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とある追放①


 「アイル、お前をこのパーティーから追放する!」


突然ヴァイスに指をさされ宣告された言葉に、アイルは狼狽うろたえた。


「そんな……」


混乱しつつ同じパーティーの仲間であるネルとアベッサへ助けを求める視線を向けるが、二人の女性達もそんなアイルの姿をにらみつける。


「それでいいわ。あー、清々する」

「ってことで、さよならー」


救いの手は差し伸べられず、更に冷淡な言葉が降りかかる。


「お、俺達、5年も一緒に旅してきて、いつか このパーティーで魔王を討伐しようって……」


うるんだ瞳で必死に訴えかけるが、三人の目は素っ気なくらされるだけだった。


「……俺は、このパーティーに必要じゃなかったんですか?」


がっくりと項垂うなだれた体を抱き起す者は、誰もいなかった。


 

 ことの始まりは、10分ほど前。


「誰か、ここに入ってた旅銀りょぎんを知らねえか?」


旅の途中に宿泊した宿で、荷物の中をまさぐっていたヴァイスが苛立った声で皆に聞いた。


「お金?」

「知らないわよ。そういう管理は男の仕事でしょ?」


パーティーは4人組。女性であるネルとアベッサは普段から財布や荷物に触れることはない。

となると、疑惑の目は自然と残ったアイルへと向けられた。


「え、俺? 知らないけど……」


薄茶色の髪と瞳。14歳のまだあどけなさを残す声が、慌てた様子で首を振る。


「はあ? じゃあ、俺が盗んだって言いたのかよっ」


ヴァイスがトランクケースを叩きながら怒鳴り、アイルはビクッと身をすくめた。


「そういう訳じゃ……」

「じゃあ、どういうつもりで言ったんだよ。ああっ?」


ヴァイスは高い身長と隆々(りゅうりゅう)とした筋肉を持つ剣士。短くった金髪と鋭い目つきが特徴の31歳の男だ。


「その、荷物の中にまぎれてるとか、どこかに忘れてきたとか」


弱々しく答える声を、隣でツインテールの髪を払いのけながらネルが鼻で笑った。


「馬っ鹿じゃないの。こんな少ない荷物のどこに消えるっていうわけ?」


美人だが気の強そうな顔をゆがめ、25歳のヒーラーは言い捨てる。


「そういえば、昨日の夜、アイルが何か荷物あさってるところ見たわよ」


横から不愛想に会話に入ってきたのは魔術師のアベッサ。ダークブラウンの長い髪とセクシーなドレスが印象的な27歳。


「はあっ?」

「何してやがった」


ネルとヴァイスに同時に詰め寄られ、アイルは後ずさる。


「それは、薬を探してただけで。昼間の戦闘で怪我をしてしまったから」


そう告げる彼の右腕には、確かに白い絆創膏ばんそうこうが貼られていた。


「そんなの信じられねえなあ」


しかし、追及するヴァイスの表情はますますけわしい。


「でも、本当で」

「はいはい、言い訳おつー」


座っていたテーブルから飛び降りながら、ネルがアイルの声をさえぎる。


「信じてください。俺、絶対にそんなこと」

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