43:その後 ~グレン~
「ぬぁぁぁぁぁ、まったくなにやってんだシカさんは!」
儂はガブに用事があってボルケーノを訪れたついでに、クインが最初に過ごしたユノクの町まで様子を見に来ていた。
冒険者を装ってコッソリと様子を見て帰るつもりだったのに、町に入った瞬間思い切り吹いた。
何故かって?
指名手配所が張ってあったんだよ!
『光り輝く桃色の聖女』ってなんだよ・・・
幸い他の皆の指名手配所は無かったからまだいいようなものを。
なんでシカさんだけ・・・
おかしいな、シカさんはユノクには来てないと思うんだがな。
思わずじっと眺めていたら声を掛けられた。
この指名手配所はガルドが発行した物で躍起になって探しているのだとか。
そのせいでガラの悪い冒険者や賞金稼ぎも出切りするようになってしまっているから気をつける様にとの事だった。
なるほど、ガルドか。
それにしても、この町は白熊町長が管理していて門番なんかも要るとクインには聞いていたけど、見当たらないよな。
儂すんなり中に入れたし・・・
まぁどうこうしようって気も無いから放っておくけども。
町中をぶらついてみるけど、人族が増えている。
うん、これはクインには伝えずにおく方が良さげかな。
自分で空を飛べるようになってから、時々コッソリではあるけどヴァルやボルケーノには言っている。
まぁ農作物の輸入やモンスター素材の輸出とか交易目的ではあるけども。
バハ様やデューンには「何も自分で行かなくても」と言われるが、他の人に任せると時間も掛かるしね。
それにたまには息抜きがてら空を飛ぶのもいいもんだ。
皆が魔国にやって来てから随分と年月が過ぎたと思う。
時間の感覚が曖昧になってるんだよね。
なんせ魔王なんてもんに進化?したもんだから、儂かなりのご長寿になるらしいんだよ。
て事は必然といつか皆を見送る日が来るんだよな。
そう思うと少しばかり寂しい気もするが仕方がないかな。
本来ならこうやって一緒に過ごす時間なんて無かったはずだったのを強引にイシュカ神に承諾させたからね。
だからこの時間は存分に楽しみたいと思う。
シカ「姐さん姐さん!ヘールプッ」
グレ「なんだどうし・・・ ぶっ」
駆け込んできたシカさんの尻にはサイコトリアのでっかい版『ムッチュール』が張り付いている。
おかしいな、ムッチュールはレアでそう簡単に見つかる物じゃないはずなんだがな。
グレ「なにしてんの?・・・」
シカ「いやね?
森に置いた原木マシュルンの様子見に行ったらね?
ぬかるみでコケたらパクッとされてね?・・・」(汗)
グレ「だからって尻にくっつけたまま帰ってくるなよ・・・」
シカ「離れないんだもん!」
グレ「ボブはよ?」
シカ「ボブはもっと大変な事になって身動きが取れないのよ・・・」
やれやれ・・・
まずがシカの尻に吸い付いてるムッチュールを引きはがした。
どうするこれ、そこらに投げ捨てて繁殖されても困るしな。
取り敢えずマジックバッックに放り込んで置く。
シカさんに案内して貰いボブの所へ行ってみれば・・・
グレ「ぶぅっ」
シカ「ね? 大変な事になってるでしょぉ?」
グレ「確かにこれは大変だね・・・」
ボブ「姐さん!助けてー!!」
3本のムッチュールに吸い付かれている。
何処にとは言えない・・・
グレ「ボブ・・・
1,2の3で引きはがすけどちょっと我慢して?」
ボブ「わ、わかったよ!僕頑張る・・・」
グレ「1,2・・・べりっ」
ボブ「いーーっ、たぁぁい!!
酷いよ姐さん! 2で引っ張ったじゃないか!」
グレ「身構えると余計に痛さが増すんだよ!」
サテ、このムッチュールもマジックバックへと放り込んで置いて。
なんでこんなに固まって生えてたかね?
グレ「まぁ一応はレアだから早々遭遇はしないだろうけど
気を付ける様に・・・」
「「はーい」」
城に戻って仕事を再開する。
デスクワークが苦手な儂はバルドルくん達にほぼ丸投げしているのだけど、多少は儂が目を通さないといけない物もあるんだよね、めんどくさっ。
どれどれ・・・
えーと、ポートリオとアーリオで人族の貴族が暴れてるから助けて欲しい?
知らんがな・・・、いや待てよ?
ムッチュール2本ずつ植えてくれば面白い事になるんじゃね?
一応植物ではあるけど生命力強いし駆除するのも大変だし?(ニヤッ)
早速フレイヤさんにお願いすると増やしてもいいのかと聞かれたので存分にやっちゃってと答えておいた。
次はラーヴァの町でフェニックスが誕生したので保護して欲しい?
フェニックス誕生って・・・これは放置出来ないからイフさんにお迎えに行って貰おうかな。
連れ帰って貰ってみれば、ポケ〇ンに出て来そうな炎を纏ったヒヨコがイフさんに抱えられていた。
なにそれ、可愛いんだけども?
イフさんも気に入ったみたいで自分が世話をすると言ってきたので任せる事にした。
とは言え結局は皆可愛いからアレコレ世話焼きたがったんだけどね(笑)
ある日のんびりと窓から外の景色を眺めながらお茶を飲んでいた。
たまにはこういう時間もいいものだ。
と思っていたのに儂の視界にモクモクと煙を上げるシカさんの家が・・・
思い切り茶を吹いた。
いやだって煙突から煙が出てるとかじゃないんだよ、窓から玄関からとアチコチから煙が出てるんだよ。
なにやってんだよシカさん!と思っていたら玄関からボブとカズラが走って出て来た。
その姿を見て再び吹いた。
カズラの頭の毛が無くなっている・・・
アリ「グレン様、何度もお茶を吹いてらっしゃいますがいかがなさ・・・・」
キャァーと叫びながらアリアンはカズラの元へと飛んで行った。
まぁそうなるわな・・・
儂も気になるので行ってみた。
グレ「ちょ、カズラその頭どうした」
ズラ「どうしたもこうしたもねぇよ!
シカんとこから煙がモクモクなってるから様子見に来たら」
ボブ「シカったらパイ焼いてるの忘れて焦がしちゃったんだ」
サン「慌てて取り出したけどばぁちゃんたらミトン忘れて素手でさ・・・」
イザ「熱いと手を放したら見事なまでに鉄板がカズラの頭に・・・」
グレ「ぶっ・・・」
クイ「ジューッっていい音が・・・」
ズラ「年取ってまでこうなるとか勘弁してくれよ!」
シカ「すんまそん・・・」
グレ「取り合えずシカさんキンキラで治してさしあげろ・・・」
シカ「あぃ・・・」
ズラ「火傷は治っても毛は生えねぇんだよ!」
何年経ってもシカさんは相変わらずなようだった。
そして話に聞いていた通り被害者は毎回カズラだった。
ちょっと可哀そうな気もするが、狙ってやってる訳ではないらしいのでどうにもならない気がする。
いっそカズラは常にヘルメットでも被るかと提案した事もあったのだが、蒸れて禿そうだから嫌だと言っていた。
ボブはカズラの為に調薬スキルを活用して毛生え薬の研究をしているのだとか。
頑張れボブ、それが完成したらきっと需要は多いはず・・・
後どのくらいの時間、皆共に過ごせるのかは解らない。
なんせ皆見た目にはほぼ変化がないからね。
いつ皆との別れがやってくるのかは解らないけど、それまではずっとこんな感じの日々が続くんだろうな。
最初はなんで儂等がこんな目にとか思ったけど。
特に儂なんかパラレルの儂まで巻き込まれたけども、今こうやって楽しく過ごせるからまぁよしとしようかな。
ズラ「痛ってぇぇぇぇ」
シカ「ご、ごご、ごめーんっ」
イザ「今のはシカが悪い!
シカ「わざとじゃないんだってばぁ」
グレ「・・・」
やれやれ、昔を懐かしむ事もできやしねぇ・・・
まぁこれが儂等らしいのか、たぶん。
~ END ~
この話はこれで終わりとなります。
またどこかの作品でひょっこりこのメンバーが出るかもしれませんが、
見かけたら「またやってる」と笑っていただければと思います。
最後までお付き合い有難うございました。




