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83 選択授業

 授業が始まって一週間が過ぎた。


 今日もアーサーは学院帰りに僕の家へ寄り道をしている。


 ほぼ毎日の日課と成りつつあり、アーサーの従僕の対応も手慣れたものになっている。


 今日は選択授業を何にするかという話し合いをするためだ。


 アーサーも家督は兄が継ぐ事が決定しており、選択授業はやりたい事をやって良いと言われたそうだ。


「魔力検査でも僕には火魔法しかないとわかったからね。その点、兄は火魔法と水魔法の両方が使えるからね」


 そう言うアーサーはがっかりしているよりも、何処かサバサバとした表情をしている。


「火魔法しか使えないとわかってがっかりしなかったのかい?」


 兄が二つの魔法が使えるのなら、自分も使えるかもと思ったりしなかったのだろうか?


 ましてや同じ親から生まれたのだから、同じような魔法を持っていると思ってもおかしくはない。


「小さい頃から兄が優秀なのは見ていたからね。両親も僕と兄を比べてどうこうは言わなかったからね」


 そう言って笑顔を見せるアーサーは、本当に優秀な兄を自慢している弟の顔をしていた。


 そんなアーサーとは真反対の弟の和也を思い出す。


 ほんの数分の差で兄と弟となった双子では、兄弟と言うよりはライバルと言ったほうがしっくりくる。


 仮に僕が弟で和也が兄だったとしても、僕も和也を兄とは思えなかったかもしれない。


 今はそんな事より、選択授業を決めないとね。


「アーサーは何かやりたい事があるのか?」


「実は、ずっと冒険者に憧れていたんだよね。魔力がなかったら諦めようかと思っていたけれど、火魔法があるとわかったからね」 


 冒険者、と言われて僕は義父様達と交わした会話を思い出した。


 義父様も火魔法が使えるなら魔導師か魔法剣士を目指してみろと言ってくれたのだ。


「僕も火魔法が使えると言ったら義父様に魔導師か魔法剣士を目指してみたら、と言われたんだ」


「魔導師か魔法剣士…。すごくいいね。僕もその方向で選択授業を決めようかな。もしかして、エドも冒険者になりたいのか?」


 アーサーに聞かれて僕はコクリと頷いた。


 冒険者になるという事は、魔物や魔獣と戦うと言うことだ。


 ゲームのように死んでも生き返ったりはしない。


 戦って傷ついたり、場合によっては命を落とす危険だってあるだろう。


 それでも、弟に裏切られ、理不尽に殺されるよりはずっとマシに決まっている。


 何しろ自分で望んで冒険者になるんだからな。


 それに、もしかしたら何処かにダンジョンがあるかもしれない。


 ただ漠然と生きていた前世よりもよっぽど充実した生活が送れるに違いない。


「僕も義父様達に自分の好きなようにやりなさいと言われているからね」


「そうか。冒険者を目指すなら、魔法の授業は欠かせないな。後は剣術の授業と…」


「この魔導具の授業も取った方が良いかな?」


「魔導具か。魔獣や魔物の中には剣で攻撃出来ないのもいるかも知れないしな。一応選択に入れておくか。後は薬学かな」


「薬学?」


 一体何の薬を作ると言うのだろうか?


 首を傾げる僕にアーサーは呆れたような顔をしてみせる。


「冒険者になったらポーションは必要に決まっているじゃないか。魔獣や魔物と戦う以上、絶対にケガをしないなんて事はあり得ないからね」


「そ、そうだね…」 


 エヘヘ、と僕は照れ笑いをする。


 まさか、『僕には回復魔法が使えるから』なんて言えないからね。


 それに万が一、魔力切れになったら、回復魔法が使えないかも知れない。


 それを考えたらポーションを作れるようになっていた方が良いのは一目瞭然だ。


 その後も僕とアーサーはあれこれ話しながら選択授業を決めていった。




 

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