79 確認
クラスの生徒がひと通り魔力検査を終えると、ディクソン先生は教壇に立って僕達を見回した。
「以上で魔力検査は終了です。これからプリントを配りますので、今日の魔力検査を元にこの先受けたい授業を選択してください。なるべくお家でご両親と相談して決めてくださいね」
そう言ってディクソン先生はプリントを配り始めた。
手元に来たプリントに軽く目を通すと、魔力感知器の魔石の図が書いてあり、魔石の色とその魔法の種類が書かれていた。
黒 ー 闇魔法
金 ー 光魔法
赤 ー 火魔法
青 ー 水魔法
緑 ー 土魔法
黃 ー 風魔法
白 ー 雷魔法
と、いったところだ。
僕が以前、回復魔法を使えたのは光魔法を持っているからのようだ。
それにしても、全部の魔石が光ったなんて、誰にも気づかれていないよね?
そう思いたかったが、他の人の時に微かに光るのが見えていた事を思い出した。
と、いう事は僕が全部の魔石を光らせてしまった事は、何人かの人が気付いているかもしれない。
そうなると、どうやって誤魔化したらいいんだろうか?
「皆さん、プリントは行き渡りましたね。そのプリントをよく読んで一週間以内に受けたい授業を決めてください。それまでは国語と計算、この国の歴史の授業を中心に進めていきます。それでは今日はこれで解散にします」
ディクソン先生に促され、今日の日直を任された生徒が号令をかける。
ディクソン先生が魔力感知器を持って退出した途端、アーサーが僕の所に駆け寄ってきた。
「エド! どうして魔石が全部光ったんだ?」
アーサーは僕の所に来るなり、そんな質問をぶつけてきた。
「え、あの…その…」
言い淀んでいるうちに、お茶会で一緒だった他の生徒達も僕に近寄って来た。
「エドアルド君! どうして魔石があんなに光ったんだ」
「あんなに光るなんて…。本当に男爵家の人間なの?」
次々と迫られて僕はタジタジだけれど、ここはどうしても誤魔化さなくてはならない。
「ちょっとみんな、落ち着いて」
僕は皆を落ち着かせると何でもない事のように告げる。
「魔力検知器が光ったのは僕の魔力に反応したんじゃなくて、不具合を起こしただけなんだ」
それだけを淡々と伝えると、皆は「えっ」と言うような顔になる。
そこで僕は更に畳み掛ける。
「びっくりしたよ。僕が手を置こうと思ったら、急に魔石が光りだすんだもん。ディクソン先生が慌てて対処すると光が収まったけどさ」
僕の説明に皆、「なーんだ」という顔になる。
「そうだと思ったよ。僕でさえ一つしか光らなかったんだからさ」
アーサーと同じ子爵家の子が、そう言って肩をすくめると僕から離れていった。
他の子もそれぞれ納得したように自分の席に戻り帰り支度を始める。
アーサーだけがその場に残った。
「アーサー、僕はほんの少しだけ、赤い魔石釜光ったんだ」
そう告げるとアーサーは少し驚いたように僕を見る。
「えっ、エドも? 僕も赤い魔石が光ったんだ」
「アーサーもなのか。一緒だね」
そう言って僕は初めて知ったようなフリをしてみせる。
実は、アーサーが魔石を光らせた時、赤い色が見えたのを確認していたんだ。
僕とアーサーは帰り支度をすると、馬車乗り場へ向かった。
馬車の中でプリントを見ながら、どの授業を取るか相談しながら帰った。
後は義両親が僕の報告を聞いて、どのように判断するかだな。
それにしてもディクソン先生は『この国の歴史』も勉強すると言っていたよね。
と、いう事はあの『双子王子』の騒動についても勉強する事になるんだろうな。
その勉強がきっかけで僕とエドワード王子の関係に疑いを持っ者が現れなければいいんだけどな。
でも、今はそんな事を考えても仕方がない。
とりあえずは授業の選択をどうするかだ。




