第38話 弩級戦艦、また奪っちゃっていい?
ミネは再びガスマスクをかぶると、メインコンピュータを操作して空気の流れを操った。
マルザン製強烈睡眠ガスがニァラティールの艦内全てに放出された。
カタリナやサクラモカも含め、ミネ以外の全員を対象にしていた。
徐々に艦内にガスが広がっていく。
一方、その頃カタリナは……。
艦内の天井近くの排気管から少し色の付いた空気が流れ始めたのを見て、ミネが実行に移したと判断した。
ただ負けっぱなしなのは悔しい。
だから皆が眠る前にレティだけは倒しておこうと考えた。
実はカタリナは魔剣エグゾ・ヴェインをズボンの中に隠していた。
今辛うじて、お尻の部分、パンツに引っかかっていて、後ろ手に縛られたままでも届きそうだった。
小声でレティに話しかけた。
「ねぇ、レティ。実は………うんこ我慢してたんだ。でも縛られてたから……漏らしちゃった。」
「はぁぁぁぁ?!」
レティが慌ててカタリナのお尻をみると不自然に膨らんでいる。
「はぁあぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!?信じられない!!はぁぁ!!!うえぇぇぇぇ!?」
目を背ける。その瞬間にパンツの中からエグゾ・ヴェインを取り出して起動する。
ライバル心を吸収して強化されたへにょへにょの赤い刃が立ち上り、カタリナを縛っているロープごと焼ききった。
そして魔剣を片手に立ち上がり、勢いよく振り切った!
驚きながらも、天才美少女?剣士、レティはすぐに反応!
双剣で受け止めるが、そのレーザーナイフの二本の刃ごとエグゾ・ヴェインが叩き切った。
「えっ?!えぇぇぇ!?」
レティの目が点になる。だが、剣を振りきったカタリナが、そのまま大の字に倒れる。
「な……武器を隠し持っていやがった。しかもなんだ、これ?!
レーザーナイフが二本同時に刃を断ち切られた!?
……で、しかもなんで、こいつ失神してんの!?」
レティが驚いている……が、その時。
ぱさっ!
カタリナに断ち切られたレティの服が真っ二つになって開いた。
そしてキャミソールが分裂しそうになる。
「きぁあぁあ?!」
慌てて手で押さえて防いだ。
しかしその時、時すでに遅し。いつしか睡眠ガスが回って意識を失った。
レティは絶壁ポッツンを晒したままカタリナの胸に顔をうずめる形で崩れ落ち、眠りに落ちた。
周りもほぼ同時に、団員、対賊陸戦隊、全員が意識を失った。
お陰様でレティは見られずに済んだわけだが。
ニァラティールはミネ以外、眠りに落ちた。
「最大の秘策、見せてあげるわ!」
ミネが再び、メインコンピュータにハッキングを始めた。
この秘策……カタリナのおかげでミネは思いついた。
前回、弩級戦艦を強奪した時のこと、皆さまは覚えておられるだろうか。
そう、あの事件のことである。
「カタリナ様、あなたの無茶苦茶な行動がこの弩級戦艦強奪の秘策になりました。
全く笑えますよ。……絶対お父さんなら大笑いすると思います。
『お嬢様、最高傑作のサプライズにございます!』って。
まさか目の前で消えるとは思いませんよね?
ディラマの……み・な・さ・んっ!!!!」
ミネは、カタリナウィルスでハッキングして、緊急FTLジャンプを起動させた。
艦内に赤ランプが点灯。そして弩級戦艦ニァラティールは60隻の艦隊が見守る中、粒子状に分解されて緊急ジャンプによって、消え失せた。
ディラマ艦隊の艦長達が激しく動揺した。
白兵戦に勝利し、海賊団を全員捕縛、そして現在海賊の弩級戦艦を接収している最中であると報告をうけていた。勝利間際の旗艦ニァラティールが、海賊の弩級戦艦を残して、緊急FTLで消え失せるなどと誰が想像できただろうか。
提督不在の中、艦長達はただただ狼狽するしかなかった。
自爆警告が鳴り響くポンコツ見掛け倒しネコパンチ号の中ではエルジェン中将達が、おもちゃの宝(動揺しすぎて真贋見分けがついていない)を極力たくさんポケットに詰め込んで、押し合い圧し合い、出口に向かって進んでいた。急に進みが止まる。
「こぉらぁ!!早く進めぇ!!!自爆に巻き込まれるだろうが!!!」
エルジェン中将の悲痛な叫びが警告音の中、響き渡る。
「接続装置が………切り離されています!!!閉じ込められましたー!!!」
前方の兵士の返事が返ってくる。
兵士達は皆、呆然とした。
カウントダウンが始まる。
30、29、28………
「あぁ…ママぁ………。」
エルジェン中将が大粒の涙を流して、弱音を吐いた。
10、9、8、7、6、5……
「うわあああぁぁあああああああああああ!?」
中将、他、兵士達が叫んだ。
3、2、1、0
皆が目を瞑る。
−1、−2、−3、−4、−5……
カウントが続いた。
ゆっくりと目を開ける。
「……たっ助かった……。だっ騙したなぁ!?」
・・・
・・
・
ニァラティールは隣の星系の不毛惑星EE-108Mの衛星の陰にワープして現れた。
さすが弩級戦艦、色々な機器に細かなエラーが多数発生しているようだが、そのまま航行は可能そうだった。
ミネは所有者名義とシステムの管理者権限を赤毛猫海賊団に切り替えた後、人工知能を再起動して、自己修復とエラー回復を命じた。
そして睡眠ガスの排出と空気の浄化・入れ替えを実行させた。
ミネは眠っているディラマ兵を全員縛り上げていった。
そして海賊団の皆が捕縛されて、そのまま眠っている広間に向かう。
ディラマ兵と同じく対賊陸戦隊も縛り上げた。
「あ……居た居た。レティさん……。お疲れさまでした。あなたにはお礼を言わないと。」
ミネがレティとカタリナを見つけて近づいていく。レティは眠りながら苦しそうだった。
カタリナの胸の谷間に顔をうずめて呼吸がしにくそうだった。
レティの顔を引き剥がしてロープで縛り上げた。
「ぷはぁ・・・はああ・・・かふっかふ」
レティはようやく呼吸が出来たようで、苦しげに咳き込んでいた。
「………。もしかして睡眠時無呼吸症候群ですか?
後で名医を紹介しないといけませんね。」
敵兵を、全員眠った状態のまま縛り上げると、今度は赤毛猫海賊団の団員達を平手打ちで起こし始めた。
ぱしんっ!!「ぷへっっ!」
皆、顔をしかめながら目を覚ます。
も……もうちょっと優しく起こしてほしい。皆がそう思ったようだ。
起きた団員が、他の眠っている団員を起こしていく。
こうして赤毛猫海賊団は弩級戦艦ニァラティールを完全制圧した。
ミネがサクラモカをペチペチと叩いて起こす。
「ン……あ。ミネ……。ということは……成功?」
「えぇ。大成功です。
今、レティさん以外の敵兵を団員に命じて、全員脱出ポッドに詰め込んでいるところです。
生体探知機でちゃんと探したので、間違いなく全員です。
彼らを、星系要塞に向けて打ち捨てたら、完全達成です。」
「ミネっ!凄い!!凄いよ!!!コタに負けてない!!!さすがミネ!!」
「ふふふ。ありがとうございます。」
「あ?おねーちゃんは?おねーちゃんに勝利宣言をしてもらわないと!」
「それが……。」
実はカタリナを起こそうとして何度も平手打ちした。だが目を覚まさなかった。
どうやら寝ているわけではなく………。近くに落ちている魔剣エグゾ・ヴェインを見て悟った。
これ、一日ぐらい失神してるやつ。
「……。モカ様、仕方ないのでモカ様が勝利宣言をお願いします。」
「いや、今回はミネ、あんたがやりなよ。これはあんたの勝利だよ!」
「いえ、さすがにそういう柄では・・。では、モカ様と二人で。」
サクラモカはミネと目を見合わせてニッコリと笑いあった。
先に大声で叫んだ。
「みんなー!!!ありがとぉぉぉぉ!!!みんなのおかげでこの船を~~!!!!ゲットだぜ!!」
そしてミネの方を向き、ミネも頷いた。
「私達の―――勝利ですっ!!!」
「おぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!!!」
赤毛猫海賊団300人が飛び跳ね、大歓声を上げた。それはまるで銀河に轟くかのようだった。
カタリナ……勝利宣言の機会を逃す。
「で……、なんでレティを残したの?」
「あ、いえ、今回は協力していただいたので、目を覚ましたら、また料理をご馳走したいと思いまして。
解放はその後でもいいかなと。
さすがにぎゅうぎゅう詰めは可愛そうなので今度はちゃんとリゾート地に下ろしてあげましょう。」
「そうだね。よし、みんなクラーニャ星系基地に向けて、発進!!!」
ついに赤毛猫海賊団は2隻目の弩級戦艦を手に入れた!
…ここまでお読みいただき、ありがとうございます。執事補佐のミネ・シャルロットです。
どうでしたか?私のサプライズは。
この作戦を成功させるには、カタリナ様のあの**「ポンコツ見掛け倒しネコパンチ号」の存在が不可欠でした。あの船を張りぼてにしたメガキャノンでディラマの注意を引き、レティさんを使って白兵戦の敗北を演出、そして最後に、あの緊急FTLジャンプ**で船ごと消える。
あの時、お父さんが大笑いしながら、私に**「お嬢様、最高傑作のサプライズにございます!」と言っている姿が、目に浮かびました。
そして、カタリナ様。
最後に、レティ准将を倒すための**「うんこ我慢」と《エグゾ・ヴェイン》の使用。あれは、私の想定をはるかに超える蛇足な一手でした。 …そして、レティ准将に申し訳ないのですが、その結果、彼女の無呼吸症候群**も判明しました。後で名医を紹介しておきます。
カタリナ様は、自らの蛇足の一手のせいで、失神していたため、勝利宣言の機会を逃してしまいましたが、自業自得ですね。
私たちは、お父さんの遺志を継ぎ、そして、私たち自身の物語を紡ぎ始めました。
この勝利は、新たな伝説の始まりです。
…このサプライズに驚かれた方、ぜひ感想を教えてください!
では、また次話でお会いしましょう。




