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秘められた力⑤

視線を感じた時には、振り向いた気味の悪い手が彼女の体へと伸びようとしている。


「あ」


その光景を、動けないまま見つめてしまったセヴィアの耳に


「セヴィアに手を出すなっ」


そんな声とともに、冷たい風が降りかかった。


「うぐっ」


その刹那せつな、床に緑色の粘液ねんえきが飛び散る。

ヘドロの右腕はアイルに真っ二つに斬られ、音を立てて彼の足元へと落ちていた。


「くっ」


最初の余裕は消え去り、少年を見つめる魔物の目は恐怖へ変わってゆく。


「お前は、生かしておけば近い将来必ず魔族にあだなす者となる」


ヘドロが低く くぐもった声でそう告げると、残った二体の人型魔族もその後ろへと集まる。


3対1で敵に囲まれる形となったアイルではあったが、その背中は少しも揺らぐことはなかった。


一瞬の沈黙の後、先に仕掛けたのは魔族側。


見た目からは想像できない素早い動きで突進したヘドロの体に、防御姿勢を取ったアイルは軽々と壁際まで吹っ飛ばされた。


「アイル!」


セヴィアは思わず叫び、魔族がほくそ笑む。


しかし、叩きつけられると思ったアイルの体はひらりと一回転したかと思うと、まるで予測していたかのように壁へと両足裏をついた。


軽やかに壁を蹴り、まるで宙を飛ぶようにその体と剣はいま自分を吹き飛ばしたヘドロへと立ち戻ってゆく。


「なにっ」


それが油断していたヘドロの最後の言葉となった。

光を放つ剣の斬撃により、次の瞬間その胴は二つに切断されていた。


「す、すごい」


唖然あぜんとするセヴィアの前で、ヘドロを撃破したアイルは体を翻し四体目の魔族を水平に斬りつける。そのまま振り上げた剣を上段から斬り落とすと、あっさりと最後の魔族も葬ってしまった。


魔族の体はちりとなって消え去り、アイルの魔法の名残りである白い光だけが午後の日を浴びてきらめく。


その場に残されたのは、剣を鞘に納めたアイルと、座りこんだまま呆然とするセヴィアだけだった。


「あの、大丈夫?」


そんなセヴィアの様子に気づき、心配そうに手を差し出したアイルだったが


「……あなた、すっごいのね!」

「え?」


予想外に元気一杯の声を出されて面くらってしまう。


「どうして最初に言ってくれなかったの、こんなに強いなんて」

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