに睨みつけられるが、職員は知らん顔で説明を続ける。


「冒険者協会の目的は当然、魔族そして その王である魔王を倒すこと。これは何千年もの人類の悲願ですが、いまだ達成できたパーティーは現れていません。様々な名高い勇者が魔の山へと挑みましたが、魔王の討伐には至りませんでした。それどころか最近では、魔王へ挑む資格である勇者のあかしに選ばれる冒険者さえ出ていない始末。私共としても由々《ゆゆ》しき事態と認識しており、冒険者の皆さまにはより一層のご自覚とご健闘とを期待しております」


ありきたりな言葉で結ばれた講釈こうしゃくがやっと終わり、ヴァイスら三人はホっとした顔となる。


「終わったなら、さっさと手続きしてくれ」


再び提出された用紙を受け取った職員は、さっきまでの饒舌じょうぜつが嘘のように義務的にそれを眺めた。


「脱退したのは、アイル・ネベルカ」


名前を見て何かを考えていたが


「ああ、あの可愛らしいかんじの男の子ですか?」


思い出してそう尋ねた。


「そうだが?」


散々他の冒険者から からかわれたこともあり、ヴァイスがドスのきいた声で答える。


「あの子、目立ってたじゃないですか。最近よく他のパーティーの間でも話題になってたんですよ。なかなか将来有望な少年がいるって」


しかし、そんな脅しは気にせず職員はペラペラと喋り出す。


「ほら、ここ数か月のパーティーの魔物討伐もほとんどアイル君ですよ。いやあ、勿体もったいないんじゃないですか」


そんな言葉に、三人は窓口の前で苛立いらだちに顔をゆがめた。


「今から謝って戻って来てもらったらどうです? この年でこれだけ戦えるって凄いですよ。才能ある若者はどこのパーティーでも引っ張りだこなんですから」

「そんなことは、俺達が一番よく分かってんだよっ!」

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