第46話 黒犬と赤毛猫で共闘するぞ
三隻のコルベットが上空で旋回していた。
バッカニア号の突入によって黒煙を上げるアジトを見下ろしながら、モカは眉をひそめる。
「……いない」
団員の一人が言った。
「副団長……団長が……」
「うん」
モカは双眼スコープを覗く。
焼けた建物。
逃げ散る海賊。
しかし――
カタリナもジーナもいない。
それどころか。
「……バッカニア号もない」
団員達がざわつく。
「やばくないですか!?」
「団長、捕まったんじゃ……」
「どうするんですか副団長!」
モカは腕を組んだ。
一分ほど考え――そして。
「……ま、いっか」
団員達が固まった。
「次いこ、次」
「え!?」
「えええ!? 軽っ!」
団員の一人が思わず叫ぶが、
モカはあっさり言う。
「どうせおねーちゃんでしょ?」
当たり前のような顔だった。
(おねーちゃんなら、なんとかしてるでしょ。
それに捕まったなら、たぶん相手がかわいそう)
モカは肩をすくめる。
(ここ全部潰したら、きっとどっかで会うわ)
「よし」
モカは指示を出す。
「この星の海賊、全部掃除する」
「次の標的探して」
「は、はい!」
団員達はまだ不安そうだったが、モカの迷いのなさに押されて動き出した。
一方その頃。
黒犬海賊団の母艦。
ジーナは椅子の隅に座っていた。
背筋を丸め、両手を膝に置き、視線は床。
さっきまでの酔っぱらいとは別人だった。
「……」
「……」
カタリナがじっと見る。
「……」
「おい」
「……はい」
小さな声。
「お前そんなキャラだっけ?」
「……」
ジーナはぼそっと言った。
「酔い……覚めたっス」
「人格変わりすぎだろ」
カタリナが呆れた顔をする。
そこへ。
扉が開いた。
ロウ・ハーランドが入ってくる。
「おう」
気楽な声だった。
「俺たちは次の海賊を潰しに行く」
カタリナを見る。
「お前らはどうする?」
「留守番か?」
ジーナが即答した。
「留守番しましょう、団長。
副団長を待つべきです」
「うっさい!」
カタリナが一喝する。
「行くに決まってるでしょ!」
ロウが笑う。
「そうか、
手伝ってくれるんだな?」
「逆!逆!」
カタリナが指を突きつけた。
「私が制圧するのを、あんた達が手伝うの!」
ロウは一瞬黙った。
そして。
「……そうだな」
肩をすくめた。
「じゃあ手伝うわ」
黒犬の部下達がクスクス笑う。
カタリナは気づいていない。
「よし」
ロウが振り向く。
「出るぞ」
「次は」
「鉄顎アイアンジョー海賊団だ」
鉄顎アイアンジョー海賊団のアジト。
岩山の上に建てられた粗雑な基地だった。
そこへ。
黒犬海賊団が突入する。
「突入!」
銃声が響く。
海賊達が飛び出してくる。
その瞬間。
「そこだ!」
カタリナが飛び込んだ。
双剣が閃く。
一瞬で二人倒れる。
「おいおい」
ロウが笑う。
「早すぎだろ」
「あんたが遅い!」
カタリナが叫ぶ。
次の敵へ突っ込む。
その横を。
ロウが滑るように抜ける。
銃撃。
三人倒れる。
カタリナが振り向く。
「あー!!私の獲物!」
「知らねぇよ」
ロウが笑ってレーザーブレードを起動する。
次の瞬間。
二人同時に突っ込んだ。
刃が交差する。
海賊が吹き飛ぶ。
黒犬の部下が呟く。
「……息合ってね?」
「合ってんな」
「団長とあの赤毛」
一方その後ろ、
ジーナは岩陰にしゃがんでいた。
「……」
弾が飛ぶ。
「ひっ」
ジーナが小さく声を上げる。
黒犬の団員が言う。
「おい大丈夫か」
「だ、大丈夫っス」
涙目で強がる。
「……団長の後ろに隠れてます」
カタリナが振り向く。
「なんで私の後ろなんだよ!」
「一番強い人の後ろが安全っス」
「まぁそうだけど!」
ロウがさらに突っ込むと、
対抗してカタリナも突っ込んだ。
「あーあー!待ってくださいっス」
・ ・ ・
戦闘は五分もかからなかった。
鉄顎海賊団は簡単に壊滅した。
カタリナが肩を回す。
「ふー」
ロウが笑う。
「悪くねぇな」
カタリナが言う。
「でしょ?」
少しだけ。
戦友のような空気が流れた。
鉄顎海賊団のアジトが制圧されると、
黒犬海賊団の部下たちが慣れた手つきで残党を縛り上げていった。
ロウが肩を回す。
「次行くか」
カタリナが腕を組む。
「次は?」
ロウが地図を開いた。
「近いのは――」
指で示す。
「赤牙レッドファング海賊団」
ジーナが小さく言う。
「……強いっスか」
カタリナが振り向く。
「なんだよ。怖いのか?」
「……お酒ないんで」
「それ関係ある?」
ロウが笑う。
「まぁいい」
「行くぞ」
・ ・ ・
赤牙海賊団アジト。
山肌に張り付くような基地だった。
ロウたちは身を低くして、
岩場の陰を伝いながら近づく。
少し離れた場所にある見張り所では、
海賊三人が岩陰に腰を下ろし、
缶ビールをもってサボろうとしていた。
「暇だな」
「マジでな」
「警備とか意味ねぇ」
その時。
怯えながらカタリナの後ろにいたジーナの目が光った。
「……」
缶ビール。
三本。
ジーナの視線が固定される。
「……」
次の瞬間。
ダッ!
一瞬で三本の缶を奪った。
三人の海賊が固まる。
「……え?」
ジーナが缶を開ける。
ぷしゅっ。ぷしゅっ。ぷしゅっ。
そして――
ぐびぐびぐび。
三本連続一気飲み。
「ぷはぁぁぁぁ!!」
目が輝く。
「エネルギー充填!!」
カタリナが言う。
「あ、復活した」
ロウが呟く。
「目つき変わったぞ」
ジーナが据わった目で海賊の方を向いた。
警備の海賊が慌てて銃を抜いてジーナに向けた。
「敵か!?」
ジーナはふらふらしている。
「よぉし、やる気出た」
その瞬間、見張り三人の銃を一瞬で奪い取る。
「え?!」
驚く海賊を無視して、ジーナが叫んだ。
「行くっスよぉぉぉ!!」
奪った銃で海賊二人の顎を殴り、失神させ、
瞬時に回し蹴りで三人目も吹き飛ばした。
そして敵基地に向かって駆け出す。
慌てて海賊達が迎撃に出た。
ダダダダダダダ!
手振れ二丁拳銃。
めちゃくちゃな射撃。
だが――
敵が次々倒れる。
ロウが呟く。
「……当たってる」
カタリナが笑う。
「酔うと強いんだよこいつ」
ジーナが叫ぶ。
「うひゃっはぁぁ!!」
カタリナの方を向いて親指を立てる。
「飲酒戦闘最高っスぅぅぅ!!」
残りの海賊が逃げ出す。
三つ目の拠点も、あっという間に制圧された。
ジーナが缶を掲げる。
「団長ぉ!」
「もう一本ないっスか!」
カタリナが指をさす。
「そこに落ちてる」
「神!」
ロウが苦笑した。
「……お前ら。
強いな、海賊だよな?
あのコルベットにも髑髏旗あったしな」
カタリナが言う。
「そうだよ」
そして笑う。
「最強の海賊団、赤毛猫海賊団!」
「赤毛猫海賊団……」
ロウは記憶を探るように考え込んだ。
やっほー!銀河一美しくて、今ちょっとだけ戦友(?)ができたカタリナ団長だよ!
第46話、読んでくれた?
もう、突っ込みどころが多すぎて私の猫耳が忙しいわよ!
まずはモカ!
あんた、実の姉と部下が行方不明なのに「ま、いっか」で済ませるってどういうこと!?
……まぁ、私への絶対的な信頼(?)があるのは認めてあげるけどさ。
でも、せめて一分くらいは心配してくれてもバチは当たらないんじゃない?
「捕まった相手がかわいそう」って、失礼しちゃうわね!正解だけど!
そして、黒犬海賊団のロウ!
あいつ、なかなかいい動きするじゃない。私が一人で片付けるって言ってるのに、勝手にサポートしてくるんだから。部下たちが「息が合ってる」なんて言ってたけど、あれはあいつが私のスピードに必死についてきてるだけなんだからね!勘違いしないでよね!
それにしても、ジーナよ……。
あんた、シラフの時のあの「借りてきた猫」状態、なんなのよ!「一番強い人の後ろが安全っス」って、私の背中を盾にするんじゃないわよ!
でも、ビール一本(正確には三本一気)で「飲酒戦闘モード」に切り替わるって、見てて面白いからあいつのことは嫌いになれないんだよな。
敵の銃を奪って顎を殴るなんて、私好みの暴れっぷりじゃない!
やっぱり赤毛猫の団員は、こうでなくっちゃね。
さて、ついに名乗っちゃったわ。
「最強の海賊団、赤毛猫海賊団!」ってね。
ロウのやつ、なんだか考え込んでたけど、私たちの悪名(?)がそんなに響いてるのかしら?それとも、あまりの美しさにビビっちゃった?
モカたちは着々と海賊を掃除してるみたいだし、私もこのまま黒犬たちを「手伝わせて」あげて、この星系をメッタメタにしてやるわ!
次はどんな「お掃除」が待ってるのかしら。
みんな、私の大活躍を楽しみにしててね!
じゃあ、また次の戦場(あるいは飲み屋)で会おうね!




