11:現状把握をしてみよう ~グレン~
パンッ バシャッ
全身に衝撃が走り意識を取り戻した。
なんだ? 何が起きた? 此処は何処だ。
ハッ
そうだよ儂 狭間から落下して・・・
「普通にサクッと転送させt・・・ グボッ」
叫びかけてガバッと口から空気が流れ出た。
へ?
待って、ここ水中?!
慌てて口を押えるも時すでに遅し。
息苦しくなっても額が上手く動けない。
ヤバイ、窒息する溺死する。 ガボガボボコッ
儂は再び意識を失った。
「んがぁっ」
大きく息を吸い込むと変な声が出て意識を取り戻す。
息が出来る。よかった。
どうやら儂は今フカフカなベットに寝かされているようだった。
誰かが助けてくれたのだろうか。
「気が付いた?よかったわ」
声が聞こえた方を見れば綺麗な笑顔の人魚が居た。
人魚って実在したんだ、違うここ異世界だった。
人魚も存在する世界なんだろう。
・・・
人魚?! ということは水中?
「空から真っ逆さまに落ちてくるんですもの。驚いたわ」
空?! 空から落ちて来たの?!
ああ、でも確かに落下したわ、フリーホール並みに・・・
よく生きてたな・・・ってそうじゃない。
まずは助けて貰ったお礼言わないと。
「助けていただき、ありがとうございます」
ぺこりと頭を下げると人魚は優しく笑った。
「マナよ。 ここは私しか住んでいないから怪我が治るまでゆっくりして行って」
怪我?・・・
自分の体を見てみれば・・・おぉぅ。あちこちと包帯が巻かれている。
水面で打ったのだろう、嫌な音も聞こえたし。全身打撲だろうか。
身動きが出来そうにない。
なのでマナさんの言葉に甘える事にした。
「すみません。グレンと言います。
お手数おかけしますがお世話になります」
「困った時はお互い様よ? 気にしないでね」
マナさんはそう言ってくれた。
早々に人様に迷惑かけるとか、申し訳ない。
せめて転送でそっと降ろして欲しかったぁー!
それから約2週間
儂は骨折もしていたようで、ベットの上での生活を余儀なくされた。
すっかりお世話になってしまい、非常に申し訳なく思う。
その間に判ったのは、ここは人魚の住む島である事。
意外にも水中生活ではなく、水辺であれば陸上生活も可能なのだとか。
ただずっととは行かない様で1日の内数時間は水中に潜るのだそうだ。
島にはマナさん以外の人魚やマーマンも住んでいたが皆優しかった。
怪我の様子はどうだとか、食べ物は足りているのかとか。
時々顔を見せに来てくれていた。
マナさんはこの島で星読みと呼ばれる呪術師のような占い師の様な存在らしい。
元の世界で言う巫女さんとかそういった感じだろうか。
星の動きを読み取って天候を伝えたり、海の中の豊漁ポイントを見つけたりするそうだ。
そしてここ数百年で人間の気質が荒くなっていたり横暴になっていたりでどの種族も困っているのだとも教えてくれた。
勿論すべての人間がって訳ではないらしいけども。
人魚やエルフは数が少なく、中でもダークエルフは希少種だから気を付けてねとも言われた。
そう、儂はダークエルフを選んでいた。
各ゲームでダークエルフの選択肢があればそれにしていたし、無くても赤褐色や小麦色の肌を好んでいたから。
ホワイトブロンドの髪に真紅の瞳のダークエルフ それが儂だ。
まさか希少種だなんて思わなかったし・・・。
「人魚もエルフもヒューマンが愛玩ペットとして捕まえているのよ・・・」
あー・・・、エルフも人魚も美麗だもんね・・・。
ダークエルフはヴァル大陸の奥深くにある集落からめったに出る事が無く、数そのものも少ない。
だから捕獲もされにくいけど、それ故に希少なのだと言う。
だから私の存在は嫌でも目立つらしい。 そりゃ困ったね・・・
「集落から出たことが無ければ、判らない事も多いわよね」
と、マナさんは色々と教えてくれたけど、まさかねぇ。
ダークエルフってだけで目立つとか・・・最初の選択で失敗したなと思った。
それならそうと教えて遅れれば他の種族を選んだかもしれないのに・・・
なるべく目立たないように、皆と逢うまではひっそりと・・・
のつもりが無理そうだなと遠い目になった。
それから数日 そろそろ体を動かす方がいいだろうとリハビリを開始する事にした。
それに伴いコッソリ自分を鑑定して見た。
案内人の珠にも「確認してみて」と言われていたしね。
・・・
・・・・
どうやってやりゃいいんだ?
ステータスオープン? それとも アナライズ? それとも普通に鑑定?
ピンポロリーン
なんか変な音がして自分のステータスが浮かび上がった。
【鑑定: 名:グレン 種族:ダークエルフ
職業:サモナー・調薬師
召喚可能なサモン:詳細にイメージ出来るすべての神獣・幻獣
及び過去に縁のあった魔獣・魔物
LV:61 ランク:A⁺
所有済み称号:ドS
特記事項:専用収納鞄持ち・最高位鑑定持ち・特殊装備鉄扇持ち
オーパーツ:ドレインタッチデスサイズ持ち】
お~、見えた見えた。
ちょっと待て、召喚出来るサモンの条件がイメージ出来るすべてのとかおかしくないか?
称号もおかしくないか?ドSってなんだ、ドSって。
特記事項のオーパーツってのもおかしくないか?
この世界にオーパーツって概念あるのか?・・・
チート過ぎませんかね、これ。
いや有難いですよ?浸食シリーズとか招かざる客とかと対峙する訳だし。
非常にありがたいんだけどもっ! いいのかな?と不安にもなる。
それとも異世界転移とか転生とかのチートってこんなものなんだろうか。
解らん・・・
あんまり悩むと禿げそうだから止めておこう。
クスクスと笑うマナさんの声が聞こえた。
ヤバッ、儂声に出してた?・・・
「どうしたの?さっきから百面相になってるわよ?」
よかった、声に出ていた訳ではなさそうだ。
でも表情には出ていたらしい。
百面相って・・・ 恥ずかしい。
「なんでもないです、アハハハ・・・」
笑ってごまかすしかないよね。
まぁステータスも確認出来たし、LV61がどんなものかは解らないけど
ランクがA⁺ならまぁまぁな強さはあるんじゃないだろうか。
それなら浸食シリーズの駆除や魔物の狩りをしても平気だろう。
リハビリ兼力試しと生きますかね。
この日から海中などに時折現れる浸食シリーズの魔物を討伐したり
老齢人魚の家の修理をしてみたり、薬草採取をしてみたり、
畑(海中で海藻を育てている)の収穫を手伝ったり。
そう、人魚の鱗で作られたアイテムを使えば海中でも呼吸ができるんだよ。
凄いねこれ、ちょっと感動しちゃったよ。
リハビリも進んでこの体や武器の扱いにも慣れてきた頃になるとダンジョンでの討伐も頼まれるようになった。
ダンジョンは島の中と海中に1つずつ。
なんせ人魚の島なのでうかつに冒険者を呼ぶことも出来ないのだそうだ。
今まではどうしていたんだろうと思ったら、力自慢のマーマン達がこれでもかってくらいにポーションを持って頑張っていたんだそうな。
なるほど、ダンジョンから魔物や悪霊が溢れたら、スタンピードが起きてしまうからね。
これは今後の為にも希望者がいたら少し鍛えてあげた方がいいのかな?
まぁそこは長老達に相談だな。
更に3ヵ月が過ぎた。
体の調子もすっかり良くなり、そろそろ旅を始めるかと思った頃に事件は起きた。
天候が悪かったその日
ムスペルからガルドに向けての貿易船が沈没しかけていると連絡が入った。
そこで住人達は救助へと向かったのだが。
それは嘘で人魚を捕まえる為の罠だったと・・・
大半の者は救助に向かっていた為 島には老齢の者や子供達しか残っていない。
動けるのは儂と数人のマーマンだけだ。
相手は・・・何人だろうか。
儂一人で太刀打ち出来る物だろうか。
今の儂はどれほどの力があるのだろうか。
まぁ島のダンジョンであればソロでもなんとかなったけども。
人の善意を利用するなんて、見過ごせないと言うよりもマナさんや島の皆を助けに行かないと。
一宿一飯の恩義じゃないけどさ、儂だって助けて貰って今があるんだから。
サモンを試してみるいい機会だし!
よぉし、行くぜ皆の奪還作戦! 作戦ってほどのもんじゃないか(笑)
読んで下さりありがとうございます。