第45話 黒犬海賊団と出会うぞ
銃口が、ゼロ距離で突きつけられていた。
囲んでいるのは黒泡海賊団。
人数、圧倒的。
逃げ場、なし。
――普通なら、完全なチェックメイトだ。
だが。
「……あ~」
ジーナが、ふらふらと手を上げた。
「団長のせいで、捕まっちゃいましたよぉ」
「お前のせいだろ!!」
カタリナの怒鳴り声が、妙に場に響いた。
「な、なんだこいつら……」
「銃突きつけられてんだぞ?」
海賊たちが困惑する中、カタリナは腕を組んだ。
「人質?」
鼻で笑う。
「私達を人質だなんて、頭のネジ緩んでんな、お前ら?」
「団長~」
ジーナが臭い息を吐きながら言う。
「この状況で虚勢張る方が、頭のネジ緩んでるっスよ。うぇっぷ」
「うるさい!
あんたのせいで捕まったんだからな!」
カタリナは一歩前に出た。
「ほら、逃げるから
例の“あの秘密兵器”使え!」
「おい、いい加減人質は黙ってろ!」
「うるさい!
こっちは今、取り込み中だ!」
「な、なんだこいつら……」
「緊張感なさすぎじゃね?」
ジーナが首を傾げる。
「あの秘密兵器って、なんスか?」
「あの、くっさい奴だよ!」
「あぁ~……」
ジーナが納得した顔をする。
「団長、乙女に人前でゲップしろって言うんスか?」
「さっき私の前でやっただろうが!」
「ん~……待ってくださいねぇ……」
ジーナが深呼吸する。
「……やっぱやるんかよ!」
カタリナがツッコミを入れる。
「縛れ!もういい、縛っちまえ!」
「はぁ……」
ジーナが首を振った。
「弾切れっス。
でません」
「おい!!」
海賊達がカタリナとジーナの腕を掴み上げようとした、
その瞬間だった。
「――おっと」
低く、落ち着いた声。
「レディに、なんてことするんだ」
次の瞬間、
黒泡海賊団を囲むように、別の銃口が一斉に突きつけられていた。
動きが揃い、無駄がない。
「……ん?」
カタリナが、胡散臭そうに目を細める。
前に出た男が告げた。
「死にたくなければ銃を捨てろ」
間を置いて、名乗る。
「俺たちは
黒犬海賊団」
一拍。
「ロウ・ハーランドだ」
その名を聞いた瞬間、
黒泡海賊団の顔色が変わった。
「……ブラックハウンド!?
賞金稼ぎの?!」
銃が、次々と地面に落ちる。
抵抗はなかった。
力量差は、一目で分かる。
ほどなく基地は制圧され、黒泡海賊団は拘束された。
「海賊達は役人に引き渡せ。
懸賞金はいつも通りだ」
部下たちが動き出す。
ロウは改めて、カタリナとジーナを見た。
「災難だったね、お嬢ちゃん達。
もう大丈夫だよ」
「……」
一瞬の沈黙。
「誰も助けろとは言ってないけど?」
カタリナが平然と言った。
ロウが眉を上げる。
「あと三秒で、秘奥義を使って
全員倒す予定だったんだから」
「秘奥義?」
ロウは肩をすくめる。
「すげーな。
いやぁ、わりぃわりぃ。邪魔したな」
完全に、馬鹿にした口調だった。
カタリナの猫耳が、ぴくりと跳ねる。
「……」
「ジーナ」
「はい?」
「秘奥義。
こいつにゲップを食らわせろ」
「団長、命の恩人にそれやる?」
「……ちっ、役に立たんな」
カタリナはロウを睨んだ。
「おい。
こいつらは私達の獲物だったんだ」
「ん?」
ロウが首を傾げる。
「あんたらも賞金稼ぎか?」
「ちが――」
言いかけた瞬間、
ジーナが素早くカタリナの口を押さえた。
「そうっス!」
満面の笑み。
「仲間とはぐれちゃって困ってたんス。
うちのコルベットもこの通りボロボロで、
修理が必要でして。
助けて欲しいっス」
「おい、ジーナ」
「団長、今は黙っとくっス」
小声で続ける。
「こいつら使って、副団長と合流しましょうよ。
頭脳派海賊は、使える奴は使うっス」
「……頭脳派……」
カタリナが少し考えた。
「……それもそうか」
顔を上げる。
「よし。
おい、聞いた通りだ。助けろ!」
「……」
ロウは一瞬、黙ってから苦笑した。
「なんでそんな上から口調なんだ……?
まぁいいけどよ」
肩をすくめる。
「面白いから、拾ってやる。
で、その仲間はどこにいるんだ?」
「分からないけど、この星の海賊を全滅させる予定だから
そのどこかには居ると思う」
カタリナが不愛想に伝えた。
「そうか。俺達もここの一掃を狙ってる。
いずれ鉢合わせるかもな。ちょうどいい。
乗せてやるよ」
「ありがとうっス。
あのぉ……。あのコルベット修理したいんで曳航してほしいっス。
特注品なんで……。」
「あぁ……めんどくさいな、いや、いいよ。
引っ張ってってやるよ」
「うひゃぁ!最高っスね。
ロウ……ハー……ハー?」
「ロウ・ハーランドだ」
「よろしくっス、私はジーナ。
こっちは団長のカタリナっス」
「あぁ、よろしくな」
(……私の悪党センサーは反応しない。
こいつら……小悪党みたいな顔して海賊名乗る割には
悪党じゃないのか)
こうして――
カタリナ達は、黒犬海賊団ととりあえず合流することになった。
やっほー!銀河一美しくて、今ちょっとだけ機嫌が悪いカタリナ団長だよ!
今回の第45話、どうだった? 絶体絶命のピンチ……に見えたかもしれないけど、私からすればあんなの準備運動にもならなかったわよ。
なのに、何なのあの雑魚どもを蹴散らして出てきた「黒犬海賊団」とかいう奴らは!
特にリーダーのロウ・ハーランド! 「もう大丈夫だよ、お嬢ちゃん」だなんて、どの口が言ってるのよ!私の猫耳が屈辱で震えちゃったじゃない。あと3秒あれば、私の秘奥義で全員メッタメタのギッタギタにする予定だったんだからね!
え?「秘奥義ってジーナのゲップだろ」って? ……まぁ、それも一つの戦術だけどさ。でも、あいつ肝心な時に「弾切れ(出ません)」とか言って役に立たないんだもん!本当、教育がなっとりませんわ。
でも、まぁ、今回はジーナの「酔っ払い頭脳」に免じて、あいつらに乗っかってあげることにしたわ。 何しろバッカニア号(中破)をタダで曳航してくれるって言うし、モカたちと合流するのにも好都合でしょ?賢い私には、こういう「使える奴は使う」っていう柔軟性もあるのよ。フフン。
それにしても、私の悪党センサーが、あのロウって男には全然反応しないのよね。海賊を名乗る賞金稼ぎのくせに、中身はただの「お人好し」って感じ。……あー、一番苦手なタイプだわ。
さてさて、このまま「黒犬」に飼われたフリをして、モカと合流したらどうしてやろうかしら。 やっぱり、この星系の悪徳公爵も、この生意気な賞金稼ぎも、まとめてエンジェル・メッタメタ号のサビにしてやるのが正解よね!
みんな、私の「人質」作戦がどう転ぶか、楽しみにしててね! あ、感想とか「カタリナ様ならもっと酷い目に合わせてやれ!」っていう応援メッセージも待ってるわよ!
じゃあ、また次の冒険(お引越し下見)で会おうね!




